活動のきっかけや方法などについて具体的に提示するゼン・ハニーカットさんのお話はとても説得力があります。

子どもを守ろうと立ち上がり、アメリカの食を取り巻く環境を大きく変えたゼン・ハニーカットさんの全国ツアーが実現、2019年12月11日(水)には尼崎市にて講演会が行われました(コープ自然派事業連合、日本の種子を守る会、デトックス・プロジェクト・ジャパン共催)。

食を変えようと行動開始

 ゼン・ハニーカットさんは3人の男の子の母親。子どもたちの深刻な食物アレルギーや自閉症などの症状から食べものに疑問を持ち始めます。そして、遺伝子組み換え(以下GM)食品が出回っていて腸内環境を壊すことを知りました。GM食品であることが表示されていなかったので知らないまま子どもたちに与えていたのです。「政府は食の安全を守ってくれない、家族の食を守るのは私だ」と気づいたゼンさんは食卓からGM食品を排除し、オーガニック100%の食事に切り替えました。すると、子どもたちの症状は改善していきました。

 その後、ゼンさんは息子たちだけが健康であれば良いのか、将来の家族はどうなるのかなどと考えます。そして、2013年、同じような問題意識を持つ母親たちとマムズ・アクロス・アメリカを設立。「怒ったり、悲しんだりするだけでは世の中を変えることはできません。誰かが変えてくれるのを待ってもいられません。自分が多くの人たちとつながって世界を変えなければならない」とゼンさんは話します。

市場に出回るGM食品

 ゼンさんがGMについて学び始めたのは2012年で、1995年からGM食品を食べていました。「FDA(米国食品医薬品局)はGM食品について表示義務はないと決定しているので、多くの米国人は知らずに食べています。また、多くの日本人は家族に食べさせている肉はGM作物の飼料で育った家畜の肉だと知りません。家庭やレストランで使われている油がGM作物でつくられていることも知りません」とゼンさん。米国国務省はGMが規制対象とされるべきかどうかはGM食品をつくっている企業が決めて良いという法律を提案しました。

 今、市場に出回っているほとんどのGM作物はグリホサート(モンサント社が開発した除草剤ラウンドアップの主成分)に耐性をもつよう遺伝子操作されています。グリホサートは腸内の良いバクテリアを殺して悪いバクテリアが繁殖するのを助けます。さらに、身体にミネラルやビタミンなどが取り込まれるのを妨害し、生殖への影響も指摘されています。

 そして今、新しい遺伝子操作としてゲノム編集が始まっています。ゲノム編集は特定の遺伝子を切り取るだけなので安全だと言われていますが、1つの遺伝子を操作することで体全体が影響を受け、予期しない結果が起きることがあります。

グリホサートの悪影響

 2013年、ゼンさんたちはアメリカで初めてグリホサート残留検査プロジェクトを立ち上げました。ゼンさんが暮らす地域の水道水も検査し、2番目の息子の尿からはヨーロッパの基準値の8倍ものグリホサートが検出されました。8歳だった息子は激しい自閉症の症状を示していて、ドクターの話では、腸内に悪いバクテリアが入り込むと脳がやっつけようと命令を出し、その過程で脳内の神経が侵されて自閉症の症状を引き起こすということでした。他の2人の息子たちの尿からはそのような結果が出なかったのは、彼らは小麦アレルギーなので小麦を除去していたからで、小麦こそポストハーベスト(収穫後の農薬散布)でグリホサートが大量に使用されているのです。そこで、6週間は小麦なし・オーガニック100%の食生活に変えると尿中のグリホサートはゼロになり、腸内環境は劇的に改善されました。同時に自閉症の症状はなくなり、今は健康的な日々を過ごしています。

 さらに、母乳の検査をしたところ、食事からGM作物やグリホサートを積極的に排除しているにも関わらず、10名中3名からグリホサートが検出されました。ワイン、パン、シリアル、ポテトチップス、たまご、ベビーフード、袋菓子、粉ミルクなどのほか、予防接種ワクチンからもグリホサートは検出されました。予防接種ワクチンにはGM作物を飼料とする豚からつくられたゼラチンが使われています。グリホサートは脳内の血液関門を破壊し、ワクチンに含まれているアルミニウムのような物質を直接脳の中に入れてしまいます。最近の新しい研究では、自閉症とアルツハイマーを発症している人の脳には高い割合でアルミニウムの残留が検出されました。また、グリホサートは乳がんを発症させたり、肝臓病の引き金になることもわかりました。GM飼料を与えられた家畜は胆のう、腎臓、膀胱が損傷を受け、心臓その他の臓器の機能低下も見られ、アメリカで肝臓病が増えているのはトウモロコシと大豆へのグリホサート使用量が増えているからだと指摘されています。

どんな行動ができるか

 では、どのようにすればGM食品やグリホサートを避けられるのか、ゼンさんは以下のような行動を提起しました。まず、食べものの原材料を確認し、家畜にもGM作物を与えていないものを購入する活動から始めましょう。次に、レストランや学校、病院、食料品店に対してNON-GM食品や有機農産物を取り扱うよう要求しましょう。そして、パレードに参加したり、全国レベルのイベントを開催することは効果的です。また、地方議員にコンタクトをとって学校給食にオーガニック食材を導入することを要求し、次の選挙へのプレッシャーをかけましょう。台湾では選挙へのプレッシャーをかける活動で、100人の市長がGM油を学校給食に導入しないことを約束しました。イギリスでは、GMジャガイモを与えられたラットに悪性腫瘍ができたという研究結果を受けてグリンピースの活動家たちが倉庫前に2週間座り込み、GM食材の搬出を阻止しました。そして、自分の食べものの一部でも自分でつくること、これは食の安全を守る究極の活動です。

 南カルフォルニアではゼンさんたちの活動によって、すべての食材をオーガニックで調達できるようになりましたが、原材料は輸入されています。ビーガンやベジタリアンは大豆をよく食べます。しかし、オーガニック大豆の80%はトルコで生産されています。アメリカで栽培されている大豆の80%はGMで家畜の飼料や油の原材料でもGM作物が使われ、輸出先の大半はアジアです。また、NON-GM食品でも有害な化学物質を含むことがあり、とくに小麦にはグリホサートが乾燥剤として散布されています。「どの国もオーガニック農産物を生産し、地域の食の安全を確保する必要があります」とゼンさんは話します。

消費者の圧力は効果的

 マムズ・アクロス・アメリカは看板やポスターを制作し、パレードに参加してきました、また、映画会や講演会、みんなで遊ぼう会、パレードなどを企画し、映画やドキュメンタリーシリーズ、ラジオ特番などでも取り上げられました。メディアに取り上げられることはとても重要で、PRのプロやメディアに効果的にアプロ―チできる専門家が必要です。マムズ・アクロス・アメリカは1年間に87回、異なるメディアに取り上げられました。結果、生産者はグリホサートの散布をやめようとしています。

 イタリアとカナダの事例を取り上げると、イタリア料理には小麦が多く使用され、小麦はカナダから大量に輸入しています。カナダでは小麦にグリホサートを大量散布していて、イタリアの人たちがグリホサートを使うのなら買わないと圧力をかけました。すると、カナダのグリホサート使用量は激減しました。「日本の方たちもアメリカに圧力をかけてください。消費者がGMやグリホサートを使った食べものを買いたくないと訴えれば、アメリカの農業を変えることができます」とゼンさん。そして、「私たちの動きが急激に大きくなったのは、私たちの最大の関心事が家族の幸せだということで政府は耳を傾けました。また、私たちが始めたキャンペーンはわかりやすく、誰でも参加しやすいからです」と話します。

 母の日の1週間後にEPA(米国環境保護庁)に電話をかけようというキャンペーンも行いました。粉ミルクからグリホサートが検出されたということで1万人のママたちが電話をかけ、EPAと3回のミーティングを開くことができました。その結果、EPAは粉ミルクの検査をすることに同意しました。

一人ひとりの行動が大切

 マムズ・アクロス・アメリカでは新しい基準をつくりました。ゴールドスタンダードは3つの基準があります。3つ星レベルでは合成添加物不使用、グリホサート不検出、4つ星は、NON-GM、無農薬、健康的に家畜が飼育されているかという基準、5つ星レベルはフェアトレード、環境に優しい包装、プラスチック減量、有機農業サポートなどです。「私たちの要求は大きいですが、それは子どもたちの未来がかかっているからです。私たちは日本のみなさんと活動できることを誇らしく思っています。日本の消費者団体は健康的な食べものを届けようと熱心に活動しています。あなたが何を食べるかで世界中の人たちの暮らしに変化をもたらすことができるのです」とゼンさん。2019年12月2日、日本で食の安全を考える議員連盟がつくられ、その結成式にゼンさんは立ち合うことができました。「議員連盟の数はまだ少ないですが、地方議員にも声をかけましょう。でも、議員の動きを待つのではなく、自身で行動してください。気候変動によって2050年までには日本とアメリカの沿岸部で2900万戸が沈んでしまうとい言われていますが、再生可能な農業は気候変動と密接に関係しています。一人ひとりができることをして、世界を変えていきましょう」とゼンさんは呼びかけました。

「粉ミルクにはGM作物が使われています。オーガニックの粉ミルクをつくってほしいとメーカーに電話しませんか」と山田正彦さん(元農水大臣)が呼びかけました。

Table Vol.409(2020年2月)