コープ自然派は生産者とともにアニマルウェルフェアに取り組んでいます。今月の「ちょっと教えて」は、国際的なアニマルウェルフェアをいち早く取り入れた「自然豚(しぜんとん)」の取組を紹介します。

アニマルウェルフェアとは?
家畜は産業動物とも呼ばれ、多くの場合、コストや効率が最優先されます。でも、家畜も感受性を持つ生きものです。「アニマルウェルフェア」とは、動物にとってできるだけストレスや苦痛のない、本来その動物が持つ行動欲求が満たされた健康で快適な飼育環境を目指す考え方。日本の畜産は、アニマルウェルフェアの対応で世界から大きく立ち遅れているのが現状です。
自然豚のアニマルウェルフェア
「本当に安心・安全な豚肉が欲しい」という組合員の声から自然豚のアニマルウェルフェアは始まりました。自然豚を生産する七星食品は先進地のEUを視察し、2019年、EUアニマルウェルフェア基準に適合する繁殖豚舎を完成させました。
一般的に母豚は妊娠ストールと呼ばれる狭いスペースで単独飼育されますが、七星食品では妊娠した母豚が広いスペースでストレスなく過ごせる「フリーストール」が採用されています。母豚たちは自由に動き回って、食べたいときに食べ、健康状態や給餌量などはITで管理されています。分娩舎は仔豚を踏みつぶさないよう仕切りはありますが、通常よりも広いスペースを確保し、仔豚が自由に動き回れるスペースや保温器も設置されています。
バイオベッドの開放豚舎
母豚のもとで大きくなった仔豚たちは肥育豚舎に移動します。一頭あたり1・5~2・0㎡と広い豚舎の床には、おがくずや堆肥、環境微生物を配合した「バイオベッド」が敷かれています。豚は穴を掘るのが大好き。夏場は水が撒かれたバイオベッドの泥で遊んだり、体に泥をつけて熱をとり、冬は地面を掘ってバイオベッドの発酵熱でお腹を温めて過ごします。

地域にも優しい
バイオベッドに含まれる微生物は、ふん尿やニオイのもとを発酵分解するので、匂いや汚水が出ることもありません。また、自然豚の豚ふんは堆肥舎で良質の堆肥となり、地域の農家に使用されるなど地域にも貢献しています。
アニマルウェルフェアでみんな幸せに
自然豚以外にも、放牧豚、オーガニック卵、平飼い卵、放牧神山鶏、放牧酪農、放牧牛など、数多くの畜産生産者がアニマルウェルフェアに取り組んでいます。
人間と動物、自然環境とのつながりを捉え直し世界で広がるアニマルウェルフェア。効率重視の生産は狂牛病や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの病気を引き起こすリスクとなり、畜産における抗生物質の使用は薬剤耐性菌のリスクを高め、人間の命をも脅かします。アニマルウェルフェアの商品を利用することで生産者を応援し、動物も人も幸せに生きることができる社会をめざしましょう。
Table Vol.516(2025年8月)