2005年、NPO国産材推進協会、NPO里山の風景をつくる会、コープ自然派事業連合は、川・山・海の環境を良くしようと「自然の住まい協議会」を設立、日本の山の木を使った住まいづくりなどに取り組んでいます。2019年9月14日(土)、NPO国産材住宅推進協会・北山代表の講演会を開催、国産材で家を建てた子育て世代の組合員にもお話を聴きました。
日本の森林の厳しい現状
商品案内とともに配布される機関紙「木族」(関西エリア限定)でおなじみのNPO国産材住宅推進協会は約40年前から日本の木を使った住まいづくりに取り組んできました。また、大工や左官など職人の伝統の技の継承にも力を入れています。
講演の冒頭で1枚の写真を提示し、「山が手入れされず崩れてしまった状態で、日本各地でよく目にする風景です」と北山さん。日本は世界有数の森林国、国土の67%が森林に覆われています。そのうち40%は人工林で、植林し、育て、伐採して使い、また植えるというサイクルを守ることで受け継がれてきました。そして今、日本の森林は31億㎥(2006年)という膨大な蓄積量を有し、杉とヒノキが人工林の70%(杉44%、ヒノキ25%)を占めます。杉は成長が速いため、戦後、積極的に植林した時期がありました。しかし、安価で使いやすい木材が大量に輸入されるようになり価格が低下、さらに住宅着工率が年々減少し、1970年には191万棟だったのが、2017年には96万棟(うち木造55万棟)と大きく低下しています。
林業の現状と森林の役割
木を育てるには下草を刈り、間伐を繰り返すなど手入れが必要です。育林コストは1ha当たり121万円を要し、輸送コストや労働コストなどを入れると1ha当たり311万円にもなります。一方、40年~50年を経た木の売却価格は1ha当たり94万円です。また、1ha~5ha未満の山の所有者が74%、1ha~10ha未満が90%を占め、その土地に住んでいない山林所有者が4分の1を占めます。「これでは山はなかなか活性化しません。これから植林して手入れして木を育てるだけの力がこの国にあるのかと不安になります。でも、何とか活性化して次世代に継承したい。そのためには私たちが消費するしかないのです」と北山さんは話します。
森林は多面的機能を持っています。二酸化炭素を吸収して地球温暖化を抑える働きがあり、土壌を覆う落葉樹や下草などによって土砂崩れを未然に防ぎます。また、雨水を地中に浸透させる能力も高く、水を浄化する働きもあります。さらに、癒し空間としての役割もあります。
続いて、木を取り入れたくらしの提案です。国産材住宅推進協会・事務所の玄関には木の看板が掛けられ、床には杉板を敷き並べて心地良い環境を創出、イベントやワークショップ、学習会なども開催しています。
さらに、木を使った工夫として、東屋のような空間、リビングに置いた一枚板テーブルなどを紹介。杉板を敷いたリフォーム例も紹介され、「杉板が元気づけてくれる、いい気を与えてくれる」との感想をもらったとのこと。保育園や幼稚園で床を杉板に張り替えただけでインフルエンザや風邪が少なくなったという例や多動症状と言われていた子が落ち着いて遊ぶようになったケースも紹介されました。「マンションでも木を少し取り入れることで空気感が変わり、くらし方が大きく変化します。一室だけでもぜひ木を使ってください。木は未知の世界、工夫しだいでできることがたくさんありますよ」と北山さんは話しました。
子育て世代の東上さん(コープ自然派おおさか組合員)は国産材を使った住まいづくりに挑戦。
6歳、3歳、夫との4人家族の東上さんは賃貸マンションから新築を考える際、どんな材質で建てるかにこだわっていました。ある日、「ポスティ」で「国産材で家を建てませんか」という記事を目にしてNPO国産材住宅推進協会に電話、「土地と中古住宅の見極め方」というセミナーに参加しました。
そこで、国産材で建てることも夢ではないことがわかり、国産材で建てたい!との思いを強くしました。シンプルでコンパクト、子ども部屋はつくらずみんなでくつろげる広いリビング、2階建て、ガレージ付きという条件で土地探しから始めました。
1年半でようやく適当な土地が見つかり、この2月に完成。冬は温かく、夏は快適。3歳の子は広いリビング、6歳の子はロフトがお気に入り、木目模様を眺めることも親子で楽しんでいるとのことです。
「将来は子ども部屋が必要になるかもしれないし、生活スタイルの変化や予算に合わせて家を少しずつつくっていくことも大切です」と北山さん。東上さんの新居はオープンハウスとして提供され、子育て世代の住まいづくりにヒントが与えられたようです。
Table Vol.402(2019年10月)