2024年9月26日、コープ自然派京都とコープ自然派奈良は、合同で理事研修を開催。大阪府泉南市にあるオレンジコープを視察しました。コープ自然派は、オレンジコープと連携して福祉事業をすすめようとしています。
組合員の医・食・住をサポート
オレンジコープ(泉南生協)は、大阪府南部と和歌山市にまたがる地域で、高齢者と障がい者の福祉事業に取り組む生協です。連携している「社会福祉法人野のはな」とともに、高齢者住宅10棟、グループホーム(高齢者、障がい者含む)9棟、農場、レストラン、乗馬クラブなどを運営しています。
泉南生協の歴史は、1950年に前身の緑ヶ丘生協が設立されたことからはじまります。地域で唯一の銭湯であった川崎重工・泉州工場の共同浴場を買い取って運営するために生まれたのが緑ヶ丘生協でした。その後、家風呂が普及し銭湯の運営だけでは経営が成り立たず、1970年代から食品事業に転換していきます。1979年に泉南生協に名称を変更し、1990年代になると、高齢になった組合員から介護の相談が舞い込むようになります。ときは介護保険法成立のタイミング。「組合員が最期まで安心して暮らせる住まいとしくみをつくろう」と決断し、住まいづくりとヘルパー養成に取り組んでいきました。
「施設」ではなく「住まい」
1棟目の介護付き住宅を竣工した2000年当時、高齢者が入る場所といえば「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」など「施設」が中心。4人部屋や6人部屋で、面会時間も制限されるなど自由のない環境が当たり前でした。「そんなところには入りたくない」と、オレンジコープの理事会では、自分たちはどんなところに住みたいのか、どれくらいの家賃なら住むことができるのか、とことん追求していきました。外出はもちろん、お酒を飲むのも煙草を吸うのも自由、ペットも飼える。出かけるのに誰かに断る必要はないし、家族や友人が訪ねてくるのに時間を制限されることもない。なぜなら、そこは「施設」ではなく「住まい」だから。そういう「自分の家」だと思える住まいと、医師の訪問診療などそこで最期まで暮らせるしくみをつくることにこだわったのです。オレンジコープの住まいには、いまでも入居者が開けられない鍵はついていません。それこそが「施設」ではなく「住まい」であることを象徴しています。
障がい者にも住まいと仕事を
障がい者事業では、現在約200人に住まいと働く場所を提供しています。オレンジコープでは、運営する乗馬クラブの馬糞を堆肥にし、農場で使用して野菜を育て、できた野菜をカット工場でカットし、セントラルキッチンで調理して、高齢者住宅やグループホームの食事やレストランに提供するという循環ができています。そして、馬の世話や、農作業や調理など、その過程のすべてで障がい者が働いています。「20年かかりましたが、ようやく高齢者の住まいと障がい者の雇用とがリンクするモデル的な仕組みができたと感じています」と理事長の笠原さんは話します。
コープ自然派らしい福祉とは
コープ自然派の福祉事業の出発点は、徳島の「福祉ステーションそのせ」です。2004年の設立以来、20年間地域に根ざした高齢者事業を続けています。そして昨年「社会福祉法人コープ自然派ともに」を設立し、障がい者事業に踏み出しました。笠原さんは「購買事業なら、卵を宅配でお届けする。福祉事業なら、卵を卵焼きにして食事として提供する。組合員の暮らしをサポートするという生協の仕事として、何も違いはありません」とオレンジコープのあり方を表現します。コープ自然派の各生協では、今後福祉事業に取り組んでいくにあたり「福祉ビジョン」を策定中ですが、このことばは大きな道しるべになりそうです。
Table Vol.507(2024年11月)