2021年5月18日(火)、コープ自然派おおさか(「LPAの会」主催)はファイナンシャルプランナー・小谷晴美さんを講師にオンライン講演会を開催。プチ起業を成功させるポイントについて聴きました。
正確な情報を届けたい
小谷さんはコープ自然派おおさか・LPA(ライフプラン・アドバイザー)第1期生として約10年間活動。その後、ファイナンシャルプランナーの資格を活かして起業し、生活設計相談やセミナー講師、執筆などを通してお金の知識の普及に取り組んでいます。個人事業主の夫をサポートした経験もあり、自分の得意なことを活かして人の役に立ちたいという女性たちとの数多くの出会いもありました。そんななかで、家庭に軸足を置きながら、くらしに合わせて柔軟に働きたいという女性たちにとって、お金に関する情報がとても少ないことを小谷さんは残念に思っていました。「例えば、103万円の収入を得たら、夫の扶養からはずされてしまうと思い込んでブレーキをかけながら働く人が多いのを見て、正確な情報があればもっとのびのびと活躍してもらえるのにと思いました」と小谷さん。そこで、お金に関する正確な情報を届けたいと、昨年8月、「女性ひとり起業スタートBOOK」を出版、この程、第2刷が決定しました。
まず自分をよく知ること
「起業するには何をしたらいいですか」と聞かれたら、「心が向かうこと、好きなことを選んでください」と小谷さんは答えます。好きなことには夢中になれるし時間をかけるので、人より上手になるのは当然、それは起業を成功に導く大切なポイントです。女性起業家がアプローチしやすい分野として、教え系、作る系、癒す系、ワザ系の4分野があり、100名以上の女性起業家にインタビューして作成した「スキ職診断(著書の付録)」では、好きな職業分野の傾向を知ることができます。
起業には情熱も大切です。小谷さんは5年前から「本を出したい」とずっと口にしているうちに出版社を紹介してくれる人が現れました。また、価値を提供できることもポイントで、自分のサービスや知識によって変化や価値を与えられることができれば仕事につながります。「何に情熱を傾けられるか、どんな価値を提供できるか、悩む方はぜひ自分を知ることから始めてください。まず、少なからず影響を受けている家族について、次に学生時代、そして、社会人時代と自分自身を振り返ってみましょう。自分を振り返るワークは、友だちと一緒にやると覚えていないことを思い出して、さらに深く自分を知ることができます」と小谷さんは話します。
好きを仕事にするには
起業アイデアが浮かんだら、それはうまくいくかな?と、まずは環境を分析。環境には、内部の環境と外部の環境があり、内部の環境とは、自分が持っている知識や人脈、お金や情報などのことです。外部の環境とは、市場や競争環境のことを言います。ここで内部環境の強みを活かせる市場やニーズがあるかどうか分析します。
「内部の環境の強みを外部の環境で発揮できるチャンスを見つけてください。市場は大きくとらえがちですが、なるべくターゲットを絞りましょう。思い切って絞った方が対象者にフィットするサービスが提供でき、やることも明確になります」と小谷さん。そして、どのような価値をどのように提供していくのかという起業コンセプトをもとに、商品やサービス、価格、流通経路、販売促進の方法を考えていきます。
当日は、小谷さんが本の出版を企画した時の経緯を聴き、「想いをカタチにする5ステップ」と題したワークシートを用いてペアワークを行いました。
開業届け提出のメリット
開業届けは、事業を開始したら1ヵ月以内に所轄税務署に提出することが所得税法で定められています。しかし、小谷さん自身もLPA活動の延長でセミナー講師などを依頼されているうちに仕事らしくなったように、いつのまにか仕事になっていたという場合も少なくありません。そこでよく聞かれるのが、「開業届けを出さないで仕事をすると罰せられるの?」「開業届けを出さないで確定申告をすると罰せられるの?」という質問です。答えはNO、ルールはあっても罰則規定はなく、1ヵ月以上過ぎて提出することもできます。
では、開業届けを提出してもしなくても良いのかということになりますが、開業届けを提出しなければできないことがあります。例えば、税金の申告で青色申告をしようとすれば開業届けを提出しなければなりません。また、事業を始めたら家計の通帳と事業の通帳は分けた方が良いのですが、屋号付きの口座を開設する際、開業届けが必要になる場合があります。保育園には開業届けが就労証明にもなります。そして、「開業届けを提出する最大のメリットは気持ちの問題で、意識や覚悟が大切、仕事をするぞ!と思ったら提出した方がいいと思います」と小谷さんは話します。
確定申告の必要性
税金については、売り上げが1000万円を超えないうちは、所得税の確定申告さえしておけば大丈夫と小谷さん。所得税の申告義務として、事業所得(事業の収入から必要経費を引いた儲け)が48万円を超えたら原則、確定申告が必要です。給与収入がある人の副業の場合は所得が20万円を超えると同様です。逆に言えば、この金額を超えなければ原則、申告はしなくても良いことになりますが、事業を開始したら記帳義務が発生し、帳簿は7年間保管しなければならないルールがあります。また、コロナ禍で助成金がもらえるような場合もあるので赤字であっても確定申告をしておく方が良いということです。
参加者の質問で著書の装丁について尋ねられ、女性に向けた本なので、やわらかなイメージにしたくてピンクを基調にしたとのこと。当日の小谷さんのファッションもピンクでコーディネートし、オンライン講座の画面の背景には女性が上を向くロゴマークが使用されていました。
Table Vol.444(2021年7月)より
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