コープ自然派の2030年ビジョン「コープ自然派から日本のオーガニック市場を拡げる」実現へのヒントを得るため、コープ自然派事業連合岸理事長と辰巳副理事長がアメリカ・ロサンゼルスのマーケットを視察しました。2025年5月23日生産者クラブ学習会ではその視察報告とともに、今後の展開が語られました。

アメリカのオーガニック市場と背景
アメリカのオーガニック市場は9兆円(600億ドル)規模と世界で最大のシェアを占め、10年前の2倍以上に伸びています。店頭にはオーガニックの野菜や果物が豊富に揃い、一般のスーパーでも広く扱われています。
1990年代以降、アメリカでは医療費負担の大きさを背景として健康的な食事に対する需要が高まりました。富裕層だけでなく、若い世代を中心に農薬や遺伝子組み換え食品などを避けオーガニックを選ぶ人が増えています。制度面でも、米国農務省(USDA)が定めるオーガニック認証制度が消費者の信頼を得ており、採卵鶏のケージ飼いを禁止する法律や有害な化学物質の規制などもオーガニック食品が広がる後押しとなっています。
ナチュラル&オーガニック
今回の視察では、オーガニック食品や環境に配慮したライフスタイルが根付くカリフォルニア州ロサンゼルスを訪れ、オーガニック商品を扱うスーパー9店舗と、一般向けに全米で展開する大手スーパー5店舗を訪問しました。各スーパーではプライベートブランド(以下、PB)を「ナチュラル」と「オーガニック」の2つのシリーズで展開し、さまざまな地域・階層の系列傘下の店舗で共通のPB商品を販売することでオーガニック市場が大きく広がっています。
「ナチュラル」シリーズは概ね無添加で、抗生物質やホルモン剤不使用など独自基準による構成、「オーガニック」シリーズは国が定めるUSDA認証の商品です。その内容は野菜や肉、卵などの生鮮品のほか、加工食品、生活用品などバラエティに富んだ品揃えで、安心・安全とともに手に取りやすい価格を訴求しています。
売り場の美しさと、楽しさをつくる人
圧倒的なのはオーガニックの野菜や果物の量。農産物のコーナーは色鮮やかに並べられ、オーガニックであることが一目でわかるよう棚が色分けされたりマークが表示されています。量り売りやビーガン商品、サラダバーも充実。地元産を示す「LOCAL」表示も重視されており、地域団体への寄付も盛んです。
また、アート的な手書きの店内看板やポップは高級店だけでなくカジュアルな店舗にもあります。従業員が自主的に考えてつくっているとのことで、スタッフが会話しながら働く姿やレジ接客の温かさにも通じます。
国産オーガニックを拡げるために
日本のオーガニック市場は0.2兆円(15億ドル)と発展途上にあります。世界的に公共調達に市民が主体的に関わることで有機農地が拡がっています。組合員と生産者が連携して、地域から変えていくことが大切です。アメリカでも20年前には有機野菜・果物はそれほど多くなく、有機農業の環境への影響や健康効果などの研究がオーガニック化を支えたように、研究機関との連携も重要です。
また、有機JAS認証は有機の割合が95 %以上に限られますが、USDA認証は70 %、95 %、100%と段階的なオーガニック表示があるため加工食品が開発しやすい面があります。生協の独自基準により商品を開発できる自然派Styleオーガニックシリーズから国産オーガニックの可能性が広がります。
コープ自然派事業連合の岸理事長は参加した生産者に向けて、「生協ネットワーク21との連携と、有機原料供給を拡げる日本有機加工食品コンソーシアムとの連携を土台に、ともに国産オーガニック市場を担っていきましょう」と呼びかけました。


Table Vol.516(2025年8月)