3月9日(木)、コープ自然派おおさか(ビジョン食べる主催)は、コープ有機代表・佐伯昌昭さんにコープ自然派のお米の取り組みの現状と展望について聴きました。ナビゲーターは連合の商品部およびコープ有機などで佐伯さんとともに農産物の開発に取り組んだコープ自然派おおさか・藤井専務理事です。
有機農業推進に向けて
2月18・19日(土・日)、徳島県小松島市において「オーガニック・エコフェスタ2023」(コープ自然派共催)が開催されました。「みどりの食料システム戦略の実現に向けた有機農業の推進」をテーマとしたオープニング企画では、「みどりの食料システム戦略」を中心的にすすめてきた農水省・安岡審議官、東とくしま農業協同組合・荒井代表理事組合長、日本有機農業研究会・魚住理事長、ビオセボン・ジャパン(株)・八木代表取締役社長、コープ自然派事業連合・岸理事長をパネリストにトークセッションが行われました。コーディネーターは徳島県・勝野副知事。勝野さんはかつて農水省の食育担当として東京オリンピック食料調達の責任者でした。「農水省は今回のオーガニック・エコフェスタに大きな期待をかけていました。有機農業を推進するには農水省だけでなく、生産者、消費者、行政、教育関係者、大学関係者などを総動員して取り組まなければならないと考えているからです」と佐伯さん。そして、「コープ自然派しこくの前身・徳島暮らしをよくする会と荒井理事組合長(当時は農協の農政部長)はかつて農薬空中散布をめぐって激しく対立した経緯があり、30年を経て無農薬・有機のお米の開発にともに取り組んでいることには感慨深いものがあります」と佐伯さんは話します。
「ツルをよぶお米」誕生
日本の食料自給率は先進国で最低水準です。お米の自給率はほぼ100%ですが、食生活の変化などによってお米の消費量は年々減少し、米価の低迷もあり、農家には厳しい状況が続いています。日本の農業を守り食料自給率を高めるためにはお米の利用を高めることはとても大切です。また、自然環境を守り、健康を維持するためにはネオニコチノイド系農薬などを排除することが必要です。
そこで、2007年、コープ自然派では農薬を使用しない米づくりを拡げ、豊かな生態系をつくり出そうと「ツルをよぶお米」の取り組みが始まりました。兵庫県豊岡市の「コウノトリ育むお米」を先進事例とし、組合員には無農薬・省農薬栽培の「ツルをよぶお米」を食べてもらえるよう働きかけるとともに、環境支払いプロジェクトへのカンパも呼びかけました。それが「ツルをよぶお米」の生産地・生産量の拡大、栽培技術の向上、省農薬から無農薬栽培への転換につながっています。
そして、徳島県ではナベツルの飛来が増えただけでなく、コウノトリが飛来、鳴門市の田んぼではコウノトリが繁殖し、無事に巣立ちました。「ツルをよぶお米」開発には佐伯さんも深くかかわり、豊岡市には何度も足を運びました。現在、精米や保管はコープ有機が行っていますが、中間業者を少なくすることで生産者からの買い取り価格を引き上げ、組合員に安く供給しています。「その過程ではいろいろありましたが、買い取り価格を引き上げたことは、生産者の意欲と栽培技術の向上につながり、組合員さんにとって買いやすい価格になったことで喜ばれました」と佐伯さんは話します。
さらに、コウノトリが棲める環境をつくろうと、コープ自然派はJA東とくしまと連携して「ビオトープ米」の取り組みを始めました。2021年、「ビオトープ米」はネオニコチノイド系農薬の使用を廃止、地域全体で農薬を排除することを目ざしています。
「お米クーポン」導入
コープ自然派では米の利用を拡大するために「お米クーポン」の取り組みを始めました。「お米クーポン」は指定の取扱米に使える期間限定の500円キャッシュバッククーポンで、配布期間中に獲得条件を満たすと何度でも取得できます。
「お米クーポンは10万枚発行を予定し、現在、2万5000枚が利用されています。今後、年間予約している組合員さんも使えるようになります。生協は組合員さんがオーナーです。少しでも家計の応援となるよう、また、米農家を支えるためにどんどん利用してください」と佐伯さん。有機農産物の利用を広げるには、「有機は高い」というイメージを払拭することが大切だと佐伯さんは考えています。
どんどん夢を広げよう
佐伯さんは生協の役割について3点挙げます。それは、①仲間づくり②良いものをつくる③ローカルであること、です。「仲間づくりは組合員さんが中心となり、役職員はそれをいかに補助するかです。また、地域に根ざした生協が連携して有機農業を広げていくことが大切です」と佐伯さんは話します。
質疑応答では「欠品・中止」問題について参加者と意見交換。参加者の多くは農産物の欠品・中止は仕方ないと考えていましたが、さらに仲間を増やすには欠品・中止の解決に努力することが必要との意見も出ました。「農産物は余るか足りないかのどちらかです。そんな状況を知るには農業体験はとても大事。キャベツやハクサイの向こうにあるものが見えてきます。事業的には3.11後、中止していた関東の農産物を導入して欠品を少なくし、有機農業を広げた方がいいと思いますが、組合員さんと話し合うことが必要です」と佐伯さん。そして、チラシで届けている「エッセイ『夢が広がる』では開発や事業での裏話なども書いていますが、『夢が広がる』でなくて『波紋が広がる』とも言われていますよ」と満面の笑顔で話しました。
Vol.486(2023年4月)より
一部修正