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くらしと社会

12人の絵本作家が描く「おうえんカレンダー」

福島原発事故による影響から子どもたちを守ろうと立ち上がった12人の絵本作家による「おうえんカレンダー2020」が販売されています。2019年11月11日(月)、コープ自然派おおさかでは、カレンダープロジェクト代表・水戸晶子さんと福島原発事故後、母子で避難している森松明希子さんにお話を聴きました(コープ自然派兵庫・京都でも開催)。

カレンダープロジェクト代表の水戸晶子さん(左)と「原発賠償関西訴訟」原告団団長の森松明希子さん(右)。

子どもたちを守りたい‼

 水戸晶子さんが代表を務めるカレンダープロジェクトは2015年からスタート。水戸晶子さんの父親・水戸巌さんは物理学者で反原発の活動家でしたが、1987年1月、大学生だった双子の弟たちとともに北アルプスで遭難しました。その少し前、晶子さんは弟に相談して六ヶ所核燃料サイクルをテーマにした大きな絵本を卒業制作。父親と弟たちを亡くした後、「白い村」というタイトルの大きな絵本を六ヶ所村の人たちに見てもらいたいと1人で出かけます。「1軒1軒、漁師さんたちを訪ねてお話を聴きました。この体験が反原発への想いを強くしたきっかけになったと思います」と晶子さん。3・11後、母親の喜世子さんは巌さんの遺志を継いで反原発活動に精力的に取り組んでいます。そして、1枚のチラシを通して絵本作家・いちいみかさんとつながり、大学の同級生だった絵本作家・はたこうしろうさんとも偶然、再会したことでカレンダープロジェクトがスタートしました。

 2016年カレンダーの収益は「子ども脱被ばく裁判」へ寄付、2017年カレンダーは「3・11甲状腺がん子ども基金」へ、2018年カレンダーは「子ども被災者支援基金」へ。一部を「SORAアニマルシェルター」へ寄付したのは動物たちも原発事故の犠牲者だとの晶子さんの思いからでした。一方で、販売数の拡大に伴う事務作業が膨大になり、カレンダー制作を1年間休んで法人化することで組織を整備。2020年カレンダーは「311受入全国協議会」に寄附することになっています。「311受入全国協議会(うけいれ全国)」は2012年に活動を開始、原発事故の影響を受けた地域の子どもたちを「保養」という形で支援し続ける全国の団体のネットワークです。12月22日(日)には高槻現代芸術劇場大ホールにて「絵本作家によるおうえんフェス2020」が開催されます。

古民家を利用したスペースで2人のお話を聴く参加者のみなさん。交流タイムではコープ自然派のコーヒー・紅茶、マフィンを味わいました。

原発事故で失ったもの

 森松明希子さんは2011年5月、3歳の息子と0歳の娘とともに福島県郡山市から関西に避難、子どもたちの父親は現在も郡山市に住んでいます。森松さんは原発事故によって「ふつうの暮らし」を奪われたことを身をもって体験し、「原発賠償関西訴訟」原告団団長を務めています。「裁判を通して失ったものや失おうとしているものが明確になりました。政府は小児甲状腺がんの多発と原発事故との因果関係を認めず、自主避難者は復興の妨げになるとバッシング、裁判では国土の評価を不当に下げる者であると書面に記されています。そんななかで大阪地裁裁大法廷の傍聴席をいつも満席にしてくださっていることに感謝しています」と森松さんは話します。

 森松さんが郡山市で核家族としての生活をスタートしたとき、慣れない地での子育てを助けてくれたのは近所のママたちでした。そんな彼女たちが避難できていないことに森松さんは心を傷めています。そして、「避難する・しない」で分断を煽る動きもこの8年間で実感してきました。「避難」「保養」できるかどうかは、情報量や経済状況、家族関係などによって決まり、「避難」「保養」という言葉さえタブーとなっている現状は、言論の自由や知る権利を奪われた戦時下と同じではないかと森松さん。また、娘が小学1年生のとき、「私のうちは福島」と担任に告げたと聞き、子どもたちのアイデンティティを守らなければならないことも痛感。原発事故後、いじめや不登校の子が多くなり、誰もが「ふつうの暮らし、避難の権利をつかむ」ことへの想いを一層強くしています。

Table Vol.405(2019年12月)

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