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くらしと社会

おそなえの、おさがりを、おすそわけ!おてらおやつクラブ

子どもの9人にひとりが貧困といわれる日本。特にひとり親家庭の窮状が深刻です。2025年2月22日、コープ自然派奈良では、食料支援を行う認定NPO法人おてらおやつクラブを訪問。その活動について事務局の大橋伸弘さんに話を聞きました。

イベントをきっかけに、継続的にボランティアとして関わりはじめた組合員も。

きっかけは、大阪母子餓死事件

 2013年5月24日、大阪のマンションの一室で母子が餓死状態で発見される事件が起こりました。28歳の母親と3歳の息子が電気もガスも止められ、二人の胃は空っぽ。母親が書き遺したメモには「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」と。いまの日本でこんな事件が起こるなんてとショックを受けた松島靖朗さん(奈良・安養寺住職)が、「もうこれ以上、お母さんや子どもたちを餓死させたくはない」と始めたのが「おてらおやつクラブ」です。

お寺の課題で社会の課題を解決する

 おてらおやつクラブは、お寺に集まる「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として、ひとり親家庭へ「おすそわけ」する活動です。お寺には、果物や菓子、米など多くの食べものがお供えされます。一般には寺の僧侶やその家族で食べますが、「食べるのが間に合わず捨てざるを得ないことは、多くのお寺にとって悩みのひとつでした。お寺の『ある』と社会の『ない』をつなげて両方を解決する試みが、おてらおやつクラブの活動です」と大橋さんは話します。

コロナ禍での方向転換

 それまでも、おてらおやつクラブでは地域の相談窓口を通して食料支援を行っていました。ひとり親家庭を支援するNPOや社会福祉協議会、児童養護施設などに食料を寄付し、そこから各家庭への支援に使ってもらうという形です。しかし、コロナ禍でフードバンクや子ども食堂などの活動が縮小し、困窮した家庭からおてらおやつクラブに届く「たすけて」の声が急増します。そこで始まったのが、家庭に直接食料を送る「直接支援」の取り組みです。全国のお寺から最寄りの家庭へ、匿名で届ける配送システムを開発したことで実現しました。

送る箱には必ず手紙を同封します。毎日がんばる「あなた」に、ひと時でも安らいでほしいという気持ちを込めて。

あなたはひとりじゃない

 「人目が気になるので、フードバンクのイベントや相談会には行きづらさを感じていました」「公的な支援窓口は平日の昼間しか開いておらず、仕事を休んでまでは行けませんでした」これは、支援を受けた家庭から届いた声です。大橋さんは「おてらおやつクラブが、助けを求めやすい場所となれていることはよかったなと思います。ただ、支援が十分に行き届いているとはいえません」と話します。おてらおやつクラブが支援しているのは累計約1万5000世帯ですが、日本には貧困世帯が約38万あるといわれています。また、取り組みに賛同するお寺も2100以上に広がっていますが、全国のお寺の数は約7万あります。「コンビニよりも多い全国のお寺が足並みを揃えて活動できれば、さらに大きな力になれると思っています」と大橋さん。

子ども笑顔基金でつながる

 おてらおやつクラブは、コープ自然派奈良の「子ども笑顔基金」の寄付先として2023年度から連携しています。子ども笑顔基金は、コープ自然派の組合員が日頃の購入で獲得したポイントを寄付し、支援先が安心な食べものを利用するために使うことができる取り組みです。生協ごとに地域の支援活動ともつながることができ、またコープ自然派での商品利用をそのまま支援へ結びつけられます。大橋さんは、「物価の高騰などによりひとり親家庭の生活状況は依然厳しく、継続したご支援は大変ありがたいです。モノとともに『どこかで誰かが見守ってくれている』という安心感をお届けできればと願っています」と話しました。

Table Vol.514(2025年6月)

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