2023年7月22日、コープ自然派兵庫は西日本アグロエコロジー協会と共催で、丹波市市島町「有機の里野菜セット」の生産者を訪問。「めぐり農場」末利公一さん、「井上農園」井上陽平さん、橋本慎司さんの3名の生産者のうち、今回は橋本さんからアグロエコロジーの話を聴きました。鶏舎と畑を見学した後、野菜づくしの料理をいただき、旬の野菜・欠品のない野菜セットの魅力を満喫しました。
有畜複合農業×橋本有機農園×食べる人=アグロエコロジー
夏の日差しを浴びながら合鴨が元気に水田を泳いでいます。山を見上げると8年前の大水害の痕跡があちこちに残っています。橋本さんは「当時、消防団として救助活動を行い、一晩明けて帰宅すると畑は流され、家は泥まみれ、がれきだらけになっていた」と話します。呆然とする橋本さんのもとへ有機農業の仲間や共同購入会の消費者、コープ自然派役職員が毎日ボランティアに訪れ、2か月程度で復元。この土地でもう一度、環境に負荷をかけない有機農業をする決心をしました。
橋本さんはコープこうべを退職後、有機農業を志し1989年に丹波に移住。日本有機農業研究会に属し、語学力を活かして国際有機農業運動連盟IFOAMに日本代表として出席し、有機農業の基準を決めるプロセスに参加しました。現在は国際的な活動は引退して有畜複合農業を実現。平飼い採卵鶏を飼育し、有機野菜と合鴨農法で米を栽培しています。
合鴨農法は近所の小学校の子どもたちと一緒に田んぼの網張りから始めます。合鴨が田んぼを移動することで田んぼに酸素が含まれ、稲の根がしっかりと張ります。そして合鴨は草や虫を食べ、糞は肥料になり、最後は鴨肉になります。
平飼い鶏舎も鶏が賑やかに過ごしています。畑の草は鶏が食べ、鶏舎に敷かれた草と鶏糞は、鶏がついばむことで混ぜられてふわふわの堆肥に。その堆肥を使って作物を育て、できた作物をいただき、草は再び鶏舎へ。エネルギーを上手に使い、目に見える循環型の有畜複合農業です。エサは地域の有機栽培・自然農法の作物を与えているのでウクライナ危機の影響はありません。
畑へ行くと大葉、里芋、ピーナッツ、オクラ、ごぼうなどが暑さに負けず空に向かって葉を広げています。橋本さんは時季に合った野菜を多品目栽培し、作物が持つ自然に対応する力が天候や病害虫などの被害を最小限にするリスク分散型の農業です。
まるごと有機農業を目指す
海外にはオーガニック認証を取得した商品のみを扱うスーパーがあります。その事業が成り立つのは、求める消費者がいるから。買う人がいれば生産者が増え、技術が上がり生産量が増えることで価格が下がり、価格が下がるとさらに消費者・購買量が増えるという良い循環が生まれます。また、海外のオーガニック商品は包材が簡素であることも特徴です。プラスチック資材や使い捨て資材は環境負荷となるためあまり使用されません。「有機農業は地球環境を含めて考えること。日本でも流通での過剰な包装や使い捨て資材を課題としていく必要がある」と橋本さんは話します。
アグリカルチャー(農業)とエコロジー(生態学)を組み合わせたアグロエコロジーという概念は、自然と調和した農法を指します。橋本さんが実践している有機農業そのもの。食べるということは環境を守ること、それは地域で循環することで持続可能となりますが、それ以上に壮大な一言では表せないとても奥深い概念が橋本有機農園にあります。次回はめぐり農園を訪問する予定。アグロエコロジーの学習は続きます。
Table Vol.494(2023年10月)