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くらしと社会

プラスチックと私たちのくらし

2021年6月26日(土)、コープ自然派おおさかは原田禎夫さん(大阪商業大学)を講師に講演会を開催。プラスチックゴミが環境に与える影響や亀岡市での先進的な取り組みについてお話を聴きました。

講師の「大阪商業大学公共学部」「NPO法人プロジェクト保津川」・原田禎夫さん。

リサイクル後進国の日本

 国内で製造されるプラスチック製品は年間1000万トン以上、プラスチックゴミの約4%がケミカルリサイクルされ(石油に戻す)、粉砕して原材料にするマテリアルリサイクルの半分を海外に依存し国内実施率は約10%です。リサイクルとゴミ発電により90%以上が有効利用されていると言われていますが、そのほとんどが燃やされているのが現状です。また、多数の国で生ゴミを堆肥化していますが、日本はOECD加盟国の中で生ゴミをはじめもっとも多くゴミ焼却処理している国です。

海洋プラスチック汚染

 世界のプラスチック生産量は年間約4億トン、その半分を占めるのが容器・包装で、ほとんどが使い捨てられています。年間1000万トン以上のプラスチックが海に流れ、コロナ禍の1年間で15億枚以上の不織布マスクが海に流れたとのこと。2050年には海洋プラスチックゴミが魚の総量より重くなると予測され、食塩やペットボトル飲料のほぼすべて、世界の水道水の8割からプラスチックが検出されています。また、北太平洋のミッドウェー島(無人)に生息するコアホウドリの死骸を解剖すると、ライターやペットボトルの蓋、歯ブラシ、洗濯バサミなどの生活ゴミ(人間の体重に置きかえると10~12kg相当)がお腹から出てくるということです。

次世代への深刻な影響

 人間はマイクロプラスチックを年間約5万個摂取していると言われ、魚介類を好む日本人やスペイン人は13万個とも言われています。ナノプラスチックは細胞をすり抜け体内に溜まり、特に胎盤に蓄積されるとする論文もあり、乳児は哺乳びんを通して1日に数百万個のマイクロプラスチックを飲んでいるということです。また、大気中に漂うプラスチックのホコリを年間250g吸い込んでいるとも言われ、1週間でクレジットカード1枚分に相当します。

 マイクロまたはナノプラスチックに変化したときの人体への影響については未解明ですが、動物実験から環境や人体に与える悪影響は明らかです。特に発達期の暴露による次世代への影響は深刻で、国際的には予防原則の立場からプラスチック削減がすすめられています。

世界ですすむレジ袋規制

 大阪湾の海底に沈むレジ袋は約300万枚、世界の海洋ゴミの大部分がレジ袋との調査結果があります。生物への影響は深刻ですが、漁業など地域の産業にも大変な被害が及んでいます。

 世界ではレジ袋規制の動きがすすみ、2002年にバングラデシュでレジ袋が使用禁止になり、イタリアは2011年から生分解性以外は禁止。EUは2021年から使い捨てプラスチック製品の禁止、中国では2022年までにレジ袋禁止、来年の北京オリンピックは脱プラ・デモンストレーションの場として国家目標を掲げています。カナダは今年中にレジ袋および使い捨てカトラリーなども禁止。アメリカは2015年のハワイでのレジ袋禁止を皮切りにニューヨークで発泡スチロールトレイやホテルのアメニティも禁止。世界の127ヵ国がレジ袋に対する法規制を実施し、うち83ヵ国は無料配布を禁止(国連環境計画2018年)。2019年から禁止のニュージーランドは違反者に725万円の罰金、ケニアは約400万円の罰金または最長4年間の禁固刑が課せられます。「プラスチックを漫然と使い続けること自体が世界では犯罪なのです。日本でも国連加盟国の責務として使い捨てプラスチックを早急に禁止しなければなりません」と原田さんは話します。

亀岡市プラゴミゼロ目標

 亀岡市では2018年からレジ袋有料化が始まり、今年1月には使用を禁止する条例を施行、2030年度までに使い捨てプラスチックゴミゼロ目標を掲げました。さらに、紙袋を有料化し、石油由来の原料を含まない海洋生分解性プラスチック(海水温30℃の状態で6ヵ月間かけて分解がその定義ですが、現在はまだ製品化されていません)も有料としました。6月1日から罰則適用が始まり、違反はゼロ(指導4件)、スーパーマーケットのマイバック持参率98%、コンビニ93%(全国平均75%)と順調に脱プラスチックがすすんでいます。また、「ごみマップ」というアプリを使用して河川ゴミの量をオンライン上で発信し、地域でゴミ調査とその対策を考える活動が行われています。調査結果からゴミが多いエリアでの掃除活動を行い、ゴミの大幅削減を実現。亀岡市内の小中学校ではマイボトル用の給水器を設置し、カフェやレストランでも給水器を設置。保津川の一大清掃イベントではリユース食器サービスを利用して、毎年ゴミの量を大幅に減らしています。

 「当初、レジ袋禁止など脱プラスチックの取り組みは企業から反発がありました。しかし、方針を伝えて市民が後押しすることで、企業の協力が徐々に得られるようになりました。やればできる!次のターゲットはペットボトルです」と原田さんは話しました。

Table Vol.448(2021年9月)より
一部修正・加筆

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