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くらしと社会

ミサイルではなくスマイルを増やそう

2025年5月15日、コープ自然派奈良(理事会)では京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク(ほうそのネット)を招いて学習会を開催しました。

寸劇で伝えるほうそのネットのみなさん

全国でも最大規模の弾薬庫

 京都府と奈良県の境に位置する京都府精華町。「学研都市」と呼ばれ、国立国会図書館関西館をはじめ、多くの研究施設や企業、大学も立地するエリアに、陸上自衛隊の祝園弾薬庫があります。2023年末、この弾薬庫を増設し、本州の補給拠点にする計画が明らかになりました。国は2023年から4年間で5兆円を投じ、全国14カ所に弾薬庫130棟を新増設する方針で、そのうちの1割以上にあたる14棟が祝園に増設される計画です。本州に新増設される弾薬庫は、大湊(青森県)、舞鶴(京都府)、祝園(京都府)の3か所のみ。祝園では陸上自衛隊と海上自衛隊の共同運用も想定されており、これも全国初の試みです。

2024~ 2025年度予算に盛り込まれた弾薬庫の新増設

祝園に弾薬庫ができたわけ

 1939年、大阪府枚方市禁野にあった陸軍の弾薬庫で爆発事故が起きました。死者94名、負傷者602名。爆発による火災は2日後まで続き、爆風は半径2kmにも及んだという大惨事でした。その事故で壊滅した禁野弾薬庫の移転先として候補に挙がったのが、当時里山だった祝園地区でした。当時は「東洋一の規模」といわれた祝園弾薬庫。新設時は里山だった場所も、今は25.4万人の住民が暮らしています。住宅地と近接した軍事施設の拡張に、周辺住民の不安は高まっています。

守られない「確認書」

 第2次世界大戦後アメリカ軍の管理下に置かれていた祝園弾薬庫が、日本に返還されることになった1958年、精華町では町ぐるみで「基地返還運動」が起こりました。自衛隊の使用に反対し、土地を町民に返せという運動です。しかし返還はかなわず、代わりに町と防衛局で「確認書」が締結されます。確認書の内容は、「核兵器は貯蔵しない」「現施設の貯蔵能力以上は貯蔵しない。増加の場合は事前に町と協議する」などを含めた23項目です。しかし現在、国も町もこれを「歴史的文書であって、現役文書としての有効性は失われた」とその有効性を認めず、今回の増設に関しても町との協議は不要との姿勢です。

専守防衛から攻撃できる国へ

 2022年、政府は「安保3文書」の閣議決定によって、敵基地攻撃能力を保有することを決めました。これまで「専守防衛」を守ってきた日本が他国を攻撃できるようになる、安全保障政策の大転換です。さらに防衛費も、これまでの2倍(GDPの2%)を目指して増強していくことを決定。これにより、日本は長射程ミサイルを持つことができるようになりました。祝園弾薬庫にも、射程距離が1000kmを超える「トマホーク」や「12(ひとに)式対艦誘導弾能力向上型」などのミサイルが貯蔵される予定です。

ミサイル基地化は、抑止力になるか

 国は「抑止力のためのミサイル基地化」といいますが、ウクライナやパレスチナの例でも明らかなように、戦時下で一番に攻撃されるのは、補給基地としての弾薬庫です。太平洋戦争時の沖縄戦でも、「軍隊は住民を守らない」「軍事施設の近くが狙われる」という事実が明らかになっています。
 ほうそのネットの神田高宏さんは、「軍備増強は他国に攻撃の理由を与えることはあっても、攻撃を抑止する力にはなり得ません。真の安全保障とは、戦争をさせないことです。軍備増強ではなく、外交こそが政治が果たすべき役割です」と話しました。ほうそのネットでは「ミサイルではなくスマイルを増やそう」と呼びかけています。

Table Vol.517(2025年9月)

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