「子育て世代が暮らしを優先することで次世代へと命が繋がります。しかし、終身雇用制が終了した現在、この国は人を使い捨てにして発展しようとしているのです」と竹下和男さん。

2019年3月10日(日)、コープ自然派兵庫(ビジョン食と農・給食チーム主催)は「弁当の日」提唱者・竹下和男さんの講演会を開催。「弁当の日」とは子どもが自分で弁当をつくって登校する取り組みで、2001年から香川県内の小学校で始まり、全国約1900校で実施しています。

弁当の日で日本を変える

「弁当の日」は「はなちゃんのみそ汁」の著者・安武信吾さん監督で映画化され、2020年秋公開に向け製作中。現在、クラウドファンディングを立ち上げ、コープ自然派兵庫も参加しています。

 休日の会場には未就学児や小学生の親子連れが多数参加。「子どもが騒がないようゲームやスマートフォンを与えるのではなく、子どもも講演会に参加しましょう。理解できなくても、大人の話を静かに聴けたことをほめてあげてください」と竹下さんのお話が始まりました。竹下さんは講演会活動を初めて19年目、全国で2300回以上開催、新刊「100年未来の家族へ」(自然食通信社)は15冊目の著書となり、1500万円以上の本の印税は、「弁当の日」を拡げる活動のためにすべて寄付しているということです。

 「弁当の日」は「親はけっして手伝わないで」というルールのもと、献立から片づけまですべて子どもが行い、食べることの大切さや食事をつくる人への感謝の気持ちを育てます。竹下さんが「弁当の日」をスタートさせた綾上町立滝宮小学校(香川県)では、18年間にわたって生徒たちが弁当を披露し感想を言い合う様子が記録され続けてきました。弁当をつくるのは高学年の生徒で、低学年の生徒たちは憧れて成長します。

育児で芽生える母性本能

 昔は子孫を残すことを優先し、結婚は家と家の関係によるもので、家事・育児を女性の仕事としてきました。戦後、結婚は個人の意思が優先されるようになり、家族の形も多様化しています。しっかり食事をつくり、食べさせている家庭の子どもは健やかに育つことを竹下さんは38年間の学校勤務で見てきました。そして、「料理と育児は男女を問わず能力は同じです。これからは女性だけに押し付けるのではなく、男女ともに子育てを楽しむべき」と話します。

 米国で育児を男性が担う実験が行われ、育児を体験した男性は「母性本能」と言われる感覚を身に着けていることがわかりました。自分を犠牲にしてもわが子を守りたいという気持ちは男女の区別なく育児を行うことで芽生えます。動物に比べて人の脳は前頭葉が発達し、「人間脳」と呼ばれる前頭葉は8歳〜19歳で成長。前頭葉には育児をすることで子どもをかわいいと思うようになるスイッチがあるということです。

「三つ子の魂百までも」

 味覚は3〜9歳で完成し、甘みや油をおいしいと感じるのは母乳を飲むために備わった先天的な能力で、苦みや渋みは毒を危険と察知し生き残るための能力です。3歳頃から苦味や渋みを感じ始め、9歳頃に味覚が完成します。「この時期の子どもに『今晩、何をたべたい?』と絶対言ってはいけません」と竹下さん。メニュー選びは、その時期に必要な栄養を多く含む地元の旬の食材に関する知識と経験が不可欠です。ピーマンやゴーヤなど苦い食材を嫌う時期にハンバーグやカレーライスなど子どもが好きなメニューだけでなく、地元の旬の食材でつくった愛情たっぷりの食事を与えることで味覚が発達し人間として成長します。ドーパミンをつくるビタミン・ミネラルは野菜のアクにあるということです。

 人間の成長具合をグラフにした「スキャモンの発達曲線」(20歳を100%とする)があります。このグラフには「神経型:脳、神経」「リンパ型:免疫力」「一般型:肝臓、肺臓、腎臓、すい臓」「生殖型:精巣、卵巣、子宮」の4つの曲線があり、神経型とリンパ型は3歳で70%、12歳で100%完成し、脳と心臓の細胞は一生入れ替わることがありません。子どもは2歳頃から料理に関心をもち始めますが(5歳がピーク)、効率よく家事をしたいため、「向こうに行ってなさい」と親は台所から子どもを遠ざけてしまいます。親を困らせていると感じた子どもは、「いい子は料理をやりたがらないものだ」と自分を納得させ、料理や家事手伝いへの興味をなくすとのこと。3歳児に向けた言葉や態度は成長に深く関係するもので、愛情をかけた食事をつくり子どもを育てることの大切さを参加者は改めて確認しました。

主催のコープ自然派兵庫「ビジョン食と農」「給食チーム」のみなさん。

Table Vol.393(2019年6月)