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食と農と環境

GMOフリーゾーン運動 全国交流集会inえひめ(前編)

2025年3月1〜2日、全国のGMOフリーをめざす人たちがゲノム編集を積極的に推進している愛媛県に集まり「第19回GMOフリーゾーン運動全国交流集会inえひめ」を開催。食べものと環境を考える2日間にわたるプログラムがコープ自然派主催で行われました。前編では1日目の様子をお届けします。

GMOフリーゾーンをめざして全国から

 GMOフリーゾーンとは、GMO(遺伝子組み換え作物)フリー(存在しない)ゾーン、つまり、「遺伝子組み換え作物を栽培していない地域」という意味です。このGMOフリーゾーンを広げる活動をしている全国の団体が年に一度集まり、それぞれの活動の報告や交流を行いました。

「美味しい革命家」アリス・ウォータース

 開会前のプレイベントとして、ドキュメンタリー映画「WE ARE WHAT WE EAT 食べることは生きること」が上映されました。この映画は、アメリカの 地域の農家と食べる人をつなぐレストランや食育菜園の創始者であるアリス・ウォータースが来日し、各地で体験した様子を描いたドキュメンタリーです。アリスが体験した学校給食や生産者との交流は日本の「美しさ」を際立たせ、そこに描かれた食を通して問題解決する姿はGMOフリーゾーンが目指すものと同じです。

みんなでミーティング

 「食べ物のことを考える・えひめサミット」と題するパネルディスカッションでは、生産者、消費者、市議会議員がそれぞれの立場からの意見を交換しました。
 愛媛でみかんなどを栽培する無茶々園の大津清次さんは、みかんの価格は安く、来年も生産することが難しい状況ですが、「だからといってゲノム編集のみかんというのは良くないです」と話します。そして、「ゲノム編集について知らない生産者も多いので、情報は生協から学んでいます。つくり手と消費者が信頼関係を持って情報を開示している今の関係を続けていきたい」と話しました。

未来の子どもへできること

 今治市議である内山さんは、今治市で21年前につくられた『食と農のまちづくり条例』について話しました。この条例には「今治市では遺伝子組み換え食品を栽培しない」ことを定めています。しかし、ゲノム編集についての条項はまだ入っていません。内山さんは、「条例は有権者の50分の1以上の署名を集めることでつくることができます。そういった市民の声があると議員や役所の職員も動きやすいですし、あわせて学校給食に使う有機野菜の栽培を増やすなど、未来の子どもたちに何ができるのかを考えていきましょう」と呼びかけました。

「顔を合わせる」大切さ

 「西条森の幼稚園おむすび」の皆尾さんは、若い世代は妊娠出産を機に食べものを意識する人が多いことや、コープ自然派では商品情報の開示があり選べますが、スーパーでは表示を見てもわからず選ぶことができないことを訴えます。そして、「問題は食べものだけでなく、そこから社会全体に及ぶことだと感じますが、今は孤立しがちなうえに、ネットを見てもその情報が真実なのかわかりません」と。森のようちえんなど安心できるコミュニティでは顔を合わせて直接話し、無農薬の畑に入り、味噌づくりなども行っています。「楽しみながら正しい情報に触れることが必要で、幼稚園も社会運動だと思っています」と話しました。

自然との共生

 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンの天笠さんは「遺伝子組み換え食品に対する消費者の反応は大きかったのですが、ゲノム編集は消費者の6.1%しか知らない状況です」と話します。これはゲノム編集の表示がないためで、これでは消費者は選択のしようがありません。ゲノム編集の品種改良は遺伝子を壊す技術で「ある目的で操作しても、その副作用で予想しない影響が出ることも考えるべきです」と天笠さん。また、水耕栽培など人工的な生産方法は経費がかかるため、生産効率を上げるためにゲノム編集に頼ってしまうとのこと。「食べ物には自然が必要、人工的な環境ではなく自然とともにどうやって食べるものを得ていくかを考える必要があります」と話しました。
 コーディネーターを務めたコープ自然派しこく理事の野島さんは「食べものは老若男女誰にとっても欠かすことのできないもの。食べるものを真ん中に据えて、難しく考えずに自分にできることを何かやってみることが大切です」と締めくくりました。

日本と世界からの報告

 この一年の日本各地のフリーゾーン登録では、農地や森林での増加が報告されました。台湾では学校給食に豆乳を取り入れたことで減少していた大豆の国内生産量が増えたことや、韓国で多くの若者が楽しみながらGMO反対デモに参加した様子が報告され、欧州からはGMO規制緩和の議論に対してGMOフリーを守ることや、農業全体のシステムの変革を目指していると報告がありました。(後編につづく)

実行委員長の野島さん(手前)とコープ自然派しこく理事長の泉川さん(右)、専務理事の川合さん(後左)

Table Vol.513(2025年5月)

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