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食と農と環境

プラスチック製品とマイクロプラスチック

10月26日(金)開催の第21回コープ自然派生産者クラブ総会後、世界的に大きな問題となっているプラスチック製品とマイクロプラスチックについて、栗岡理子さん(日消連環境部会、さがみはら環境問題研究会)を講師に学習会を行いました。

詳細なデータをもとに衝撃的な事実を明らかにする栗岡理子さん。

プラスチックの問題点

 プラスチック製品は安くて便利だと、この50年間で20倍以上も生産量が増加しています。しかし、プラスチック製品は処理(焼却・リサイクル)にお金がかかります。1990年代初めから2000年にかけて、日本ではごみ焼却場から発生するダイオキシンが大問題になりました。各自治体ではダイオキシン対策としてバグフィルターを付けたり、高温燃焼を可能にするなど焼却炉に多額を投じました。1グラムのダイオキシンを減らすのに1億円かかるのが全国の自治体の平均額です。その甲斐あってダイオキシン排出量は減少しましたが、焼却炉は30年に一度の更新が必要で、その都度、多額の税金が投入されます。また、現在、6割以上の自治体が容器包装プラスチックをリサイクルしていますが、最近、中止する自治体が増加。その理由は回収・選別にお金をかけてもきちんとリサイクルされていないからです。容器包装も含めて年間940万トンのプラスチックごみが排出され、そのうち新しいプラスチックになるのは22%、国内でリサイクルされるのは34万トンで他は海外に送られています。

 プラスチック製品には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、防カビ剤、着色剤、帯電防止剤などさまざまな化学物質が添加され、焼却やリサイクル、あるいは散乱に伴って有害化学物質が発生する可能性があります。

新たに浮上したマイクロプラスチック問題

 さらに、マイクロプラスチック(以下MP)問題が起きています。MPとは5ミリ以下のプラスチックのことで、もともと5ミリ以下につくられたもの(レジンペレット、マイクロビーズなど)と、大きな製品だったのが破片化したものがあり、合成繊維のくずやタイヤくずもMPです。マイクロビーズは洗顔剤やビーズクッション、ビーズソファ、ぬいぐるみなどのほか、工業用研磨剤、塗料、医薬品、衛生用品などに使われ、日本は世界全体の8%(19万トン)を使用。今、世界各国でマイクロビーズを使用した化粧品などが製造禁止になっていますが、日本では2016年に日本化粧品工業連合会が会員企業に自主規制を促しただけで、国としての規制(努力義務)は今夏に施行されたばかりです。

 最近、人間の便からMPが出たというニュースが流れました。日本を含む8ヵ国に住む人の便を調査したところ10グラム当たり平均20個のMPを検出。ポリプロピレンとペット樹脂が多く、ポリプロピレンは食品の容器包装などに、ペット樹脂は飲料などに使われています。

 2018年5月〜9月に環境ベンチャー「ピリカ」が行った関東・関西の河川調査では、11河川26地点中、11河川25地点でMPを検出、ニューヨークの川と比べて日本の川は汚染度が高くなっています。しかし、何といってもMP発生地は海岸で、海岸は温度が高くなるので破片化しやすく、海岸で破片化したものが海でさらに細かくなり、細かくなればなるほど沖へと流されます。九州大学磯部教授らが日本近海50ヵ所以上を調査した結果、平均1立法メートル当たり3個ほどのMPを検出。これは世界平均の27倍の密度で日本近海はホットスポットです。東京農工大チームの2015年の調査では、東京湾の64匹のカタクチイワシのうち49匹から150個のMPを検出。京都大学チームが大阪湾や女川湾、敦賀湾などを調査したところ、カタクチイワシ以外の魚も含む平均4割からMPが見つかっています。

MPの危険性とは

 MPはウミガメや魚など生物に被害を与え、海洋に残留しているDDTやPCBなどの化学物質を高濃度に吸着しやすい性質を持っています。プラスチック自体にも環境ホルモンなどの有害化学物質が含まれていることがあり、破片になっても残留、さらに、プラスチックが化学物質や病原菌を運びます。劣化したプラスチックはメタンなどの温室効果ガスを放出することもわかっています。

 フランスの実験ではカキの生殖系にMPの悪影響が見られたと報告。また、海鳥の4割から有害化学物質を検出し、イルカの体内にも有害化学物質が堆積していたことが報告されています。環境ホルモンは正常なホルモン作用に悪影響を及ぼし、特に胎児や発達期の子ども、卵子や精子などの生殖細胞への影響が大きいとのこと。また、アトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息、精子の数や質への影響、乳がんの増加、子宮内膜症との関連、精巣がん、自閉症、ADHD(注意欠如多動性障害)、IQの低下などを誘起する可能性があります。MPからはPCB、ダイオキシン、DDT、ディルドリン、ノニルフェノール、ビスフェノールAなどの環境ホルモンが検出されています。

世界各国で対策がすすむ

 2015年のプラスチック総廃棄量は3億トン、このうち47%がペットボトルやレジ袋などの使い捨てプラスチックです。そして、年間480万トンから1270万トンが海に流出し、このままだと海のプラスチックごみ量は魚の量より多くなると試算。全海域に浮かんでいるMPは15兆から51兆個、海底に蓄積する量は海水中の量より4桁多いとのこと。ドイツの研究チームが北極の海氷5ヵ所を分析したところ、1リットル当たり最大1万2000個のMPを検出、太平洋ゴミベルトには1兆8000億個のプラスチックごみが漂っています。そして、プランクトンがMPを飲み込む量が増えるとプランクトンの数が減少し、海の生態系が大きく崩れてしまいます。

 このような状況下、世界各国で対策がすすめられています。使い捨てプラスチックの人口1人当たり総廃棄量は1位アメリカ、2位日本、3位EUですが、EUは改革をすすめ、アメリカと日本はG7の海洋プラスチック憲章に署名しなかったことで各国から批判されました。

 韓国は年内にレジ袋禁止、台湾は使い捨てプラスチックを2030年までに全面禁止。インドは2022年までにすべての使い捨てプラスチックを排除する計画、フランスは2020年から使い捨てプラスチック禁止、レジ袋は2016年に禁止、レジ袋以外の生鮮食品包装用などの袋は2017年に禁止。イギリスは2019年からプラスチック製綿棒やストローなどを禁止、2042年までに不要なプラスチックをすべてなくす計画で課税も検討、飲料容器はデポジット制度で回収。マレーシアは2030年までに使い捨てプラスチックゼロに。米国、カナダは一部自治体でストローや使い捨て食器類を禁止。日本は来年のG20に向けて検討中とのことですが、世界から大きく遅れています。

 プラスチック削減をけん引しているのはEUで、2013年プラスチックごみについての国際会議を開催、使い捨てプラスチック大幅削減を決定しました。さらにEUは、2018年1月に「プラスチック戦略法案」を採択。10月にはこの戦略を具体化した欧州委員会による法案を欧州議会が可決しました。その内容は、加盟国に対して使い捨てプラスチック製品の全面禁止または大幅削減を求めることに加え、代替製品の開発を促進するというものです。

今後、求められること

 世界の企業もさまざまな対応を行っています。パタゴニアはファイバーの出ない洗濯ネットを販売、ラッシュはシャワージェルの固形化・脱パッケージ化を行うなど新商品を開発、日本ではプラスチックに代わる紙製容器の開発が活発です。

 今後、容器包装に求められるのは、添加剤が安全であること、リサイクルしやすいもの、再生可能原料でつくられたもの、キャップと本体が一体化したものなど。そして、消費者がすぐにできることは、マイバッグ・マイボトル持参、亀の子たわしやセルローススポンジを使う、自然素材の衣類を選ぶ、プラスチック包装されていない商品を並べるよう店に頼む、使い捨てカップを提供する店にはリユースカップはないか聞くかマイカップ持参、マイクロビーズやレジンペレットおよびそれを利用した製品を買わない、調理にラップやプラ袋を使わないなどが挙げられます。

Table Vol.381(2018年12月)

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