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くらしと社会

子どもたちの未来に何をのこす?

2025年2月24日、コープ自然派おおさか(理事会)は阪南中央病院の医師・村田三郎さんを招き、放射線被ばくの現実と私たちがとるべき姿勢について学びました。

講師の村田三郎さん(中央)と理事のみなさん

ノーベル平和賞と核兵器の脅威 

 村田さんは長年、広島・長崎の原爆被ばく者や原発被ばく労働者を診察し、原爆症や労働災害の認定支援に携わってきました。2024年12月、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しましたが、村田さんは「喜んでばかりいてはダメで、この時期に平和賞を贈られた意味を考える必要があります。いつ核兵器が使用されるかわからない世界情勢があるからこそ、世界の人に核の危機を示す警鐘としての受賞だと考えています」と話します。ひとたび核兵器が使用されれば全世界的な被害がもたらされ、それは原発事故でも同様です。

核実験と放射線被ばく

 これまで世界で2千回以上の核実験が行われ、地球上には1万2500発もの核弾頭が存在します。1954年のビキニ水爆実験で被ばくした第五福竜丸の例は、被ばく者への補償が軽視された歴史を示しています。米国からの補償金は漁業の損失に充てられ、被ばくした漁船員たちへの補償はほとんどありませんでした。「核開発や原子力の『平和利用』に支障が出ないように、放射線・放射能の影響は常に過小評価されてきました」と村田さんは語ります。

放射線や被ばくに関するデータや実例が示され、放射線の危険性やその影響についての理解が深まりました。

低線量被ばくの実態調査

 被ばく者はがん・白血病だけでなく全身に影響が出る可能性がありますが、国は被ばく補償を最小限に抑えるために厳しい認定基準を設けてきました。
 原爆被ばく者は一般の人に比べて高い有病率を持っていることや、低線量被ばくでも長期的にみれば健康リスクがあることが長年の研究からわかってきています。「100〜150mSv以上でなければ健康被害は出ないという見解は誤りで、長期の低線量被ばく調査で20〜50 mSvレベルでも固形がんの増加が見られています。低線量でも長期間にわたって被ばくすれば累積線量は高くなり、原爆も原発も放射線の影響は変わりません」」と村田さん。

原発労働者の健康被害は闇に

 福島原発事故の緊急時労働者は高線量の被ばくをしました。それだけでなく、原発稼働から現在まで、広島・長崎の原爆被害者の数に匹敵する何十万人という原発被ばく労働者がいます。しかし、下請けの労働者は充分な安全教育も被ばく管理もされず、多くの被害の実情が闇に消されています。被ばくの後遺症に苦しむ原発労働者のうち労災認定されたのはごくわずかで、非常に苦しい生活を余儀なくされています。「多くの原発労働者が危険な作業を担い、社会のエネルギー産業を支えてきました。その労働や犠牲によって支えられていることを考えてください」と村田さんは話します。

日常の被ばくを防ぐために

 村田さんは「無用な放射線被ばくはできる限り避けてください」と強調します。自然放射線や病気の診断や治療に際して必要と判断して行うCT検査などの医療被ばくを除き、意図しない被ばくに晒されないよう注意を払うことが大切です。

子どもたちの未来に残すもの

 核兵器や原発事故だけでなく、ウラン採掘や原発の日常運転を含む「核燃料サイクル」のあらゆる過程で被ばく者が生まれ、その被害が切り捨てられています。放射線被ばくの問題は、水俣病など他の公害問題と共通の構造を持っています。被害を隠して、補償を最小限に切り縮め、被害者同士を分断して声を出せなくしてしまいます。
 最後に村田さんは、「被ばくに安全な量はありません。自分自身の被ばくを防ぐと同時に、被ばく被害者への共感と支援を忘れないことがとても大切です。核と人類は共存できません。次世代に負の遺産を引き継がないよう、原爆、原発、核エネルギー含めてやめるしかありません」と語りました。

Table Vol.514(2025年6月)

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