2022年6月4日(土)、小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所助教)講演会「未来を生きるあなたへ」が神戸市にて開催されました。
講演前にはウクライナ出身のカテリーナさんが民族楽器パンドゥーラの演奏と歌を披露。
この集会にはコープ自然派兵庫も賛同しました。

「戦争を心配するのならまず原発を止めるべきです」と小出裕章さん。京都大学原子炉実験所を退職後、長野県松本市で暮らしています。

熱効率悪く危険な原発

 「原子力発電は科学の最先端のように思われていますが、水を沸騰させて蒸気をつくり、蒸気の力で機械が動くという古めかしい仕組みです」と小出さん。この仕組みは火力発電も同様で、原子力発電の場合は圧力釜のなかにウランを固めた燃料を入れて燃やす、つまり核分裂させます。火力発電所の熱効率は80%程度ですが、原子力発電所は過疎地に建てられ他のエネルギーに利用できないので熱効率は33%程度です。

 広島原爆がさく裂して燃えたウランの重量は800gです。100万kWの原子力発電所1基を1年間運転するには1トンのウランが必要で、広島原爆の1000倍を超えるウランを核分裂させ、広島原爆が排出した死の灰の1000発分を超える死の灰をつくり出します。機械は必ず壊れるし、それを動かしているのは人間である以上、必ず誤りが生じます。そこで、日本では17ヵ所の原発(福島原発事故前には新たに2ヵ所新設予定でした)は過疎地に建てられました。「恩恵は受けたいが、危険は他に負わせるという行為はそれだけで許されません」と小出さんは話します。

今も緊急事態宣言発令中

 福島原発は大地震と津波に襲われて運転中の1・2・3号機の原子炉が溶け落ち、運転していなかった4号機も爆発しました。あれから11年以上経ち、事故は収束できないまま敷地内では多数の労働者が被ばくしながら作業しています。

 政府がIAEA(国際原子力機関)に提出した報告書によると、大気中に放出したセシウム137は1号機だけで広島原爆が出したセシウム137の6~7発分、最もひどかったのは2号機で1・2・3号機合計で168発分でした。幸い偏西風によって大部分は太平洋に流れ、一部(16%程度ではないかと小出さん)が国土を汚染しました。猛烈に汚染された地域の住民は強制避難させられ、地域のつながりも仕事も生活も失いました。11年経った今も何万人もの人たちが避難生活を強いられています。

 そして、1平方メートル当たり4万ベクレルという放射線管理区域の基準値をはるかに超えた汚染があちこちに広がりました。そこで、政府は原子力緊急事態宣言を発して、放射線管理区域に相当する区域でも住めることにしました。「今も原子力緊急事態宣言は解除できないままで、管理区域の制限を下回るのは100年経っても無理でしょう。そんな未来を子どもたちに押し付けることになってしまいました。そして、事故の責任を国も東京電力も負っていません」と小出さんは話します。

原発の電気は安くない

 原発は安価な電気だと聞かされてきましたが、立地コストもかかり、原発を動かすためには揚水発電所が必要です。福島原発事故では処理のために21兆円を要すると政府は言っていますが、民間のシンクタンクは70兆円~80兆円という数字を出しています。仮に70兆円〜80兆円だとすれば、これまで日本の原発が生んだ累積発電量は約8兆kWhなので1kWh当たり10円にもなってしまいます。その上、膨大な核のごみを生み、これから10万年〜100万年以上お守りしなければなりません。

地球温暖化と二酸化炭素

 政府は地球温暖化は重大な問題で、それを防ぐには原子力は必要だ。地球温暖化の原因は二酸化炭素なので火力発電所を動かせば二酸化炭素が出てしまうが、原子力は二酸化炭素を出さないから原子力を使おうと言っています。化石燃料を燃やせば二酸化炭素が排出されます。しかし、ウランを核分裂させれば放射性物質が出てきます。「二酸化炭素は地球上の生命体にとって必要なもの、植物は光合成によって二酸化炭素を取り込んで生き、植物が生きているから動物も生きられます。二酸化炭素を減らそうと活動している人たちもいますが、その考え方は間違っていると私は思います」と小出さん。45万年前までの間に地球上には氷河期が4回あり、氷河期と温暖期が繰り返されてきました。気温の変化が初めにあり、そのうえで二酸化炭素が動く、つまり二酸化炭素が増えて気温が上がるのではなく、気温が上がるから二酸化炭素の濃度が高くなるのです。そして、気温の変化は10℃にも及び、地球という星は人間が何をしようと10℃という変化を繰り返す星なのだと小出さんは話します。

 産業革命が起き、蒸気機関を動かすようになって確かに二酸化炭素の濃度は上がってきました。しかし、激増したのは1946年からで、どんどんエネルギーを使い始めた時期です。地球の気温はその前から二酸化炭素とは関係なく上昇していたということです。

 「原子力はウランを採掘するときも原発で燃やすために濃縮・加工するときもたくさんの二酸化炭素を放出します。原発そのものを建設するときにも膨大な二酸化炭素を出しています。運転するときにも二酸化炭素を出し、事故の後始末のためにも気が遠くなるほどのエネルギーと二酸化炭素を放出します、その上、核のゴミをこれから10万年、100万年お守りする過程で大量のエネルギーを使って二酸化炭素を出します。ですから、仮に二酸化炭素が地球温暖化の原因で減らさなければならないと言うのなら原子力だけはだめだと考えるべきです」と小出さんは話します。

際限なき欲望による危機

 地球が危機に瀕していますが、大気汚染、海洋汚染、森林破壊、酸性雨、砂漠化、産業廃棄物、環境ホルモン、マイクロプラスチック、放射能汚染など多くの要因があり、貧困や戦争など深刻な脅威も別にあります。「それらはいずれも人間の際限のない欲望が生み出した大量生産・消費の結果です。そういう危機が山ほどあってたくさんの人たちが苦しんでいるのに、地球温暖化だけが猛烈な脅威だと宣伝されています。そして、二酸化炭素が悪いから脱炭素社会をつくろうと思わせられています。そのことが一番の危機だと私は思います。本当にやらなければならないのは二酸化炭素を減らすことではなく、エネルギーを浪費しない社会をつくることです」と小出さんは話しました。

Table Vol.469(2022年8月)より
一部修正・加筆