今月の「ちょっと教えて」のテーマは、GM(遺伝子組み換え)やゲノム編集に関する問題点についてです。(その①はこちら)コープ自然派事業連合顧問の松尾由美さんに寄稿していただき、これらの技術が抱える課題や影響について解説していただきました。

消費者庁は誰のため?
食品表示を管轄しているのは消費者庁です。今から十数年前に食品の偽装表示やこんにゃくゼリーの窒息事故などが頻発し、2009年に消費者庁が設置されました。消費者基本法の基本理念である「消費者の選択の機会を確保し、消費者の意見が政策に反映されること」を念頭に、消費者行政を推進するためにつくられたのですが、次第に大手食品業界が構成メンバーを占めるようになり、今では事業者の実行可能性を最優先した組織になってしまいました。
ゲノム編集食品は表示義務なし、科学的検証と社会的検証
現在、世界でゲノム編集食品が一般流通しているのはほぼ日本だけです。関東などの一部のスーパーでシシリアンルージュハイギャバトマトが、またオンラインショップや京都府宮津市のふるさと納税の返礼品としてマダイ、トラフグ、ヒラメが購入可能ですが、いずれも表示義務がありません。消費者庁は科学的検証(検査による確認)ができないので表示ができないと言っています。
GM食品については、味噌や納豆など加工度の低いものは遺伝子組み換えされたタンパク質が検出できるため表示義務の対象になり、食用油や醤油など液体は検出できないため表示対象外としています。しかし、製造加工業者の手元には原材料のデータがあるのですから、それがゲノム編集やGM由来なのか分かるはずです。EUや台湾などでは、検査ができなくても社会的検証(書類等の確認)で液体までGM表示義務が実現しています。現に日本の食品メーカーもEUに輸出している醤油や酢などにはGM表示をしているというダブルスタンダードになっています。日本でも消費期限や原産地などは検査では判明しないので社会的検証を採用しているのです。ヨーロッパは昨年2月、欧州議会がゲノム編集食品の表示義務化を決議しました。流通業者も表示義務化を求めているとのことです。
ゲノム編集食品表示が実現すれば誰が得するの?
表示があれば私たち消費者は不安や疑心暗鬼にならずに食べものを選択でき、農家も安心して種苗を選ぶことができます。加工食品メーカーも流通業者も扱っている商品がゲノム編集食品か否かがわかるので安心です。消費者の意向調査では5割以上が表示を求めているとの結果もでています。
日本各地から意見書採択を求めていこう!
現在、全国26の自治体で「ゲノム編集食品の表示義務を求める国への意見書」が採択され始めています。市民による議員や議会への地道な働きかけの成果が少しずつ結実してきています。コープ自然派もこれから取り組みますので、関心のある方はぜひご協力ください。GM食品も初めは表示がなかったのですが、このような運動が全国に波及して不十分ながらも、表示義務が実現しました。
ゲノム編集技術は正確でもサステナブルでもありません。本当に持続可能な食や農を次世代に渡していきましょう。
Table Vol.512(2025年4月)