2020年2月9日(日)、「戦争あかん!ロックアクション」などの呼びかけで、山田正彦さん(元農水大臣)による講演会「日本の食と農が危ない!~売り渡される食の安全~」が行われました。コープ自然派おおさかはこの講演会に賛同しました。
TPPによる国内法改定
2019年1月、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が発効、実質5日間で約半月分の牛肉の輸入増。2019年2月1日には日欧EPA(経済連携協定)が発効、EU産豚肉の輸入量が5割増、乳製品とワインの輸入量が3割増加しました。そして、2020年1月1日、日米FTA(自由貿易協定)が発効し、成長ホルモン剤を投与されたアメリカ産牛肉などが輸入されています。「日本の食と農にとって大変な危機です。私が農水大臣だったとき、TPPが発効されれば食糧自給率は14%に落ち込むだろうと試算し、反対してきましたが、まさにそうなりかねない状況です」と山田さんは話します。
また、TPP発効を前に次々と国内法が改定されています。主要農産物種子法(種子法)廃止をはじめ農業競争力強化支援法制定、水道法改定(民営化)、カルタヘナ法改定、市場法改定(事実上廃止)、漁業法改定などが決定しました。
強引に「種子法」を廃止
2017年2月10日、「主要農産物種子法」(種子法)廃止が閣議決定され、十分な論議を経ないまま衆・参議院を通過しました。「種子法」とは、主要農産物であるコメ、麦、大豆の伝統的な種子は国が管理し、各都道府県に原種・原原種の維持、優良品種の選定および奨励、審査を義務付けた法律です。政府は「種子法」廃止の目的として民間の活力を促すことを挙げていますが、「農業競争力強化支援法」が2018年8月に成立し、すでに、三井化学「みつひかり」、住友化学「つくばSD」、日本モンサント「とねのめぐみ」が公共品種の4~10倍の価格で販売されています。そして、「種子法」廃止によって農家は企業と契約してロイヤリティを支払い、指定された肥料や農薬などを購入することが義務付けられます。また、収穫物を自由に販売できなくなる怖れがあります。さらに、自家採種について一律化する法律が必要だと、3月3日に「種苗法改正案」が閣議決定されました。
世界の流れに大きく逆行
世界の流れはここ2~3年で大きく変わり、2018年8月、モンサント(バイエル社)の除草剤ラウンドアップが原因で悪性リンパ腫を発症したと訴えていた米国の末期がん男性・ジョンソンさんに対して、サンフランシスコ裁判所はモンサントに約330億円の支払いを命じました。ジョンソンさんは校庭整備の仕事に従事していてラウンドアップを繰り返し使っていました。このニュースは世界を駆け巡り、多くの国でラウンドアップの即時販売禁止、使用制限が相次ぎましたが、日本ではほとんど報道されていません。その後もグリホサートに関わる裁判が次々と起き、バイエル社は約4兆円の賠償金を免れないだろうと言われています。
米国では2016年から遺伝子組み換え農産物は頭打ち状態で、現在は年10%の割合で有機農産物の生産が伸びています。EUでは年7%の割合で有機農産物が増加。ロシアでは2014年から本格的に有機栽培に取り組み、2016年に法律で遺伝子組み換えの輸入も生産も禁止しました。中国でも2017年に遺伝子組み換え農産物の輸入も栽培も禁止し、有機農業が急速に成長を遂げています。韓国ではラウンドアップ使用を禁止、有機栽培農家は日本の20倍で小中高の学校給食が無償・有機栽培の食材に転換されています。
一方、2017年12月、日本政府はドイツやフランス、イタリアなどでは使用禁止もしくは3年以内に使用禁止となっているラウンドアップの主成分であるグリホサートの残留許容量を大幅緩和(最大400倍)しました。TPP協定では日本独自の遺伝子組み換え表示ができなくなります。これまで5%以下の混入については「遺伝子組み換えでない」という表示が認められていましたが、これからは0%でなければ表示できなくなります。また、牛肉、豚肉、鶏肉の飼料にわずかでも遺伝子組み換えのものが混入していれば、「エサにも遺伝子組み換えの飼料は使ってない」という表示ができなくなり消費者が選択しにくくなります。
「種子条例」制定を!
「種子法」が廃止されたことについて、「各都道府県で反撃が行われています。条例をつくればいいのです」と山田さんはそれぞれの取り組みを紹介しました。大阪、和歌山、奈良などはいち早く「種子法」廃止に従いましたが、各地で種子法に代わる種子条例が制定されています。新潟、兵庫、埼玉、山形、富山、北海道、福井、岐阜、宮崎、鳥取、長野、栃木、熊本、鹿児島、滋賀、島根、三重で「種子条例」成立。岩手、高知、広島、石川などは県議会で請願を採択し、条例制定を準備中です。その他の県でも市民団体や自治体職員などによる働きかけが行われています。2000年4月に施行された地方分権一括法によって、条例は罰則を定めることができるほど強い権限を持っています。「私たちには自治体に請願や意見を届ける権利があります。市町村議会や県議会に対して種子条例をつくってほしいと請願や意見書を出しましょう」と山田さんは各地で働きかけています。
さらに、自家採種について一律化する法律が必要だと、「種苗法」が改定されようとしています。この動きに対しても、国会議員を通して請願したり、地元選出議員に電話やメール、FAXを送るなど声を上げてほしいと山田さんは訴えました。
Table Vol.414(2020年4月)