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連載

わくわくキッチン「自分の為のおにぎりを」うのまきこ

イラスト/友野可奈子

 子どもの頃「渋滞してるやろうから帰りの車で食べなさい」と帰省先で祖母が作ってくれるおにぎりは力強く握られたごはんがぎゅうぎゅうで喉がつまりそうだったけど、塩加減が絶妙に美味しくて大好きでした。

 遠足の時、母が持たせてくれたお弁当箱には可愛くしようと張り切り過ぎてピンクの桜でんぶ(甘くて苦手だった~)まみれのおにぎり入り。家に帰ってあれはお弁当にふさわしくないと文句を言うと喧嘩になりました。

 新婚当時はお弁当持参で出勤していたダンナは、外出先で昼食をとる予定の日はおにぎりリクエストの機会が多く、ある日なんとなくコープ自然派で取り扱いがあった経木の上におにぎり3個並べくるりと包んで渡したらヘンに感激、ラップではなく経木に包むおにぎりの別格の美味しさを滔々と語るのがちょっとめんどくさかった。

 娘が部活に励んでいた頃は、朝練の後食べるためや、試合に持っていくおにぎりに色々な具を詰め込んで毎日のように作っていました。部活を引退しても、模試に持って行くお弁当は手早く食べられるものがいいと言うのでやっぱりおにぎり。浪人時代も同じようにせっせとおにぎり。寝坊したりネタに困ってミートボール入りやシュウマイ入りなど変化球を繰り出して、あきれられたこともあったなぁ。

 寝たきりになった母は、少し気分が良い時は自分で持って食べることができる物を自分のペースで食べたいと言うので、赤ちゃんが食べるようなミニサイズのおにぎりを何種類かこしらえて彩りよくお皿に並べるととても喜んで、ゆっくりゆっくり愛おしむ様に食べてくれたことを懐かしく思い出します。

 おにぎりは誰かに作ってもらった思い出と、誰かのために作った思い出がいっぱい。でも自分のためだけに自分で作ったおにぎりって、もしかしたら食べたことないかもと先日ふと思ったのです。そもそも横着な私は自分のためだけにごはんを炊くことも滅多にない。ダンナが飲み会で夕飯いらない日なんて、ごはん炊かないどころか、冷蔵庫の在庫整理品に缶ビールがあれば充分ってなもんで手抜きもええとこ。これでいいのか⁉なんか情けなくなってきたぞ。

 という訳で、私は私の為だけに最高のおにぎりを作ろうと作戦を練っています。コープ自然派で届いた精米したてのお米をツヤツヤに炊き、香り高いパリパリの焼き海苔を準備、具は①自家製梅干し②鰹節と刻みミョウガにおしょうゆチョロリ③辛子明太子④塩鮭⑤牛肉しぐれ煮、・・・うーん5個は多いな、どうしよう⁉こんな贅沢ひとりで食べるのもったいないな~。あれ?自分だけのためじゃなかったっけ???

うのまきこ| UNO Makiko
料理研究家。食品メーカーで新製品開発等に従事したのち、料理研究家・古川年巳氏に師事。わかりやすいレシピと、野菜をたっぷり使ったヘルシーで簡単な料理に定評がある。アトピーっ子のための簡単な除去食メニューも得意。コープ自然派奈良元理事長。

Table Vol.502(2024年6月)

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