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食と農と環境

エシカルな漁業を選ぼう

2019年2月21日(木)、コープ自然派事業連合にて「水産資源管理と水産エコラベル」学習会を開催。マルハニチロ・片野歩さんから水産業の国内外の現状、取り組むべき課題などについてお話を聴きました。

「日本の水産業の資源管理は科学的根拠に基づいて行う必要があります」とマルハニチロ・片野歩さん。アイスランドで漁獲したカラフトししゃも「レンジししゃもフライ」(MSC認証商品)が4月に新登場。

満足度99%の先進的漁業

 漁業先進国として知られるノルウェーの漁船は最新機器による自動化が進み、全漁業従事者の99%が現状に満足していると回答。また、アトランティック・サーモンの養殖が盛んで巨大養殖施設の建造が進んでいます。ノルウェーでの漁業関係の船舶は昨年の半年間で26隻(1隻約20億円)を受注。持続可能な水産資源管理が進められた結果、アイスランドや北欧諸国で漁船や加工施設の中長期的投資が積極的に進められています。

 欧州では1970年代に激減したニシンの一時的な禁漁により、資源と漁獲量がV字回復しました。また、欧米では資源保護のためにズワイガニのメスの漁獲を禁止、ノルウェーでは漁獲枠が船ごとに厳格に定められています。このため脂がのらない時期はサバを獲りません。また、欧米・オセアニアでは数十種類から数百種類もの魚にTAC(総漁獲可能量)を設定。TACはある海域の特定の水産資源の減少を抑えるために漁獲量の上限を定める規制で、科学的な根拠と国連海洋法条約に基づいています。

各生協およびコープ自然派事業連合など役職員が多数参加しました。

減る水揚げ量と資源評価

 世界の総水揚げ数量は1950年代から増え続け、世界銀行による2030年の水揚げ数量予測は2010年に比べて23.6%の伸び率です。一方、日本の周りの海ではマイナス9.0%と世界で唯一マイナス予想されています。日本の水揚げ数量は1984年の1282万トンをピークに下がり続け、2016年は436万トン、漁業従事者の平均年齢は約60歳と後継者不足も深刻です。世界全体で水産物の消費量が増え続け国際価格が上昇し、日本で水産物の買い負けが起きているため、消費量と輸入量が2000年代から減少しています。食文化を守るためにも、国内の資源管理が必要です。

 長年、日本では稚魚の乱獲、海底を傷める引き網漁、目的以外の魚種まで捕獲する混獲などが続けられてきました。持続的に資源を保全するルールが不足し、ほとんどの魚種にTACが設定されていません。また、「水産研究・教育機構」が発表している日本の海の資源評価は、国際的な水準からみて評価が緩すぎるということです。

 日本近海の近隣諸国の漁船の激増も問題です。中国は5月から9月にかけて排他的経済水域内での漁業を禁止し、燃料費の補填など国の補助金による遠洋漁業を推奨。自国海での漁獲量を抑えて資源を回復させる狙いです。ロシアは漁船と水産加工場の新建造を急激に進め、イワシ・サバの漁獲増加を目ざし、漁獲量495万トン(2017年)から600万トン(2030年)に増やす目標を掲げています。

水産エコラベルの影響力

 「MSC(天然魚)/ASC(養殖魚)認証」は、持続可能な水産物を承認・推奨する水産エコラベル。東カナダで起きた乱獲による大西洋マダラの激減を反省して誕生し、NPO法人が定めた基準に基づいて第三者認証機関が厳格に認証します。ウォルマート、カルフール、マクドナルド、ハイアットなど大手スーパーや外食産業、ホテルなど世界の大手企業が「MSC/ASC認証製品や同等の管理を行う水産物の取り扱いを100%にする」などと達成年度や目標水準を宣言するようになり、消費者の認知や理解が進みました。また、米国モントレー水族館で実施している魚の資源状態で格付けするプログラム「シーフードウォッチ」は緑・黃・赤の3段階で魚を色分けし、「問題あり」(赤色)を付けられた魚はスーパーマーケットやレストランからなくなり、もし販売していれば環境保護団体や消費者団体からクレームの対象になります。これらの制度やプログラムは市場での影響力が大きく、その基準に達していない水産物は商品価値がなくなりつつあるということです。

 2015年、国連で持続可能な開発目標SDGsが採択され、その中のゴールの1つであるSDGs14「海の豊かさを守ろう」では2020年までに魚の資源を持続可能にし、MSY(最大持続生産量)のレベルまで回復させる目標を掲げています。そして、昨年12月、70年ぶりに日本の漁業法を改正。TAC(総漁獲可能量)の対象魚種の増加、IQ(個別割当制度)の実施、MSY(最大持続生産量)に基づく資源管理などが盛り込まれた国際的基準の資源管理方法に期待が高まります。

Table Vol.393(2019年6月)

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