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食と農と環境

オーガニックとは、「すべてのいのちが幸せになる仕組み」

2025年7月11日、コープ自然派京都(理事会)ではドイツ在住のオーガニック専門家レムケなつこさんによる講演会「みんなでつくる!どうやってつくる?“オーガニックがあたりまえ”な社会」を開催しました。

レムケなつこさん

オーガニックに目覚めたきっかけ

 レムケなつこさんは、日本の10年先をいくというドイツでオーガニックを研究してきました。現在は、日本でオーガニックを広めるために2拠点を行き来する毎日です。
 なつこさんがオーガニックに目覚めたのは、青年海外協力隊としてボリビアへ赴き、生産者支援に関わったことがきっかけでした。
 ボリビアは南米で最も貧困率が高く、貧富の差も大きい国です。国内の豊かな地域は出稼ぎ労働者によって支えられ、企業はアンデス山脈出身者など貧しい人たちを騙して町へ連れてきて働かせていたそうです。当時、彼らは不衛生なテントで暮らし、感染症で亡くなる人も多かったといいます。十分な賃金が支払われないため貯蓄もできず、労働期間が終わっても故郷に帰ることができません。路上生活者となり、再び季節になるとテント暮らしで働くという悪循環に陥っていました。さらに、このような不遇の暮らしから逃げ出せないように、企業からドラッグやアルコールが無制限に支給されていたそうです。中毒になり働けなくなると、代わりに子どもを仕事に行かせます。子どもたちは学校に行けないどころか、親から育児放棄されて亡くなることもありました。

参加者とコミュニケーションをとりながら話すレムケなつこさん

私たち日本人の食卓の背景

 出稼ぎ労働者たちは、サトウキビから原料糖をつくる仕事をしていました。その原料糖からつくられた砂糖を、私たち日本人は使っています。普段当たり前のように使っている砂糖の背景にこのような現実があり、その上に私たちの食卓が成り立っているのです。
 「ボリビアで人助けをしていると思っていた自分は、日本に帰れば砂糖を使う加害者になっていたのです」と話すなつこさん。毎日の食事が誰かの苦しみの元に生産されることのない方法を考え、行き着いたのが“オーガニック”でした。そして、「オーガニックには救える命がある、不条理な社会を変えたいという一心で、オーガニックの先進国であるドイツの大学で学ぶことを決意しました」となつこさんは話します。

オーガニックとは?

 オーガニックには4つの定義があります。①土、水、動植物、地球、そして人の健康は個々別々に考えてはならないという「健康のルール」、②農業の営みは自然に逆らうのではなく、地域の生態系や自然に備わった力を活用するという「生態系のルール」、③地球環境や生きとし生けるものすべてが平等に尊重され、自然体である状態を保つ「公正のルール」、④予防原則に基づき他の健康や幸福を脅かさない「配慮のルール」。
 「このように定義はありますが、オーガニックとは何かという正解はないと考えています」となつこさんは言います。

大切な人や物を守るために

 日本では、オーガニックは主に食品のことを意味しますが、より広い視野を持って正解を決めずにさまざまな意見を交わすほうが、より豊かになるといいます。
 「オーガニックとは『すべてのいのちが幸せになる仕組み』です。オーガニックは個人だけでなく、社会をも変える力があります。大切な人や物を守るために、みんなでオーガニックを広めていきましょう」と話すなつこさんの言葉に、会場から大きな拍手が起こりました。

レムケなつこさん(左)と筆口理事長(右)

Table Vol.520(2025年12月)

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