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くらしと社会

プラスチックから溶け出す有害物質—環境ホルモンの視点から—

コープ自然派では、脱プラスチックやリユース・リサイクルの推進に取り組んでいます。連合リサイクル委員会では水野玲子さんを講師に招き、プラスチックから溶け出す有害物質について考えました。

サイエンスライターであり、NPO 法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」理事の水野玲子さん

プラスチックのなにが問題?

 1950年代以降、プラスチックの生産量は増加の一途をたどり、「プラスチック文明」といっても過言ではないほど、私たちのくらしはプラスチックに依存しています。

 そもそもプラスチックには、石油が枯渇したら作れなくなる、燃やすと二酸化炭素が発生し地球温暖化に悪影響を与える、自然に分解することなく蓄積され続けるといった課題があります。さらに近年、不法投棄による海洋汚染、マイクロプラスチックの拡散、プラスチックから溶け出す有害物質による人体汚染などが問題視されるようになってきました。

プラスチックの作り方

 プラスチックは、原油を精製したナフサと呼ばれる原料から、モノマー(単分子)を取り出し、モノマーを重合してポリマー(高分子)を合成し、そこにさまざまな添加物を加えて作り出されます。例えばエチレンというモノマーを重合すればポリエチレンに、スチレンというモノマーを重合すればポリスチレンになります。添加物としては、燃えにくくするための難燃剤、柔らかくするための可塑剤、そのほか安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが大量に加えられています。

プラスチックから溶け出す環境ホルモン

 プラスチックから溶出する有害物質の多くが環境ホルモンです。環境ホルモンとは、ヒトのホルモンをかく乱し、がんの増加、不妊、発達障害、自己免疫疾患など人体に悪影響を及ぼす人工化学物質です。可塑剤として添加されることの多いフタル酸エステルやビスフェノール類、「永遠の化学物質」といわれ問題視されているPFAS(有機フッ素化合物)も環境ホルモンです。

マイクロプラスチックの人体汚染

 プラスチック製品から溶け出したり、使用にともなって放出されたりする微細なプラスチックであるマイクロプラスチックは、すでに母乳、胎盤、血液、肺、精巣など人体のあらゆるところから検出されています。PETボトルの飲料やプラスチック製まな板などから食品へ移行するほか、花粉やPM2・5 よりも小さなマイクロプラスチックは大気中に放出され、危険なプラスチックモノマーを肺の奥まで吸い込み、体内に蓄積させてしまいます。柔軟剤などに使われる香りのカプセルも同様です。

では、何を使えばいい?

 まずは危険なプラスチックを避けること。特に避けたいのはポリ塩化ビニル(PVC、塩ビ)、ポリウレタン、ポリスチレン(PS)など。これらはモノマー自体の毒性が強く優先的に避けたいものです。

 次に、プラスチックから他の素材へ切り替えること。ただ、モールドパックのように100%紙製ならよいのですが、紙製に見えてもプラスチックやPFASでコーティングされているものも多くあります。また、バイオマスプラスチックについては生分解しないものもあり、石油系プラスチックの削減には貢献してもリサイクルは難しくなるなど、まだまだ課題が多い状況です。

本質的な解決を

 今年末までに条約案の内容確定が予定されている国際プラスチック条約では、2040年までにプラスチック汚染を根絶するために、プラスチックの設計、生産、使用、リサイクル、廃棄といったライフサイクル全体のあり方を見直し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を推進することが目指されています。

 連合リサイクル委員会の奥村委員長は、「プラスチックは軽い、安い、水に強いなど流通する上での利便性が大きくあります。またひとくちにプラスチックといっても素材によって安全性が異なったり、リサイクルにかかる環境負荷も考えなければなりません。脱プラスチックを目指す上で、本質的な視点に立ったよりよい選択ができるよう、ともに学び、考えていきましょう」と話しました。

講師の水野さん(右から2 人目)、連合リサイクル委員会の奥村委員長(中央)と委員の皆さん。連合リサイクル委員会は、脱プラスチックやリユースを進めてほしいという組合員の声に応えるために生まれました。

国際プラスチック条約に向けて、
子どもケミネットの署名にご協力をお願いします。

Table Vol.505(2024年9月)

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