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くらしと社会

いのちの重さ伝えて

6月13日(水)、コープ自然派しこくオリーブセンターは助産師・山本文子さんの講演会を開催。
山本さんは思春期の子どもたちや子育て世代を中心に、いのちや性の大切さを伝える講演活動を全国で行っています。

「お母さんたちは子育てでクタクタ。かわいい、大切という気持ちと同時に、この子から解放されたいと思う自分を責めてはいけません」と助産師・山本文子さん

子どもたちは親が大好き

 山本さんは高知県出身。父親を早くに亡くし家族で支え合った幼少期から、助産師を目ざしたきっかけなどを生き生きと話します。北海道大学医学部付属助産学校で助産師の資格を取得、東京、高知、茨城を経て香川のNTT高松病院に24年間勤務しました。仕事を通して10代で妊娠、出産、人工中絶、性感染症に悩む多数の少女たちと出会い、山本さんは心を傷めていました。そのようななか、高校教師からの依頼で山本さんの講演会活動が始まります。

 両親のケンカや離婚などを見て育ち、思春期になり「なんで私を生んだ?」と反抗する子どもたちが多数います。そんな子どもたちのために山本さんは、「私は3000人以上の赤ちゃんを取り上げてきましたが、出産後、『生まれてくれてありがとう』と両親は必ず泣きます。あなたたちは望まれて生まれてきた子どもたちなのです」と伝えてきました。「両親に感謝します」と子どもたちからたくさんの感想が寄せられ、講演によって子どもたちが変わると教師や保護者たちからも喜ばれ、山本さんの講演会は評判になります。

 そんなある日、「僕は生まれた時から両親に虐待されてきました。こんな親でも感謝しないといけませんか」と中学2年生の男子生徒から感想をもらいます。それは刑事事件を起こした子どもたちのための施設で行った講演会で、親から虐待を受けた子どもたちが多数いました。山本さんは親を尊敬するよう言われて育った世代、「その考えに凝り固まり、子どもたちを苦しめることになった」と後悔しました。その後、施設を再訪する機会を得た山本さんは、「あなたたちに嫌な思いをさせた親なら、あなたたちはそんな親になるな。親を追い越せ、親以上の人間になれ、時には親を自分から捨てろ」と伝え、その生徒から「山本さんの話を聞いて心が軽くなりました。でもこんな親でも僕の親、僕は両親が大好きです」と感想が届いたということです。「どんな親でも子どもは大好きです。それがわかっていれば、子育てがどんなに大変でも乗り切れます」と山本さんは話します。

知らないことは怖いこと

 「あなたたちが生まれたのは、お父さんとお母さんの性行為があったから、大好きな人を抱きしめたい、大好きな人に抱きしめられたいと思ったからです」と山本さんは性の大切さを伝えています。1996年、病院に勤めながら講演活動する山本さんの様子をテレビ局がドキュメンタリー番組として放送し、大きな反響がありました。全国から講演や取材依頼が舞い込み、たくさんの手紙が送られてきました。

 一方で、いたずら電話や手紙などバッシングにさらされ、「女が大きな口を開けてセックスと言うな」などと誹謗中傷を受けます。性の話をいやらしいと子どもたちから遠ざけようとする風潮は根強く、最近では性行為を気持ち悪い、一生したくないと考える子どもたちが増えているということです。また、学校側からは山本さんの話は過激だと言われ、特にコンドームの話はタブーとされます。しかし、「校長先生からコンドームの話をしないよう言われましたが、避妊と性感染症予防のためにもコンドームは大切です。二度と講演依頼はないでしょう。でも、あなたたちが後悔することがないよう話します」と山本さんは伝えてきたということです。山本さんには「知らないことは怖いこと」という言葉を残して亡くなった友人がいました。友人はアスベストが原因で中皮腫を患い、友人の作業服を洗濯していた妻も同じ病気で亡くなっていました。会社からマスクや防護服の着用など予防方法についての注意を受けることなく作業を行っていたことを友人は悔やんでいたということです。

 2006年、山本さんは助産師仲間と夫の3人で「NPOいのちの応援舎」を設立。出産・子育て支援・高齢者支援を3本柱とする複合施設で、2017年度「子どもと家族・若者応援団表彰」で内閣総理大臣賞受賞、世代間交流と山本さんの講演活動が高く評価されました。

講演会は香川県高松市を中心に活動する東エリア主催で開催されました。担当はコープ自然派しこくオリーブセンター・エリアコーディネーターの木下喜
美子さん(左)と羽賀恭子さん(右)
当日は親子参加型の講演スタイルで、子どもたちが駆け回る中、にぎやかに開催されました。

Table Vol.377(2018年10月)

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