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くらしと社会

もっと知りたいワーカーズコープ

2020年12月4日、労働者協同組合(ワーカーズコープ)法が成立、2022年10月1日に施行されます。
2022年7月24日(日)、コープ自然派しこくはワーカーズコープ学習会をオンライン開催、基調講演やパネルディスカッションを行い、これからの働き方について考えました。

※イメージ

組合員と女性の働き方

 生協はより良い暮らしを実現するために、商品の供給や暮らしに役立つ活動、地域社会への貢献を役割とし、出費・利用・運営を組合員が担う非営利団体です。1970~1980年代は共同購入班で利用する専業主婦の組合員が多数でしたが、1990年代半ばから共働き世帯が専業主婦世帯の2倍になっています。しかし、家庭での家事・育児・介護の負担を抱えたまま、女性は本当にやりたい仕事ができているでしょうか。コープ自然派しこくでは、希望する収入や働き方が実現できる”良い仕事“を創出できる仕組みをワーカーズコープに見出し、その展望と取り組みを組合員とともに模索しています。

協同労働という働き方

 基調講演ではワーカーズコープ・センター事業団・酒井厚行さんが「協同労働の歴史とこれからの暮らしとしごと」をテーマに話しました。一般的な会社は投資家が出資し、経営者が経営し、労働者が仕事に従事するというように分断された働き方です。ワーカーズコープでは自分たちが出資し、経営方針を自分たちで決め、その方針に従い自分たちが働きます。

 日本のワーカーズコープの始まりは失業からの脱却でしたが、みんなが主人公になれる働き方、仕事の創出、地域の中のコミュニティ・拠点づくりなどへと発展し、20年以上の市民運動から「労働者協同組合法」が今年10月1日に施行されることになりました。「労働者協同組合法」は多様な就労機会の創出、地域の需要に応じた事業を実施(介護・福祉、子育て、地域づくり、若者・困窮者支援など)することで持続可能で活力ある地域社会の実現を目ざす法律です。組合員の議決権・選挙権は出資口数にかかわらず平等(1人1票)で、組合員の責任は出資額を限度とし、出資配当はなく、剰余金配当は組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行われます。発起人は3人以上(NPO法人は発起人10人以上)、設立要件が容易(NPO法人は審査が厳密)で、業種に制限はありません(労働者派遣事業を除く)。組合員との間で労働契約を締結するため、労働条件が整えば雇用保険や社会保険に加入できます。

 ワーカーズコープ・センター事業団は「センター事業団(任意団体)」「企業組合労協センター事業団(企業組合法人)」「特定非営利活動法人ワーカーズコープ」の3つの組織が一体的運営を行い、全国約400ヵ所の事業所で約1万人が就労しています。一人ひとりが能力や個性、主体性を発揮し、働く機会を創出することで”よい仕事“を追求しているとのこと。協同組合原則や経営の指標など判断基準を前提に、事業計画や経費、給料など方針をみんなで徹底的に話し合います。意見が一致するまで話し合うため、時間を要しますが、この時間を無駄とは考えません。疑問を感じながら仕事をするより、疑問を解消した方が仕事に対する意欲が高まり、生産性が向上するからです。また、ワーカーズコープ・センター事業団の民主主義は多数決で物事を決めません。少数派の意見を聴くことで、偏りのない結論へと変化するということです。

 「少数派の意見を排除し、全員が同じルールのもとで働かされる社会は、あきらめや無関心が広がります。人には得意、不得意があり、考え方もさまざま、当初は同じ熱量で始めた事業も徐々に差が生じ、メンバー構成や事業内容も変化するものです。協同労働という働き方は永遠に未完成だと考え、すすめています。現代社会はグローバル化によって対立・分断・孤立・排除・競争が引き起こされてきました。グローバル経済に代わる経済のあり方として、横につながる経済、フラットにつながる社会づくりが大切。あらゆる関係性のなかで協同するという精神を地域に広げ、一人ひとりがどういう地域社会の中で、どういう生き方をしたいかを考え、選び、行動する社会になることを願います」と酒井さんは締めくくりました。

「センター事業団のヘルパー講座受講をきっかけに就職、必要に応じた多様な働き方が合っていました」
とワーカーズコープ・センター事業団四国開発本部本部長・酒井厚行さん。

働き方を自分で決める

 続いて、コープ自然派しこく・林宏通さんと(株)情熱カンパニー・三木義和さんをパネリストに、酒井さんのファシリテーションでパネルディスカッションが行われました。

 林さんは子育てに最適な環境を求めて、2019年に家族で東京から徳島県阿南市に移住。子どもが誕生した10年前には勤務先の男性育休取得第1号になり、その後、子どもは園舎を持たず自然の中で遊ぶ「森のようちえん」に、小学校はフリースクール「TOEC自由な学校」へ。そして、自身の働き方も変えようと、現在、(株)四国の右下木の会社で持続可能な森づくりに取り組んでいます。(株)四国の右下木の会社は自分の働き方を決める裁量が大きく、林さんは週4日間勤務、土日は家族と過ごし、残りの1日は地域活動を行っています。

 以前、林さんは時間を切り売りする働き方で自分がすり減っていくことを感じつつ、仕事とはそういうものだと諦めていました。しかし、仕事と労働は違うのではないか、与えられた仕事をするのではなく、自ら仕事を創出し、それが社会の幸せにつながり、自分の幸せにもつながることに気づいたということです。

「仕事はお金を得るための手段と考えるのではなく、お金を得て何をしたいか自分に問いかける作業が大切です」
とコープ自然派しこく・林宏通さん(チーム活動「土中環境」メンバー)。

仕事と社会の課題解決

 三木さんは農業生産・販売を行う(株)情熱カンパニー、障がい者の就労継続支援と農作業受託を行う(株)チーム情熱、オーガニック野菜・果物の生産販売などを行うカンボジア農場、徳島県全域の農産物を共同販売する(株)菜々屋を運営。会社員時代を経て、「わくわくする事業、一生携わる仕事をやりたい」と新規就農を始めるために阿南市に移住。2014年に(株)情熱カンパニーを立ち上げ、続いて福祉事業や海外での農業経営など「農業で幸せに生きていく」ことを目的に事業を展開してきました。

 三木さんは会社員時代の厳しいノルマによるつらい経験から、「自社では売上目標を設定していません」と言います。各自が得意分野に取り組めばひとりでに売上げが伸び、教育費用も不要とのこと。売上目標を掲げなくても毎年増収・増益が続く、理想を形にした会社だということです。

 「協同」とは力を合わせ、助け合い、支え合って共に働くこと、ワーカーズコープは出資・経営・労働を三位一体として組合員全員が担う協同組合です。環境・気候・食糧・民主主義などが危機の現在、自治と共生を育むための協同がワーカーズコープに求められています。

(株)情熱カンパニー代表取締役・三木義和さんは、多種類の野菜を提供するコープ自然派の生産者。
2015年オーガニック・エコフェスタ栄養価コンテストではキャベツが最優秀賞を受賞しました。

Vol.474(2022年10月)より
一部修正・加筆

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