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くらしと社会

映画「MINAMATA」から学ぼう!~アイリーン美緒子スミスさんをお招きして~②「水俣」とコープ自然派

2021年12月8日(水)、コープ自然派事業連合・連合商品委員会主催により、アイリーン・美緒子・スミスさんに映画制作の経緯や「水俣」についてお話を聴きました。
オンラインでは3回に分けてその模様をお伝えします。
2回目の今回はコープ自然派事業連合元理事長・大川智恵子さんに、「水俣」とコープ自然派のかかわり、そして、これからについて聴きました。

コープ自然派事業連合元理事長の大川智恵子さん。現在はNPO法人自然派食育・きちんときほん理事長。

食べものの背景を考える

 大川さんのお話はコープ自然派の前身である共同購入会時代にさかのぼります。

 高度成長期、全国各地で公害が発生し、なかでも水俣病は未曽有の被害を引き起こしました。1956年にようやく水俣病(熊本県)が公式確認され、その後、全国で「水俣病を告発する会」が立ち上がりました。1974年から有吉佐和子著「複合汚染」の連載開始、これを機に安全な食を求めるグループが各地で誕生。1976年、よつ葉牛乳関西共同購入会(コープ自然派の前身)が設立されました。水俣では第一次訴訟が終了し、被害者たちが分断され地域の人間関係が壊されていった時期です。

 共同購入会が設立された当初、ロングライフ牛乳(常温長期保存牛乳)反対運動に取り組み、食から暮らし全体を問い直すことは会の基本姿勢になりました。そんななか水俣で無農薬の甘夏を栽培していた「反農連」(現からたち)の大沢忠夫さんや杉本雄さん・栄子さんたちと出会います。そして、甘夏、雑柑、寒漬大根、いりこなどを被害者や地域を支える物品として共同購入するようになりました。

 初期の段階で、「水俣のいりこは大丈夫?」という会員からの問い合わせがあり、他団体のいりこやスーパーのいりこなどと検査に出しました。その結果、ごく微量の水銀が検出されましたが、他のいりこからはかなりの量の酸化防止剤や発色剤などが検出され、会員で話し合い取り扱いを続けました。

「水俣」との出会いと交流

 「杉本栄子さん(故人)や浜元二徳さんからは強いメッセージを度々もらいました。心揺さぶられる発言が多かったですね」と大川さん。2人は第一次訴訟原告で、杉本さんは明るくふるまっていましたが、入退院を繰り返していました。踊りが大好きで踊りの間に語り部として活動。差別がひどい時期で伝染病などと勘違いされて苦しみに耐える日々を過ごしていました「苦しみ抜いたからこそ備わった力強さと突き抜けた明るさに私たちが励まされました」と大川さん。「水俣病はのさり」(のさり=天からの授かりもの)「人様は変えられん、自分が変わらんと」「知らんちゅうことは、罪ぞ」などの言葉は今も大川さんの心に留まっています。

 浜元さんは両親と3人で漁業を営み、両親は水俣病死。1972年、スウェーデン・ストックホルムで開催された「国連人間環境会議」に出席したのをはじめ、国際的な活動にも積極的に取り組みました。水俣病の経験から廃油リサイクルの「水俣せっけん工場」を立ち上げ、現在は「エコネットみなまた」理事を務めています。

 魚の身になって海の汚染を伝える砂田明さんの1人芝居は関西で何度も公演されました。1986年、水俣病が正式認定されて30年を機に、よつ葉牛乳関西共同購入会が中心となって大イベントを開催。関西の共同購入グループ、関西訴訟団、大阪市立大学自主講座、水俣からの生産者(患者)が一堂に会しました。オープニングでは有明海・八代海に広がる干潟に生息するムツゴロウの踊りが披露されました。

共通する「水俣」と「福島」

 コープ自然派事業連合が設立されてからは、2017年に組合員と職員が水俣を訪問。「水銀に関する水俣条約」第1回締約国会議(スイス・ジュネーブ)に患者の坂本しのぶさんが出席した直後に訪問し、坂本さんのお話を聴きました。また、エコネットみなまたを訪ね、浜元さんを見舞いました。

 「2017年に水俣を訪ねたのは、3.11を経験して『水俣』が繰り返されることを直感したからです。ぜひ若い組合員さんたちと『水俣』を共有したいと思いました」と大川さん。両者に共通するのは「国策のもと、いのちより経済優先」「被害者を切り捨てて企業を守る」「線引きにより被害者を分断」「今なお続く訴訟」などいくつもの共通点があげられます。現在、水俣では水銀ヘドロを埋め立てた上にエコパーク(仮置き場)がつくられ、大川さんには福島の汚染水やフレコンバッグと重なります。

 「学生運動や労働運動が弱体化した今だからこそ、生協(生活者運動)の存在意義が問われます。水俣では、相思社、エコネットみなまた、からたち、ガイアみなまたなど、次世代の方たちも頑張っています。この映画をきっかけに現地も消費者も世代を超えて手を結び、『水俣』を語り続けていきたいと思います」と大川さんは話しました。

Table Vol.456(2022年1月)より
一部修正・加筆

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