ICEBA(アイセバ/生物の多様性を育む農業国際会議)は、生物多様性を基盤とした地域循環型農業技術の確立と、国内外への普及を目指す国際会議です。2025年7月12日・13日には、7回目となるICEBA7が徳島県小松島市で開催されました。
7月13日、分科会③では、環境保全に取り組む農産物の生産・消費を増やすためには何が必要なのか、行政生産者、生協(小売り・消費者)の立場から語り合いました。

みどり戦略の背景
ディスカッションはまず、農水省の立場から、環境保全型農業への転換が求められている背景が語られました。気候変動は農産物の品質や収量、豪雨対策など農業に大きな影響を与える一方で、世界の温室効果ガスの2割程度は農業由来。農業での環境負荷低減は避けられない課題です。高齢化や担い手の減少など生産基盤が脆弱化する中で、持続可能な食料システムへの対応が必要となっています。2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」では、CO2ゼロエミッション化や有機農業の取り組み目標などを定めています。

環境保全の受益者は国民全体
有機栽培は手間も技術も資材コストも必要です。すでに有機農業に取り組む生産者のうち、規模を広げたいと考えている人はわずか14%、現状維持が72%。農家の努力だけで広げるには限界があります。環境は国民全体の財産、がんばった農家を支える仕組みが必要だと意見が交わされました。会場からも、「農家の平均年齢が70歳を超えるなかで若い世代につなぐにはスピーディーな対応が必要。補助事業費を現場が使える形で落とす必要がある」と意見があがりました。
生協と農協の協同組合間協同
JA東とくしまでは、国の目標より20年早く、2030年に農地の25%・420 haを無農薬にする計画が進められています。5つのエリアに分けて各地域でネオニコフリー→省農薬→無農薬の三段階で目標達成を目指します。柏田さんは、「農協と生協がつながって、学校給食での公共調達を組合わせながら、市と農協と生協が三位一体となってみどり戦略を実践するローカルモデルを作っていきたい」と話します。

有機を拡げる栽培技術
柏田さんは自らの田んぼで3年前からみどり戦略の実践を始めました。もとは慣行栽培でしたが、まずは1反からBLOFインストラクターの西田さんの教え通りに省農薬で栽培したたところ、収量も食味直も最高ランク。翌年から4反に増やして無農薬を目指しています。会場からは、「このような1回も田んぼに入らなくても草を抑えられる技術が全国に広がるといい。ただ、地域によって気候が違うため、地域ごとの技術面を研究し解決していくことが必要」という意見が出ました。
有機農家を増やすことは大きな課題です。辰巳さんからは、コープ自然派が設立した有機の学校ORGANIC SMILEでは栽培技術を1年間学んだ人たちが、翌年には先輩のサポートを受けながら有機農家として出荷している例が挙げられ、「有機栽培技術を学べる場が必要。特に、教える人が足りないことが課題です」と話します。

消費者市民のチカラで
農家は売れないと生産できず、消費者の役割が重要です。辰巳さんは、「生協では日常的に情報を伝えているからこそ国産オーガニックが支持されています。食生産の価値を学ぶ場と、選ぶための情報が大切。食卓と農の現場を近づけていきたい」と話します。農家が足りない今、生協職員が米づくりを担うために農業機械研修をしているという報告もありました。また、価格を下げるための地域の有機資源を使った農業資材の開発や共同物流、有機食品の健康影響に関する研究の必要性も指摘されました。
最後に関さんは、「ローカルを変えるために市民が法律を使って、議員にも働きかけて、給食を学校だけでなく病院や高齢者施設にも広げていきましょう。生物多様性を守った人にお金が回る仕組みが必要です」と話しました。
Table Vol.518(2025年10月)

