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くらしと社会

服部雄一郎さんと考えるサステイナブルな暮らし

2024年9月20日、コープ自然派京都(理事会)では、服部雄一郎さんを招いて学習会を開催。地球にも自分にも心地よい暮らし方のヒントを聞きました。

服部雄一郎さん(前列中央)と、主催メンバー。服部さんは現在、高知在住。コープ自然派しこくの組合員でもあります。

ゴミが出ないって気分がいい

 服部さんがゴミに関心を持つようになったきっかけは、29歳で神奈川県葉山町役場に転職したこと。役場でゴミ担当になった服部さんは、仕事を理解するために生まれて初めてゴミをきちんと分別。生ゴミコンポストにも挑戦しました。すると、服部家の「燃えるゴミ」の量が激減したのです。「それがとにかく面白くて。ゴミ出しの回数が減って楽になったし、ゴミ箱が臭わなくなったのも快適でした」。同時に服部さんは、ゴミ担当職員として働くなかで、ゴミ処理には膨大なお金とエネルギーがかかっていることも知ります。「ゴミが減れば、これらの問題もすべて解決するのにな、と考えるようになったんです」。

 服部さんはその後、ベア・ジョンソン著『ゼロ・ウェイスト・ホーム―ごみを出さないシンプルな暮らし』という書籍の原書に出会います。ジョンソン家が家族4人で出すごみの量は1年間にわずか1リットル。クリエイティブで美しい暮らしに感銘を受けた服部さんは自ら日本語訳を担当。この本は25ヵ国語以上に翻訳され世界中に影響を与えています。

ゴミを減らす秘訣

 日本の家庭ゴミの全国的な処理状況はここ20年間ほぼ変わらず、8割弱が焼却、2割弱が資源化、1%弱が埋め立てられています。8割を占める焼却ゴミの減量がひとつのカギとなりますが、その内訳は生ゴミ4割、紙類2割など。生ゴミはコンポストに、紙類は古紙回収に回せば、今日からでもゴミを減らすことができます。

 服部さんによれば、ゴミを減らす秘訣は2つだけ。まずは、モノを減らすこと。どんなに耐久性に優れたモノでもいずれはゴミになると考えれば、「そもそも持たない」ことは究極のゴミ減量といえます。もうひとつは、なるべく廃棄処理に困らない素材のものを選ぶこと。金属、ガラス、天然繊維など土に還る素材を優先し、劣化しやすいプラスチック製品は避けます。手に負える数の質の良いモノを大切に使うことが、サステイナブルな暮らしにつながります。

個人のアクションのチカラ

 レジ袋が有料化される前の話ですが、服部さんはある書店員さんから「レジ袋を紙袋に変えたいけれど、価格が5倍もするので無理」という悩みを聞きました。そのときは返す言葉がありませんでしたが、後日「ほしい人にしかレジ袋を渡さないケーキ屋さん」が袋の消費量を5分の1まで減らしたという話を知ります。「数が5分の1になれば価格が5倍でも大丈夫じゃないか」と目からウロコが落ちたという服部さん。「レジ袋1枚を断ることにどれだけ効果があるのかと思うかもしれませんが、多くの人が断れば、必要な変化をすぐに起こせるようになる。一人ひとりのアクションは、社会や制度を変える大きな後押しになり得るんです」。

「エ」いきょうを「シ」っかりと「カ」んがえ「ル」

 私たちは一人ひとり価値観も違えば、住む場所やライフステージによってもできることが違ってきます。みんなを一律に語ることはできません。「〝エシカル〞を合言葉に、地球にとっても自分にとってもサステイナブルなライフスタイルを見つけられれば」と服部さん。「エシカル」とは「倫理的な」という意味で、人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動を指しますが、エシカル協会代表理事の末吉里花さんは語呂合わせで「エいきょうをシっかりとカんがえル」と説明しています。暮らしの中で何かを選択するとき、その選択が社会に与える「エいきょうをシっかりとカんがえル」。「自分に合ったやり方を見つけたとき、きっと世界とつながる安定感と、可能性へのワクワクを感じると思いますよ」と服部さんは結びました。

Table Vol.507(2024年11月)

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