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わくわくキッチン「50の手習い」うのまきこ

 料理もそうだけど、刺繍やDIYのような趣味の世界も、本屋さんには美しい解説本が山のように並び、ショップや通販ではお手軽で魅力的な初心者キットが手に入る。インターネットには親切な人が無料で公開するハウツー動画もいっぱい。窯がないとできない陶芸や、1人ではできないコーラスや球技以外なら、初めてチャレンジする趣味でも、家にいながら1人でソコソコ楽しめる世の中だ。お稽古ごとに通う人が減るはずだよね。決められた日に通うのは大変だし、先生との相性は未知数。教室の進め方が自分のペース(というか実力?)に合うかどうかもわからない。

 以前、カルチャーセンターで手芸を習っていた時、新開設のクラスで生徒はまさかの私1人。先生はとても親切で、ズバ抜けて不器用な上に初心者過ぎて針に糸を通すのも難航するような私に呆れながらも、手取り足取り指導してくださった。知らなかったことを学び、できなかったことができるようになるのがうれしくて、月1回の教室がワクワク待ち遠しい。が、数ヵ月のうちに生徒が増え、しかも手練れの人が多かったため宿題も私ではこなせない量になり、無念にも落ちこぼれて退会した。先生は自分のペースでいいと言ってくださったが、周りの方とのスキルの差が開き過ぎで、明らかに迷惑をかけている自分に耐えられなかったのだ。幸い基礎技術や大切なコツはきちんと教わったから、今も家で自由にチクチク手作業を楽しめるし、本や動画ではわからない糸のひき加減などの微妙なポイントは、やっぱり習いに行ってよかったな~と思っています。

 そんな訳で、長らく挑戦してみたいと思い続けた「金継ぎ」の教室は珍しく慎重に探しまわった。金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を、漆で繕い金で美しく仕上げる日本の伝統の手法。食器が大好きなのにソコツな性格から破損して凹むことが多い私としては、いつかやりたいことリストの上位だったのだ。選ぶ基準は、合成の接着材ではなく、本漆と金を使う方法を学べて、私でもついていける・通える教室。やっと見つけてまずは体験教室に行ったのが去年の秋。もう1つの心配事、漆にカブレないかを試す必要もあった。初めての金継ぎは難しいけど心静かに丁寧な作業を繰り返すのが心地よく、仕上げに撒いた金がピカリと光ると何とも言えぬ充足感。カブレもどうやら大丈夫!かくして私の50の手習い、無事に1年続きました。割れた器をたっぷりの手間と時間をかけて再生させ、修理跡を隠すのではなく、新しくきれいな景色として見せる金継ぎは、日本らしい素敵な文化。若い頃より覚えは悪いけど、気長に上達できればいいなと思います。

うのまきこ|UNO Makiko
料理研究家。食品メーカーで新製品開発等に従事したのち、料理研究家・古川年巳氏に師事。わかりやすいレシピと、野菜をたっぷり使ったヘルシーで簡単な料理に定評がある。アトピーっ子のための簡単な除去食メニューも得意。コープ自然派奈良元理事長。

Table Vol.380(2018年12月)

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