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食と農と環境

「菌ちゃん」が土も野菜もヒトも元気に!

2022年11月17日(木)コープ自然派おおさか総代交流会では、「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さんを講師に講演会「菌ちゃん先生に聞いてみよう!!~元気人間の作り方」を開催、野菜づくりを通してわかった「菌ちゃん」(微生物)の力と人間の健康について聴きました。

NPO法人大地といのちの会理事長、農業法人株式会社菌ちゃんふぁーむ代表取締役の吉田俊道さん。ユーモアたっぷりのお話に会場は終始笑いに包まれました。

腐敗と発酵と虫の関係

 吉田さんは長崎県職員を退職した後、有機農業の世界に新規参入しました。しかし、当初は農薬を使わない野菜は虫食いだらけになり、退職金が底をつくほど虫との格闘の日々でした。そして、ついに虫が来ないコツを見つけ、今では計3haの畑で農薬はまったく使っていません。

 土の中に生ごみや堆肥などの有機物を入れると、腐敗か発酵かのどちらかを経て分解されます。自然界は基本的に腐敗するしくみになっています。腐敗の匂いがする畑やヘドロ臭のする田んぼは根が弱り、野菜も米も元気がなく、分解者である虫が食べに来ます。

 一方、うまく発酵させた土は、ビタミンなどの抗酸化成分や食物繊維を豊富に蓄えた野菜や米を育てます。そして、そのような野菜ほど胃や腸などの消化システムをもたない虫にとっては食べにくくなるのです。堆肥を入れるとき、20㎝下まで混ぜると土は腐ってしまいますが、浅く混ぜた吉田さんの畑の土はフカフカ。そんなフカフカの土で育った栄養豊富でおいしい野菜に病害虫はほとんど発生しません。そして、農薬は不要となります。

理にかなった菌との共存

 旬ではない野菜がふんだんに売られていることは大きな問題です。例えば、冬が旬のキャベツはたくさんの外葉でくるまれることで寒さから守られて育ちます。しかし、夏にキャベツをつくるのは大変なのでたくさんの農薬を使わなければなりません。

 吉田さんの畑では特大のチンゲンサイが育ちます。苗を離して植え、チンゲンサイの外葉が黄色くならないのは酸化していないからで、土の中が発酵菌で満たされ、良い微生物がたくさんいる証拠です。土は無農薬に切り替えてもすぐには良くならず、時間をかけて良くしていきます。きゅうりが病気になったからといって、消毒し土の中を無菌状態にしても育ったきゅうりは元気ではなく、その後も何年か消毒を繰り返すと、急に病気が多発してしまいます。人間も同じで、徹底的に殺菌消毒し無菌状態を続けていると免疫力が落ちていきます。

生命力を高めるために

 畑の野菜は、窒素・リン酸・カリなどの肥料3要素のほかに、カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛・銅・その他の微量元素がなければ元気に育たないことに吉田さんは気付きました。人間は1秒間におよそ500万個もの細胞が交換されるため、ミネラルを摂ることが必要です。小学生330人の給食にミネラル分豊富なイリコと、栄養価が高いとされる野菜の皮や芯を可能な限り使うようにすると低体温の子どもが減り、基礎体温が36.5度以上の元気な子どもが増えたということです。「最近の小学生は体温を上げるための栄養分が十分に摂れていないので、イリコなど頭ごと食べられる小魚(ただし酸化防止剤不使用のもの)や有機野菜、みそ汁を毎日食べさせてください。畑の土が発酵して根が栄養を十分に吸収できるようになるのと同じように、人間も食べものを変え、腸内環境を整えることで健康になります」と吉田さんは話します。


 よく噛んで唾をたくさん出すことで口の中をきれいにし、病気を防ぎ、免疫力を上げます。しかし、現代人はごはんを口に入れながらみそ汁を飲み、パンを食べながら牛乳を飲んで、唾を使わなくて済む状況にしています。サザエさんやちびまる子ちゃんの食事風景に飲み物はなく、食事が終わってからお茶を淹れていました。「昔はそれが当たり前だったのです。菌ちゃん(微生物)だらけの土が野菜の生命力をつくるように、みなさんの腸内細菌を充実させることで、免疫力が高く代謝や血流の良い体をつくってください」と吉田さんは話しました。

司会・進行はコープ自然派おおさか・清水常任理事が務めました。

Vol.480(2023年1月)より
一部修正

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