2021年5月12日(水)、自然の住まい協議会は第17回定期総会を開催(オンライン)。
総会に先立って学習会が行われ、会の主要な構成団体のひとつであるNPO里山の風景をつくる会・近藤代表理事が「自然の住まい協議会」設立に至るまでと現状について話しました。

地域に貢献できる生協へ

 近藤さんのお話はコープ自然派しこくの前身であるコープ自然派徳島設立に遡ります。近藤さんは東京から徳島に転居して共同購入会「徳島暮らしをよくする会」に加入、「会」は活動の輪を拡げるために他のグループにも働きかけてコープ自然派徳島を設立しました。生協設立発起人の1人だった近藤さんは理事に就任。「徳島にはユニークな生産者がたくさんおられ、そういう方たちのおかげで四国の農業や自然が守られているのだと感じました。そして、生産者と消費者がしっかりつながることで社会をもっと良くすることができるのではないかと生協設立に参加しました」と近藤さんは話します。

 コープ自然派徳島では組合員活動が活発に行われ、さらに、3年間で特に重点的に推進する課題を明確にするために中期計画を策定することになりました。策定会議では「地域に貢献できる生協」がキーワードとして出され、具体的な推進方法を検討していたときに、吉野川第十堰可動堰化反対運動に取り組んでいるグループとの出会いがありました。

 吉野川は高知県と徳島県を流れる一級水系で、 日本三大暴れ川の1つに数えられていました。吉野川河口ではさまざまな公共事業が計画され、 1982年には江戸時代につくられた吉野川第十堰を取り壊して可動式の大型コンクリート堰に改築する事業計画が持ち上がりました。可動堰にすると川がどんなに疲弊するかは長良川で実証済みです。そこで、吉野川の自然環境を守るために可動堰に反対する運動が盛り上がり、この運動にコープ自然派徳島も積極的に参加、2000年には住民投票で可動堰計画をストップさせました。

森と町をつなぐために

 コープ自然派徳島では「暮らし委員会」が設立されました。これは食だけでなく、暮らし全体を見直そうというもので、設立のきっかけは近藤さんが自宅を新築した際に、シックハウス症候群に罹ったことからでした。建材や塗料の中からホルムアルデヒドをはじめ有害物質が発生したのです。「そのとき食べものの安全性だけにこだわっていた視野の狭さを恥じました」と近藤さん。そして、生協でも安心・安全な住まいづくりを手がけたいと学習会を重ねました。

 「同時に吉野川の環境を守る運動を通して、上流の森の大切さを知りました。森から流れ出す水が川となって町の人たちの生活を潤し、やがて海へと帰っていく、この大きな流れの中に私たちの生活があることを改めて知ったのです」と近藤さん。しかし、当時、日本の木材自給率は3割を切り(ここ数年間は微増し、2019年には37.8%)、森の大部分を占める人工林は使われないまま手入れされず森の荒廃は進む一方でした。「保水力のある森を取り戻すために、流域に住む私たちができることは木の文化をよみがえらせることです。私たちの住む町の川の上流にある森の木を使って家や家具をつくり、その良さを広めること、川上と川下が顔の見える関係でつながり、川上の人が育てた木を川下の人が使うというシステムをつくることが大切です」と近藤さんは話します。

 そこで、2002年、NPO里山の風景をつくる会を設立、コープ自然派徳島の理事を退任した近藤さんが代表理事に就任しました。

自然の住まい協議会設立

 NPO里山の風景をつくる会の設立総会では、「どんな森をつくりたいか」「どんな里山の風景をつくりたいか」などを話し合うワークショップが行われました。そして、シンポジウムやセミナー、住宅見学会、吉野川源流ツアーなどを年に数回行い、林業者たちは自分たちが育てた木で家が建てられているのを見て、自分たちのやっていることの大切さを実感しました。この動きをさらに大きくしようと、コープ自然派事業連合、NPO国産材住宅推進協会とともに2005年に「自然の住まい協議会」を設立。「木の家ブーム」も追い風となって活動が大きく広がりました。

 2005年の設立総会はドーンセンター(大阪市)を会場に盛大に行われました。四国の山をこよなく愛する林業家・故田岡さんの講演会やコンサート、土佐町との環境共同宣言も締結され、土佐町長も参加しました。

 その後、大震災の影響もあって「木の家ブーム」は下火となり、会の活動も停滞していましたが、2年前から会員生協の理事が参加することで、新たな活動が広がっています。「新しい自然の住まいづくり協議会をどのようにつくっていくかがこれからの課題ですね。私たちはその下支えができればと思います」と近藤さんは話しました。

循環型社会を目ざして

 自然の住まい協議会第17回総会は、コープ自然派奈良・上市理事長が議長に推薦され、大川会長が挨拶。「食の安心・安全は森・川・海の循環を生かした環境づくりから得られるもの。自然の住まい協議会の活動は、コープ自然派が目ざす循環型社会のサンプルとも言えるものではないでしょうか」と大川さん。さらに、「コロナ禍では自立した地域づくりの大切さを実感しました。会員生協が地域に貢献できる力をつけることが必要です。そのためにはNPOや組合員活動を生協としてしっかりサポートしていただき、事業と活動を連携してやっていきたいですね」と話しました。

 会では引き続き理念の継承として学びの場を持つ予定です。

(左)生協設立から「自然の住まい協議会」の現状について話すNPO里山の風景をつくる会・近藤代表理事。(右)吉野川第十堰は吉野川の河口から約14km上流、上板町と石井町の間に設置されています。

Table Vol.443(2021年7月)より
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