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くらしと社会

私たちの水道が危ない!?

2018年11月7日(水)、コープ自然派おおさか(和歌山エリア主催)は水道事業民営化について学習会を開催。NPO法人AMネット事務局長・武田かおりさんに世界の事例や予想される問題点などを聴きました。

持続可能な社会を目ざし調査研究などを行うNPO法人AMネット事務局長・武田かおりさん。

時代遅れの水道民営化

学習会はJR和歌山駅前商店街内のコミュニティスペースWA(組合員活動室)で開催。

 政府は今臨時国会で水道法改正法案を強行に可決。この法案は水道事業民営化により経営安定化やインフラ基盤強化などを図ることを目的としたものです。水道施設の所有はそのまま自治体に残し、運営権のみ民間企業に売却する民営化(コンセッション方式)を政府は推進しています。

 水道の民営化について、武田さんはさまざまなリスクを指摘します。まず、水道事業は地域独占状態で競争がありません。民間企業では法人税がかかるうえ、株主配当や役員報酬などが必要で水道への再投資額は減少します。そして、価格抑制やインフラ整備など「公共性を担保」しようとすればするほど、民営化のメリットである「経営の自由度」と相反します。また、民間企業に職員が転籍すれば、培われてきた職員の技術力が民間企業に無償で渡されることになります。その結果、行政が監督しようにも人材やノウハウがなく民間企業の言いなり、ブラックボックス化する懸念があります。そして、民間会社を変えたくても代替企業がなく、行政で実施しようにも技術力をもつ職員が自治体にいなくなっているため、いったん民営化すると契約解除も非常に困難です。20〜30年という長期間の契約に縛られるため、市民や議会の関与が大幅に減少し柔軟な改善が困難になり、料金高騰の懸念もあります。また、短期的な利益を求められる民間企業は大規模な設備に必要な長期的投資に向きません。さらに災害時に他自治体と連携がとりにくいことや、国際的な貿易協定におけるISDS条項(投資家対国家の紛争解決)の対象になる恐れもあります。

 1990年代、イギリスやフランスをはじめ世界各国で民営化が進みました。しかし、現在は再公営化の動きが世界の主流です(世界で267件が再公営化)。民営化のお手本とされたパリ市(1985年開始)は民営化後の水道料金が174%増加。再公営化後(2010年)、7%とされていた営業利益が15〜20%だったことが判明、グループ会社間での複雑な取り引きなど経営の不透明性が明らかになりました。つまり水道民営化は失敗だらけで時代遅れの政策だということです。

和歌山市で民営化の動き

 和歌山市は内閣府による「上下水道一体の事業診断による経営の効率化促進事業」の支援対象に選ばれ、現在、民営化に向け民間事業者からのヒアリングや調査が実施されています。調査報告が完了する2019年3月以降、条例制定や事業者の選定など法律に基づいた手続きに入ります。

 和歌山市の水道事業は年間約10億円黒字で、給水原価と施設利用率ともに全国平均を上回り、無駄のない状態です。使用量が多い大口の顧客(企業)より一般家庭の水道料金が低く設定(原価割れ)され、和歌山市の水道料金は政令指定都市の平均額に比べても安価に設定されています。一方、職員数が10年間で45%減少し、これ以上の人員削減は困難です。水が有効に使用されているかを示す有収率(漏水率が高い)は中核市の平均水準を下回り、施設の老朽化
が進み耐震性が低いなど対応が必要です。

 「将来の料金アップは避けられませんが、和歌山市は効率的な運営において全国的にも優良公営企業で、民営化しても課題解決しないことは明らかです。昨年、チラシを配布し市議会議員に説明するなど市民の活動で、大阪市の水道事業民営化の動きを止めることができました。民営化に肯定的だった議員も実情を知れば考え方が変わり、議会を動かすことができます」と武田さん。ライフラインである水が脅かされようとしている現状を広く伝え、市民の判断に訴える活動が急務です。

Table Vol.382(2018年12月)

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