電磁波環境研究所・荻野晃也さん。元京都大学工学部講師、理学博士。「身の回りの電磁波被曝」(緑風出版)が4月から発売されています。

2019年3月18日(月)、コープ自然派奈良(チーム活動「地域医療を考える奈良の会」・「オリーブの木」主催)は電磁波環境研究所・荻野晃也さんを迎えて学習会を開催、電磁波による健康被害やその対策方法などを聴きました。

電磁波は放射能の仲間

 荻野さんは1973年の伊方原発訴訟で特別補佐人として住民側に協力、1976年には地震の危険性についての証人になり、津波の危険性を書いた本を出版するなど、早くから原発反対運動を支援してきました。そして、1992年の伊方原発訴訟の最高裁敗訴以降、電磁波問題を本格的に取り組み始めます。「原発を止められず福島第一原発事故が発生した責任を感じ、こうして話しているだけで涙が出そうになります。電磁波の身体への影響は世界中で深刻な問題として議論されていますが、原発問題同様、日本では無視されているのが現状です。原発の二の舞にはしたくないとの思いで活動を続けています」と荻野さんは話します。

 電磁波は空間の電界と磁界の変化によって形成される波のことで、赤外線や紫外線、原発の放射能から放出されるガンマ線やレントゲン撮影のX線も電磁波の仲間です。学習会では家電製品や送電線、高圧線などエネルギーの弱い非電離放射線を「電磁波」、ガンマ線などのエネルギーが強い電離放射線を「放射線」と区別しました。

 電気のある空間を電界と言い、電気製品のスイッチを切っていてもプラグをコンセントにさした状態では電圧がかかっているため常に電界が生じています。磁界は電気が流れることで発生し、距離に比例して減少するため、モーターが背面にある冷蔵庫は表部分の磁界が弱く、省エネタイプの製品は使用電力が少ないので磁界も弱くなるということです。

司会進行を務めたコープ自然派奈良「オリーブの木」チーム・杉山千尋さん。杉山さん自身も電磁波に過敏な体質のため大変な思いをされています。

電磁波の身体への影響

 1979年、「配電線の極低周波・電磁波被曝による小児白血病の増加」について書いたワルトハイマー論文の発表で電磁波が問題になり始めます。1996年、電磁界の健康リスクなどの調査のために世界保健機関WHO「国際電磁界プロジェクト」が発足。その頃、日本では原発建設の過剰で夜間電力が余り、オール電化住宅が普及し始めます。

 電磁波と健康被害との因果関係は完全には立証されていませんが、電磁波が細胞のカルシウム・イオンを流出させることで神経細胞の伝達を乱すため、がん細胞の発生など障害を起こす可能性が明らかになってきています。「人間の身体の細胞は微弱な電気信号で働いているため、電磁波の侵入やバランスの変化は身体に危険なはず、免疫に関係していることは間違いないでしょう」と荻野さん。送電線付近の小児がんの発症率の高さ、精子・精巣への影響、流産のリスク、男児の出生率の減少、アルツハイマー病のリスク増など多くの論文やデータ結果が発表されています。

 具体的な被爆防止対策として、電流・電圧の低い省エネ型家電や電磁波漏洩の少ない製品を選ぶ、発生源から離れる、被爆時間を短くする、遮蔽するなどがあげられます。正面部分の磁界を弱くしたIHクッキングヒーターがつくられるなど企業努力による技術の改良は、電磁波の危険性を訴える市民運動によるもの。高周波発生基地局や送電線、配電線から電磁波を防ぐためには、シールド用の壁紙やカーテンを利用する、家庭内の配線を撚り線にして鉄のパイプに通す、ブレーカーのボックスを鉄製にする、電気製品にアース線をとる方法なども有効です。

健康の定義と予防原則

 WHOの健康定義は「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」としています。地球上には37億年の進化の過程で獲得した抵抗力があるため、短期間の研究で電磁波の影響メカニズムを明らかにすることは困難です。しかし、2000年、「環境問題は今後、予防原則を基本とする」ことをEU委員会は決定。予防原則は、因果関係が十分に証明されていない段階でも化学物質などの規制を可能にする考え方です。健康被害の拡大を防止するため制度化がすすめられ、安全性が確認されるまで、危険な可能性がある限り排除しようという流れが世界中で広がっています。「子どもや胎児の発がん・生殖・脳への悪影響が心配です。電磁波は危険な可能性が高いと考え、厳しく対処すべきです」と荻野さんは話し、予防原則の大切さを訴えました。

Table Vol.393(2019年6月)