2020年12月12日(土)、コープ自然派脱原発ネットワーク主催で講演会を開催(オンライン)、アイリーン・美緒子・スミスさん(環境ジャーナリスト)を講師に迎え、日本の原子力・プルトニウム政策の問題について聴きました。

京都市在住、環境ジャーナリストのアイ リーン・美緒子・スミスさん(グリーン・ アクション代表、アイリーン・アーカイ ブ社長)。ユージン・スミスさんとの共著・ 写真集「MINAMATA」を原作にしたジョニー・デップ主演の映画「水俣」が2021 年9月に日本公開予定です。

大飯原発設置許可は違法

 2020年12月4日、アイリーンさんが原告団共同代表を務める関西電力大飯原発3、4号機(福井県)設置許可取り消し訴訟にて、大阪地裁は許可を違法とする判決を下しました。判決では「原子力規制委員会の判断は地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」と大地震に対する耐震性が不十分であるとしました。福島第一原発事故後、原発の設置許可を取り消した初の司法判断です。2007年、新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発の火災事故や使用済み燃料プール水の漏洩など多数の事故がありました。その後、福島第一原発事故が発生、今回の裁判は「再び訪れた原子力行政の分かれ道」とアイリーンさんは話します。

 福島第一原発事故以前、52基の原子力発電所が稼働していました。現在、9基に減少し、佐賀県玄海原発2基と鹿児島県川内原発1基が稼働中。国内の年間全発電量に占める原発の割合は6.5%(2019年)と、再生可能エネルギーの約3分の1程度ということです。

大量プルトニウム保有国

 青森県六ヶ所村で核燃再処理工場の建設が1993年から進められています。核燃再処理工場は原発の使用済み核燃料からプルトニウムとウランを抽出する工場です。2006年からアクティブ試験(使用済み核燃料を使ってプルトニウムを抽出する試験)を開始しますが、度重なるトラブルにより完成延期が25回続いています。

 六ヶ所核燃再処理工場は年間7トンのプルトニウムを抽出し(長崎に投下された原爆のプルトニウムの量は約6kg)、IAEA(国際原子力機関)の査察費用の約2割が六ヶ所核燃再処理工場に充てられるほどの大規模施設です。すでに約45.5トン(2019年末)のプルトニウムを保有する日本は、米国をはじめ世界中から非難され、これ以上保有量を増やさないことを国際社会に表明。今後はプルトニウムを消費しない限り、再処理工場を稼働することができません。現在、国内で貯蔵している使用済み核燃料は約1万8000トンと貯蔵容量の約75%を占めます。稼働中の原子力発電所の使用済み核燃料は増え続け、六ヶ所核燃再処理工場の使用済み燃料プールはほぼ満杯です。

再処理の仕組みと危険性

 使用済み核燃料は各原発から再処理工場に運び込まれ、プルトニウム・ウラン・その他の廃棄物に分離します。その際、大気中に気体状放射能、海洋には廃液に混入した放射能が放出されます。六ヶ所核燃再処理工場から海洋に流される放射能の広がり方を市民が調べたところ、北海道から東京湾の範囲に流れ着くことがわかりました。また、再処理工場が本格稼働するだけで原発の180倍の放射能が出ると言われ、環境中に放出した放射能は農産物や海産物に蓄積し、私たちの食卓にのぼります。

 長年、日本はイギリスとフランスに使用済み核燃料の再処理を委託してきました。現在、日本が保有するプルトニウム約45.5トンのうち約36.6トンがイギリスとフランスに保管されています。再処理工場周辺の白血病発病率は非常に高く、イギリスで10倍、フランスで6倍と、日本から運び込まれた使用済み核燃料が海外の子どもたちの健康に影響を及ぼしているのです。また、1969年〜2009年2月末まで、7100トンの使用済み核燃料が日本からイギリス・フランスに送られ、プルトニウムが返還されてきました。これらの海上輸送に対し、世界70ヵ国以上が憂慮・反対を表明。そして、日本に戻ってきたプルトニウムの約99%は未使用のまま国内に貯蔵されています。

世界は自然エネルギーへ

 住民による再処理反対運動や事故などから、プルトニウム利用の見通しは立っていません。六ヶ所核燃再処理工場から抽出したプルトニウムは、再び燃料に加工して高速増殖炉「もんじゅ」で使用する予定でした。しかし、事故と相次ぐトラブルから「もんじゅ」は廃炉に(2017年)、六ヶ所村に建設中のMOX燃料工場(プルトニウムを加工する工場)は完成目標を延期、MOX燃料が使用可能な大間原発は建設を中断しています。1999年、高浜原発(福井県)で開始を予定していたプルサーマル(プルトニウムを混交したMOX燃料をウラン用原発で使用すること)は、燃料を製造する英国BNFL社の品質管理データ不正が発覚し、使用差し止めを訴える市民の力で計画が中止。柏崎刈羽原発は住民の反対運動からプルサーマル実施の可否を問う住民投票が全国で初めて行われ、反対多数で実施を延期しました(2001年)。MOX燃料の製造データが非公開であること、一般の原発と比べて事故時の被害面積が4倍に広がることなどが示されたためです。

 2022年までに原発廃止を決めたドイツでは再生可能エネルギーへの投資を増加し、エネルギー自給率が向上しました。CO2排出量が減り、化石燃料費用を節約。自然エネルギーは雇用を創出し地域活性化効果もあります。ドイツの総合電機最大手企業シーメンスは福島第一原発事故後、原発事業撤退を表明しました。自然エネルギーへシフトしたことで業績が堅調に増加し、シーメンス社長は「誇りをもって原発から撤退し、経営判断としても正しいと確信している」と話しています。

 「世界中が自然エネルギーへと大きく変化しています。一方、日本の原子力産業は大国として核を保持したいという思いや巨大マネーを生むなどの理由から、時間稼ぎと惰性で動かし続けているのが実態です。今こそ立ち止まり、議論し、再処理を止めるときです」とアイリーンさんは訴えました。

Table Vol.436(2021年3月)より
一部修正