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食と農と環境

地産地〝食〟率日本一の給食に! ―フードハブプロジェクトが描く未来―

2025年4月18日、給食連絡会は、フードハブプロジェクトの白桃薫さんを招き、地産地消のまちづくりと学校給食の取り組みについて聞きました。

フードハブプロジェクトの白桃さん

フードハブプロジェクトとは

 全国の中山間地域と同様に、徳島県神山町でも人口減少と高齢化が進んでいます。神山町の農家の平均年齢は71歳。地域で離農者が出ると耕作放棄地が増え、それにともなってイノシシやシカの獣害が多くなり、さらに農業を続けるのが難しい状態に陥ります。白桃さんは、こういった状況を解決し、農業の担い手を育て、神山町の農業と食文化を次世代につなぐ活動を行っています。それがフードハブプロジェクトです。

農業の可能性を求めて

 神山町出身の白桃さんは、神山町役場で農業と林業関係の仕事についていました。2015年、地方創生の戦略を考えるワーキンググループが行われ、白桃さんも行政や民間、移住者と一緒に参加しました。地域の課題を考える過程で生まれたフードハブ構想が、日ごろから抱いていた農業への危機感を払拭する可能性を感じ、翌年、フードハブプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトをより良いものにしたいと、オーガニック先進国のアメリカでオーガニックの母と呼ばれるアリス・ウオータースを訪ねて学びを深めました。

「地産地食」の取り組み

 課題は、地域で農業を続けていこうとする人を支えるためには、そこでできた農産物を食べ続けていく必要があるということです。そこで、「地産地食」を合言葉に「地域で食べ支える」仕組みづくりを行っています。
 その取り組みのひとつに学校給食があります。2023年4月から神山まるごと高専(私学)の寮の食堂運営を行っています。この学校は1学年40~45名、全校で約200名の全寮制で、食堂では平日に3食を提供しています。食堂経営には6つの基本理念があり、そのひとつが神山町や徳島県内の食材を使うというものです。

食材優先で考える給食メニュー

 寮で使う食材は、地域の生産物最優先で選び、第一に神山町産の有機栽培のもの、次に神山町産の慣行栽培のものを選びます。さらに、地産地食率(産直率)を算出して、毎日の平均を現在の76.3%から80%に、1月の給食週間には98.2%から100%に増やし、日本一になることを目指しています。

 そのためには原料の調達が重要です。一般的な給食ではメニューを先に決めますが、この食堂では手に入る食材からメニューを考えます。天候不良などで予定していた食材が手に入らない場合は、レシピを再考します。そのためにも現場の管理栄養士、調理人のスキルアップの機会を設けつつ、「農産物に寄り添った給食であることが大切なんです」と白桃さんは話します。また、給食の提供後には産直率を計算し、地元のものをどのくらい使ったかを確認し、町外から調達した場合は、町内で有機栽培できないかを生産者と話し合います。こうして農家と一緒に給食を組み立てていく中で、農家自身が慣行農業から有機農業へ変わろうと思ってもらえることを大切にしています。

農家を巻き込み行政を動かす

 地産地食の給食は、地域の農家と繋がることができます。そして農家が食に向き合うことで、食の安全が向上します。白桃さんは「全国各地でオーガニック給食を求める動きがありますが、オーガニックだけでなく、地産地消についても重視して農家を巻き込むことで、給食の方向性を左右する首長の考えや行政を動かす可能性が増えると思います。自分たちが良いと思う給食の在り方を社会に投げかけて、持続可能な農業を広げてほしいです」と話しました。

司会は給食委員会委員長の泉川さん

Table Vol.515(2025年7月)

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