産直有機米を原料に、昔ながらの製法「静置発酵」にこだわり醸造するのは、福岡県大川市にある「庄分酢」。1711年創業の歴史のある醸造元です。
創業時から受け継ぐ製法は、まず蒸した生協の産直有機米と、産直有機米でつくった米糀でお酒を仕込みます。糀菌の働きで米を糖化させ、約1か月かけてできあがったお酒に、酢酸菌と少量の有機純米酢(種酢)を加えて静置発酵させます。この時に用いる酢酸菌は、庄分酢の蔵で300余年引き継いできた「蔵付き菌」。お酒もお酢も同じ醗酵槽で醸すことも庄分酢の特徴です。二段階の発酵を終えできたお酢は、蔵の中で約1〜2か月熟成させ、ろ過工程を経て完成します。
市販のお酢の多くは、材料を機械で撹拌して発酵を早める「速醸法」でつくるので、数時間から1日程で完成しますが、「静置発酵」は約2〜3か月かかります。仕込み液の表面を覆う酢酸菌膜の発酵熱から生まれる対流でゆっくりと発酵が進むので、酸味がやさしくまろやか。老舗の醸造元の「蔵付き菌」が酢を育てます。
Table Vol.505(2024年9月)