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食と農と環境

第6回コープ自然派生産者&消費者討論会②「世界の事例から学ぶ」

続いて、国内外のオーガニック事情に詳しい南埜幸信さん(ジャパン・オーガニック・コンソーシアム代表理事)に、海外の学校給食の考え方や食材の調達方法などについて聴きました。

(一社)ジャパン・オーガニック・コンソーシアム代表理事・南埜幸信さん。

学校給食は教育の一環

 生まれてから何を食べどのような生活をしてきたか、食経験の積み上げから味覚は育まれます。近年、苦味・渋みなどの味を感知できない子どもたちが急増。オーガニック食材で形成された味覚は生命にとって正しい食事と食材を判別する能力を育て、オーガニックマーケットの拡大とオーガニック生産者が増える土壌をつくります。戦後、日本の学校給食は福祉的な役割を担っていました。しかし、「学校給食法に”給食は教育の柱“とあるように、行政を始め教育現場で、学校給食を教育の一環として考えるべき」と南埜さん。自然と生命の尊重、環境保全、食文化、生きる上での基本を学ぶための教育が給食に期待されているということです。

海外のオーガニック事情

 海外では学校給食のオーガニック化が速いペースで進んでいます。

 アメリカでは、アメリカ公立学校給食制度の影響からカロリー、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、ナトリウムが少なく、全粒粉穀物が多く含まれるメニューが提供されています。カリフォルニア州サウサリートマリン地区という低所得者層が多い地域で、100%オーガニック食材の給食を試験的に実施したところ、非行に走る学生が減少しました。そして、アメリカの学校の43%が地元の農家からオーガニック食材を購入したところ、オーガニック栽培に切り換える生産者が増加。官民一体のプロジェクトにより、学校給食は地元産・オーガニック食材の割合が増えているということです。

 イタリアは食育に熱心で、幼稚園の給食はフルコース、3歳児から調理実習を行っています。2003年、オーガニック食材や地元産農産物の使用を学校給食や病院で進める法律が施行されました。また、フードインサイダーという教師と保護者による学校給食のチェック機関があり、加工肉・パーム油が含まれる食材の頻度や品質・栄養バランス、オーガニック食材の使用頻度などが調査対象にされ、しっかり監視されています。1311都市のうち、給食食材の70%〜89%がオーガニックという自治体が129団体、90%以上の都市は111に及びます。

 フランスは2022年までに給食食材の50%をオーガニックにする法律を制定。これはマクロン大統領の公約でもあり、トラヴェール農相はオーガニックで地元産の食材を50%にする目標を明言、自治体の協力が普及を促進しています。

 韓国では、親環境農業推進法(1997年)の制定により学校給食をオーガニック農産物の販路とする動きが始まり、食材調達の仕組みを国が、流通経路は生協主導でつくってきました。また、農産物ごとに営農組合を組織し、食材供給業者と年間契約を締結、オーガニック農家は継続的に安定して生産でき、生産量拡大につなげました。

 デンマークは2020年までにすべての公共食堂でオーガニック食品率60%を目標に設定し、政府による資金提供で支えています。公共調達プログラムをつくり、農家・食品会社・外食産業を結集し、供給を確保することで、オーガニック食品の品揃えを拡大しました。

 スウェーデンはマルメ市で、2020年までに市の公共食堂でオーガニック食品率100%にすることを方針としました。スウェーデン全体に大きな影響を与え、食糧予算の40%近くがオーガニック食品に充てられています。

 ブラジルでは学校給食用食材を地元の家族農家から優先して調達し、食材の30%をオーガニックにする目標を2009年の全国学校給食プログラムで設定しています。

官民一体の取り組みに

 学校給食でオーガニック食材の利用を進める国では、子どもの健康と食べものは密接な関係にあり、子どもたちの健やかな成長が国の持続的発展につながるという考え方が基本にあります。南埜さんは、海外の事例に学び、日本でも給食を教育の一環・国家事業として運営することの必要性について訴え、食材選定と調達の仕組みにおいても、生産農家が安定して供給できるよう、年間を通じたオーガニック食材調達計画、作付け入札契約制度の導入を提案しました。

Table Vol.437(2021年4月)より
一部修正

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