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くらしと社会

【寄稿】あの時、「もう原発はなくなるんだ!」と思ったけれど…=坂本眞有美(コープ自然派事業連合副理事長) 

今月の「ちょっと教えて」は、コープ自然派事業連合副理事長の坂本眞有美さんに寄稿していただき、原発訴訟について教えていただきました。

※イメージ

原発訴訟ってご存じですか?

 東京電力福島第一原発事故から14年。放射能被ばくから逃れるために関西に避難された方々が2013年に国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟(関西訴訟)は今も係争中です。2023年5月から毎回数名の原告本人尋問が行われており、原告団、支援グループが傍聴参加を呼びかけています。コープ自然派脱原発ネットワークでは傍聴することで「原発」の問題の本質に向き合いました。

 原告は、宣誓をした後、一片のメモも持つことは許されず自分の記憶だけを頼りに、国や東京電力の代理人弁護士による尋問に答えなければなりません。その重圧はいかばかりでしょうか。あまりにも日常生活からかけ離れた法廷に立ち、たった一人で臨む姿に、傍聴席から応援するはずが逆に力をいただくことになります。

司法への期待

 全国で数多く提訴されてきた事故被害に対する賠償裁判の他に、子どもたちのいのちを守り、被ばくしない権利を求める「子供脱被ばく裁判」、原発労働者1名による「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」、複数の「原発事故避難者追い出し訴訟」、事故当時6歳~16歳だった子どもたち7人が2022年に提訴した「311子ども甲状腺がん裁判」などで、当事者が多大な時間や労力を使って「それまでの暮らしや健康、将来の夢が奪われたのはなぜなのか?」を問うています。

なぜ、原発はやめられないのか?

 さて、12月に経済産業省が出したエネルギー基本計画案では、事故以降のエネルギー基本計画に書かれていた文言「可能な限り原発依存度を低減する」を削除し、原発の建て替えも盛り込むなど原発の最大限活用が書かれています。折しも、核廃絶を訴える被団協のノーベル平和賞受賞ニュースがマスコミ各紙で大きく取り上げられたすぐ後でした。石破首相が、被団協の長年の努力に敬意を表し、祝意を述べたというニュースには違和感を覚えました。核兵器の材料プルトニウムをつくる工程の平和利用として始まった原子力発電の最大活用と核廃絶を、ともに実現できるというのでしょうか。その矛盾を見過ごすことはできません。

原発をなくそう

 また、メルトダウンを起こした福島第一原発1~3号機の中には、溶け落ちた核燃料「燃料デブリ」がほとんど手つかずのままで、取り出しの見込みは立っていません。燃料デブリの冷却水は放射能汚染水となり、ALPS処理しても除去できない放射性物質を含む汚染水は、2023年から30年程度の予定で海洋放出され続けています。

 しかし、復興庁は、道路や鉄道が復旧し新しい施設建設や環境整備が進んだことを強調、環境中に拡散した放射性物質の詳細や避難の権利を求める原発事故被害者の実情を伝えません。ならば、裁判から知ろう!原告の訴えを聞こう!

 歴史を長尺で眺めると、「いつから、どうして」現在〝電気〟がエネルギーのすべてのように語られるようになったのかを知ることができます。それは原発問題を考える大きな助けになります。

 「核の平和利用」「優れた安定供給性を持つ電源」そんな言葉にごまかされず、一人ひとりの安心して暮らす権利を守るには、原発は不要だと訴えたい。

Table Vol.511(2025年3月)

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