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くらしと社会

いのちとくらしの映画祭 お腹も心も満たせる「場」づくり

2024年2月12日、コープ自然派兵庫などが実行委員会1を結成し、「いのちとくらしの映画祭with枝元なほみ」を開催しました。映画「夜明けまでバス停で」上映と、料理研究家・枝元なほみさんの講演の模様を報告します。

あたたかい枝元さんの話が心に染みます

綱渡りの私たち

 映画「夜明けまでバス停で」は、2020年に起きた渋谷ホームレス殺人事件に着想を得た作品です。映画では、主人公の女性はアクセサリー作家と居酒屋でのアルバイトを掛け持ちして生活していましたが、コロナ禍で居酒屋が休業。アルバイトを解雇され、寮に住んでいたため住まいも失ってしまいます。自尊心が強く、また「自己責任」の価値観で生きてきた主人公は、周囲の人に頼ることができず孤立しホームレスとなってしまいます。ギリギリの綱渡り生活、ちょっと足を踏み外すだけで一気に何もかも失くしてしまう恐怖は、とても他人事とは思えません。

炊き出しに並ばない女性たち

 枝元なほみさんはNPO法人「ビッグイシュー基金」の理事を務め、2020年からは「夜のパン屋さん」をスタートするなど長年ホームレス支援を行っています。「夜のパン屋さん」は、営業時間終了直前に売り切れなかったパンを引き取ってホームレスの人たちが販売する、フードロスと貧困問題を同時に解決しようとするチャレンジです。

 これまで、女性はホームレス支援からこぼれ落ちてきた経緯があります。人目を気にして炊き出しの列に並ばない、男性の多い公園では寝泊まりできずバス停で夜を明かすなど、その存在が見えにくかったからです。家事手伝いという形で表に出てこない女性やシングルマザーなども、見えない貧困問題の一例です。この人たちが追い詰められた末、ようやく可視化されたのがコロナ禍でした。ちなみに「見えにくいがゆえにこぼれ落ちる」という事象は、東日本大震災でもありました。津波で家が流された人は支援されるけれど、住める状態ではなくても家がある人には支援が届かない。「見えにくいものにどうしたら気づけるのか考え続けています」と枝元さんは話します。

元気じゃなくてもいい

 枝元さんは2019年に間質性肺炎になり、2023年に新型コロナウイルス感染症に罹患したことで悪化、現在は酸素ボンベを装着しています。どこに行くにも一緒なので「ポチ」と呼んでかわいがっていて、昨年のテレビ番組にも一緒に出演しました。酸素ボンベをつけた姿での出演には大きな反響があり、共感や、励みになったという声が多く寄せられました。普段テレビからは、「若くて・元気で・明るい」ことが良いことだという価値観が映し出されることが多いかもしれません。でも人は誰でも病気になったり、お金や仕事を失ったりする可能性があります。そんな姿もオープンにして励まし合えることが、これからの時代はとても大切になるのではと枝元さんは感じています。

どうぞ生きてください

 大人食堂なども開催するなかで、人は食べるものがあって、寝るところがあって、居ていいよと言われる場所があることがいちばん大切なのではと思うようになったという枝元さんは、「食べものを『どうぞ食べてください』と差し出すとき、それは『どうぞ生きてください』と言っているのと同じだと思うのです」と。いろんな人がワイワイ混ざって賑やかに温かいごはんを一緒に食べることで、助ける人と助けてもらう人という一方通行の関係ではなく、みんなで助け合う関係が生まれます。そしてさらに、「余裕のある人もない人も、元気のある人もない人も、一緒にいることを喜べるような関係になればいいなと思います」と話す枝元さん。そんな「場」をたくさんつくっていきたいですね。

実行委員会のひとりとして主催者挨拶に立つコープ自然派兵庫・正橋理事長

実行委員会とブース出展団体のみなさんで枝元さんを囲んで
  1. いのちとくらしの映画祭実行委員会
    コープこうべ、コープ自然派兵庫、市民デモHYOGO、熟年者ユニオン、はぐくみ、フードバンク関西 ↩︎

Table Vol.501(2024年5月)

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