昨年、コープ自然派事業連合総会でコープ自然派奈良前理事長・辰巳千嘉子さん、コープ自然派おおさか前理事長・松尾由美さんが副理事長に就任。組合員理事として事業運営に携わることで見えてきたもの、周囲からの期待、変化などについて聴きました。

情報公開は民主主義の要

「国産オーガニックプロジェクトin北海道」で司会を務めたコープ自然派事業連合・辰巳副理事長。

 辰巳さんがコープ自然派奈良の理事に就任したのは子育て真っ最中の2005年。コープ自然派が取り扱う商品の安全基準の高さが他と大きく異なることに興味を持ったことがきっかけでした。生協の運営に関わるようになり、生協の事業に組合員の声が活かされていることに驚いたそうです。「安全な食べものを毎日食べられる価格で、しかも、つくる人も環境も守りたいという組合員の願いは、経営的には厳しい面もあったはずです。でも、妥協することなく共同購入会の時代から40年以上も安全基準を保ってきたのは、組合員の力が活かされてきたからでしょう」と辰巳さんは話します。

 大切なのは商品の裏側を知ること。食をめぐる社会の仕組みや、主権のあり方も生協活動で学んだと言います。生協にとって大切なのは、組合員自身が決めるという姿勢です。コープ自然派では商品の全原材料や生産地をカタログに掲載し、使用農薬や放射能検査も情報公開していますが、「情報があるからこそ選ぶことができ、対等に意見を交わし合うことができます。情報公開されない今の政治は民主主義と言えるでしょうか」。

有機的な組織づくりへ

 2011年度から昨年まで連合商品委員長を務めましたが、心がけたのは、楽しく意見を出し合える環境づくり。組合員の「こんな商品があったらいいな」という意見から、たくさんのこだわり商品が生み出されていきました。副理事長としてコープ自然派事業連合の理事会はもちろん、役員会の一員として運営に関わるようになった辰巳さんは、役職や年齢に関係なく率直に発言でき、力が活かせる組織づくりを目ざします。「それぞれが自分でやるべきことを考えて、伸びたい芽が伸びていけるような有機的な組織が理想です。もちろんジェンダーバランスも大切ですね」と辰巳さんは話します。

心に届く伝え方を

 現在、辰巳さんは「生産者消費者協議会」の立ち上げや、ネオニコチノイド系農薬問題を担当し、国産オーガニックを拡げるために生協連合会アイチョイスなど友好生協と連携した活動を進めています。また、「プロモーション会議(カタログをつくるための会議)」に参加し、中期計画の策定やホームページ制作にも関わっています。カタログ編集では、組合員からの「商品は抜群にいいのだから、見せ方・伝え方をもっとおしゃれにしてほしい」という要望に応えようと、女性職員の感性を活かしたリニューアルが進んでいます。

 国産オーガニックは、いのちをつなぐ食べものづくり。選ぶ人が増えれば未来は変わります。しかし、その取り組みは多岐にわたり、どうわかりやすく伝えるかが課題です。心に届く伝え方やブランディングを考えていきたいと話します。

 女性の社会進出やIT化が進む今、生協の宅配事業も組合員活動のあり方も、これまでとは変わっていくことでしょう。「副理事長として、先輩たちが積み上げてきた安全な食べものを守る運動を次につなぎ、現在の組合員の想いを事業に活かす、つなぎ役だと思っています」と話す辰巳さん。組合員の視点で事業に関わり、事業と活動の連携を深めることが期待されています。

他団体と連携し活動拡大

「脱プラスチックの取り組みとして、たまごパックのモールド化推進など生産者と連携して実現していきたいです」とコープ自然派事業連合・松尾副理事長。

 松尾さんは、遺伝子組み換え(以下、GM)問題担当理事としてコープ自然派のNON-GMO商品の取り扱いや表示、啓蒙活動などを牽引し、ゲノム編集技術問題、種子法廃止や種苗法改正問題、グリホサート(除草剤ラウンドアップの主要成分)問題に関わってきました。「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(GM作物の作付け禁止や表示の徹底を求めて活動する団体)の一員として、世界の最新研究・情報をいち早く届け、他団体との連携を進める役割も担っています。映画「種子(たね)みんなのもの?それとも企業の所有物?」などの上映会や学習会の講師としてコープ自然派の各生協はもちろん、他の消費者・農業関係者団体からの依頼も多数。昨年開催のMoms Across America代表・ゼン・ハニーカットさん講演会「アメリカを変えたママに聞く食の未来」(兵庫県開催)は松尾さんを中心にすすめられ、約240名が参加しました。

 「副理事長に就任以来、コープ自然派の代表として他団体との会合や講師依頼など組織を超えた活動が増えました。外の世界に触れることでコープ自然派を俯瞰して見るようになり、多くの発見があったと感じます。国産オーガニックを進める上で不可欠なBLOF理論(Bio Logical Farming:生態系調和型農業理論) に否定的で種子法廃止を歓迎する生産農家との出会いなど、さまざまな考え方や意見があるのだと日々、新鮮な驚きがあります」と松尾さんは話します。

法改正では問題山積

 松尾さんは、「日本の種子(たね)を守る会」の呼びかけで開催された「全国種子条例の最新情報、種苗法改正等意見交換会」(全国から農家、研究者、議員、生協など約80名が参加)への出席など種苗法改正を止める運動に関わっています。また、山田正彦さん(元農水大臣)の呼びかけで実現した遺伝子組換え食品の問題に取り組む全国のこだわり生協による検討会議にも出席し意見交換しています。この会議は遺伝子組換え表示制度改正(2023年予定)に向け、生協で組織を超えた任意表示の統一を目ざす目的で開催されました。現在、遺伝子組換え作物が5%以下の混入なら「遺伝子組換えでない」と表示できますが、2023年以降、100%不検出の場合に限られ、より厳しく改正されます。非遺伝子組み換え(NON-GMO)作物を分別しても生産・流通の過程で混入の可能性があるため、「遺伝子組換えでない」表示が事実上できなくなり、結果的に消費者は非遺伝子組み換え(NON-GMO)の食品を選択できなくなります。

 「長年、コープ自然派おおさかの理事長を務め、組合員と職員で構成する会議を運営してきました。組合員活動は仕事のような強制力がないため、参加したいと思えるような会議や活動の進め方が求められます。会議では出席者全員が発言することが大事だと思っています。時間や資料を減らすことも、仕事や子育てで忙しい組合員にとって基本条件。理事会運営で培ったノウハウを事業連合の理事会や役員会などに反映し、少しずつ改善できれば」と松尾さん。

 4月からリニューアルした紙面づくりには、辰巳さん、松尾さんともにグループワークによるディスカッションに参加、コープ自然派事業連合の商品部職員とのさまざまな意見交換を行いました。

Table Vol.415(2020年5月)