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くらしと社会

~「自然の住まい協議会」学習会~国産材を使った住まいづくりに取り組む

「自然の住まい協議会」は理念を継承していくために学びの場を設けています。2021年7月14日(水)、NPO法人国産材住宅推進協会(自然の住まい協議会メンバー)代表・北山康子さんを講師に第2回学習会を行いました。

一人の女性の生き方としても魅力的なNPO国産材住宅推進協会・北山代表

施主側に立つ建築・設計

 北山さんは建築会社に13年間勤めた後、1981年頃から欠陥住宅追放運動に共鳴し、活動を始めました。当時、住宅業界は悪質な業者も多く、欠陥住宅でも施主は泣き寝入りすることがありました。施主の顔を見て価格を決める業者もあり、根拠の見えない「一式見積もり」がほとんど。一生懸命お金を貯めて一世一代の家を建てるにあたり、内容がわからないまま着手することに北山さんは疑問を感じ、1981年、見積もりを主体にしたダブル住宅見積設計事務所(1999年に建築士事務所「民家」(みんか)に商号変更)を設立しました。

 北山さんは施主側に立つ建築・設計を手がけ、施主と施工会社の間に立って仲間とともに諸問題を解決していきました。欠陥住宅の問題は施主にとって精神的にも大きな負担になっていて、ローンを支払いながら問題を抱え離婚に至ったケースもありました。当時、住宅をチェックすると床下がヘドロで埋まっていたり、プラスチックなどを埋めて基礎をつくっているような住宅もありました。

 また、北山さんは話を聞くだけでなく、問題が起きないようにするにはどうしたらよいかと考えました。そして、一般ユーザーは建築の知識があまりにも乏しいことがわかり、公開セミナーを開催。また、施主が間違ったとらえ方をしている場合にはこれは欠陥住宅ではないと説得しました。当初、工務店に「きみらが欠陥をあおっている」などと言われましたが、やがて工務店側から相談されるようになりました。

悩みを抱える日本の山々

 ある時、高知県の林業家から「山に放置されている間伐材を何とかしてほしい」という相談を受け、その活用法として屋根の下地板などに利用することを提案・推進しました。また、堺市で間伐材を使った住宅を建てました。その後、奈良、和歌山、京都、兵庫、宮崎、高知などの山で働く人たちと出会い、どの山も同じ悩みを抱えていることを知ります。そこで、1984年7月、「国産材住宅を推進する会」を設立、本格的に国産材の利用をすすめ、10月には「木造住宅講座」がスタートしました。

 1988年4月、現在の「国産材住宅推進協会」に名称変更し、機関紙「木族」を発行(当初は毎月、12~3年前から隔月で発行)。また、大阪府や近畿中国森林管理局、各種環境保護グループの行うイベントへの参加や「森のコンサート」開催、過去20回以上に及ぶ木材産地ツアーなど独自のイベントも多数開催しました。 毎週土曜日には建築現場見学会や木造住宅講座を行い、 建築現場見学会はこれまでに計500回以上、木造住宅講座は計1100回以上を数えます。

 大ヒットしたイベント「丸太の朝市」は木の根っこを40~50㎝で皮付きのまま切って1本900円で販売。朝から晩まで電話が鳴りっぱなしでした。山の状況を書いてラッピングしたヒノキのハガキも好評で年末に大手商社から3万枚という注文があり、北山さんは朝から晩まで準備し続けたということです。6枚はぎのヒノキテーブルも考案。「家を建てるのは無理でも何か国産材を使ったものが身近にあればいいなと思います」と北山さんは話します。

多様なニーズに応える

 宮崎県諸塚村元村長・甲斐重勝さんの話を聞いたことは貴重な体験でした。諸塚村は森林率95%の過疎の村で、甲斐さんの家に電気が引かれたのは1960年だったそうですが、山を守り続けるという強い使命感をもつ甲斐さんの生き方に北山さんは感銘を受けました。高知県梼原町へのツアーは毎年開催。宮崎県とも長いつきあいで、双方合わせて50回以上のツアーを続けています。山を活かすため、そして代表を引き継ぐためにも北山さんは54歳で建築士2級の資格を取得しました。

 女性で山のことがわかり、建築のこともわかる人は少ないと宮崎県から講師を依頼されたのを皮切りに講演活動も始まりました。著名な建築家とともに講師を務めたこともあり、そんななかで北山さんが感じたのは林業家や建築家はユーザーが何を求めているのかわかっていないのではないかということでした。

 1999年6月、国産材住宅推進協会はNPO法人の認証を取得。そして、2005年、コープ自然派、NPO法人里山の風景をつくる会とともに「自然の住まい協議会」を設立、コープ自然派組合員の多様なニーズに応えることで、国産材の利用が大きく広がりました。

本音で話し合う家づくり

 北山さんは国産材にもデメリットがあることを伝えます。乾燥も行き届いていて使いやすい外国産材に比べて、国産材は日当たりや風向きなどによって材質が異なるので扱いにくく、広く使われている材には節などもあります。また、国産材を熟知している建築家は少なく、杉の梁なんて考えられないという建築家もいます。そこで、「国産材で家を建てるときにはすべてお任せではなく、勉強してほしい」と北山さん。また、「お客さまは神さまと言われますが、家づくりにおいてはそれぞれの知識を出し合い、可能な限り本音で話し合いたいですね。どこにこだわるかなど一緒に考えながら家づくりしたいです。山の現実をまず町の人たちに丁寧に伝えること、一人ひとりにご理解いただくことが広く伝わることだと信じてきたことが私たちの活動の原点です」と北山さんは話します。

Table Vol.448(2021年9月)より
一部修正・加筆

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