Table(タブル)はコープ自然派の情報メディアです。

食と農と環境

~トークセッション~ ネオニコフリーを実現する農業

「ネオニコフリー想いをつなぐリレー学習会」ではトークセッションも行われ、中下裕子さん(弁護士・NPOダイオキシン環境ホルモン対策国民会議代表)、木村ー黒田純子さん(医学博士・環境脳神経科学情報センター副代表)、小祝政明さん(一般社団法人日本有機農業普及協会代表・NPOとくしま有機農業サポートセンター校長)が「ネオニコフリーを実現する農業」について語りました。

左から、小祝政明さん、黒田ー木村純子さん、中下裕子さん。

BLOF(Bio Logical Farming:生態系調和型農業)理論について

小祝 どのようにして栄養価が高くておいしい作物を減農薬・無農薬でつくり、手ごろな価格で供給できるかを考えてきました。そして、これらを可能にする有機農業をBLOF理論としてまとめています。BLOF理論に基づく有機農業では多収穫が可能になり、農薬を使用しなくても害虫や病原菌がつきません。また、糖度・抗酸化力・ビタミンCの濃度が高く、硝酸イオン濃度は低い作物が収穫できます。小松島市のJA東とくしまではBLOF理論を取り入れることでコシヒカリの食味も収量も上がりました。BLOF理論は植物生理に基づいた理論で、最近、植物は根から酢酸を吸収することもわかりました。

中下 自分自身でも有機栽培していますが、食感がしっかりしていて噛むと味が感じられ、どんどん食べたくなるおいしい野菜が収穫できます。週末農業で自分の食べるものをつくることは可能です。国民皆農制度をつくり、物々交換したらいいですね。

木村-黒田 生産者にとって農薬を使わないことは難しいと思いがちですが、BLOF理論だと大丈夫ですね。

小祝 これをやればいいというようなマジックも奇蹟もありません。植物生理をきちんと勉強することが大切です。農業者だけでなく家庭菜園でもぜひ植物生理を理解していただきたいです。なぜなら地球上に生きている限り、私たちはどうやって生きているかというしくみを知らなければ環境を壊す側にまわってしまうこともあります。BLOF理論を学ぶことで、やってはいけないこと、やっていいことが科学的に理解できると思います。

理論を深くきちんと学ぶ

中下 日本の有機農業進捗率は大変低いですが、どうしてなのでしょうか。

小祝 みなさんが安定した知識を持っていないからです。有機農業を始める方は多いのですが、98%の方がやめてしまいます。慣行栽培より哲学的な理由で有機農業を始めますが、いざ農作業を始めると日常的に技術や知識を学ぶ余裕がなくなってしまいます。そして、収量が低ければ生活できないのでやめざるを得ません。勉強して有機農業を始めた人は0.1%に満たないくらいです。

中下 慣行栽培では勉強しなくてもJAの指導のとおり農薬を使い、何かあればJAを頼ればいいですが、農業者も知識を得る努力が必要ですね。外国ではどうなのでしょうか。

小祝 コンサルタントが入る場合が多いですね、日本はコンサル制度がなく、コンサルタントに相談することはプライドにかかわるという気持ちがあるようです。

木村-黒田 勉強するシステムとして大学の農学部はどうなのでしょうか。

小祝 残念ながら有機農業を教えている農学部はありません。アメリカのワシントン州にあるくらいです。私は中国やドイツ、東南アジア、アフリカにも教えに行っていますが、論理的・科学的検証が行われていないので技術が確立していないですね。コープ自然派のサポートもあり、日本から科学的な理解を伴った有機農業が広がっていくと思います。

中下 では、私たちは有機農業の最先端にいて、コープ自然派はそれを動かしていると言えますね。小松島市にあるNPOとくしま有機農業サポートセンターを訪ねましたが、研修ではBLOF理論を学び、自分で土壌分析できる施設が完備しています。各農家が有機農業を始めるとき、自分の土壌を分析し、その結果に基づいて足りない栄養分を補っていくというような研修施設が各地にあれば日本の農業は変わるのではないかと思います。

ムーブメントを起こそう

小祝 20代のとき、何のために生きているのかわからなくなったことがあり、それが有機農業に関心をもつきっかけになりました。その間、人間が気づかないところで作物に弊害を与えていることがわかりました。

中下 自分で野菜をつくるようになると野菜の見方もまったく変わりますね。消費者も見栄えが良いものを選ぶなど有機農業を妨げているところもあります。そういう意味で実践することも大切。2006年に有機農業推進法が成立しましたが、有機農業の原理原則をふまえて実践し、研究する大学や研究所があってしかるべきだと思います。農水省との接点はいかがですか。

小祝 今回の品評会では国の予算をいただきましたが、条件として地方自治体の試験場の方たちも対象にしてほしいということでした。有機農業を指導できる人がいないからということで指導員を育てる活動を始めました。肥料業界の転換は早く、新しい肥料の開発をしようとしています。彼らも仲間にすると有機農業がもっと進展するのではないかと思います。

木村-黒田 何かを犠牲にして生きていくのは仕方ないことだと思っていましたが、得意分野でわかったことを伝えたいと思います。地球全体が本当に危なく、人間が負荷を与えていることが多いです。

小祝 みなさんに伝えたいのは深く勉強してほしいこと。人気や流行は一過性のもので科学的に勉強したことは信念になります。消費者のみなさんが深く勉強して生活が変わると生産者も変わります。

中下 コープ自然派の組合員さんがムーブメントを起こしてほしいですね。日本から世界に有機農業理論を発信してほしいと思います。

四国・関西から多数の組合員・職員が参加しました。

Table Vol.376(2018年10月)

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

アーカイブ

関連記事

PAGE TOP