生産者消費者討論会には全国各地から生産者が参加、各産地から個性あふれる取り組みが報告されました。
津軽産直組合 斉藤さん
津軽産直組合(青森県)は1987年に設立され、見た目よりも味を重視した葉とらずりんごに取り組んでいます。現在、34名の生産者が在籍。ここ数年は大干ばつだったのに対して、今年は6月から降水量が多く、8月になると例年の4倍、490mmの大雨を記録しました。結果的に内部裂果、外部裂果が全体の3割にまで発生してしまいました。
数年前から5名の生産者がネオニコフリーのりんごを栽培。他にもやってみたいという生産者はいますが、グループでの販売数を確保しなければならず、拡大に至っていません。ネオニコフリー生産者からはカメムシ・ワタムシ・褐斑病被害の報告が目立ちます。周りの慣行栽培農家の農薬散布によるドリフトの問題が深刻で、消費者と交流を重ねて問題解決に取り組みます。
高生連・かめのこ農園 岡本さん
かめのこ農園(高知県)は、主にピーマンを栽培。子どもの健康のために無農薬野菜を食べさせたいという想いから「天敵農法」を始めました。2002年、高知県から推奨されたカブリダニを導入。地域の農家や県と連携しつつ数種類の天敵昆虫を組み合わせて害虫を抑え、その後も試行錯誤を繰り返しています。現在はてんとう虫(天敵昆虫)がアブラムシ(害虫)を食べる仕組みを活かし、ハウス内に理想の生態系をつくっています。害虫の早期発見が重要で、バンカープランツ(天敵昆虫が生息する植物)を利用し天敵昆虫を待機させます。農薬は耐性ができてしまいますが、天敵農法はそれがなく、虫を排除するのではなく味方につけてその力を最大限に活かし、毎年異なる気候や害虫の発生に左右されない技術を確立しています。
株式会社情熱カンパニー 三木さん
株式会社情熱カンパニー(徳島県)は、キャベツなど主に葉野菜を生産しています。農業特有の作業環境を活かした福祉事業「株式会社チーム情熱」は2015年から運営を開始しました。95名のスタッフの半数以上が障がいや精神の病、難病を抱えていますが、「農業で幸せに生きていく」ことを経営理念とし、畑で一緒に汗を流しています。売り上げ目標はなく、得意なことを伸ばしていけば、自然に売り上げは上がり、会社としても業績が良くなっていきます。働く人の年齢層は幅広く、20代が多いなか最高齢79歳のスタッフもいて、ひとつの社会のような会社です。
有限会社営農企画 今城さん
有限会社営農企画(北海道)は、有機認証農地115ha、慣行栽培農地を含めると約200haの大規模農場を運営し、小麦や大豆などの穀物を生産しています。有機圃場では外部から購入する資材はまったくありません。自社で堆肥製造センターを持ち、近隣町村から排出される有機廃棄物(きのこ廃菌床・鶏糞・馬糞・籾殻)を利用して堆肥をつくっています。露天では堆肥の理想的な発酵状態が管理しにくく、今年から自走撹拌機が整う完熟堆肥製造プラントを稼働させ、年中堆肥をつくることが可能になりました。「みどりの食料システム戦略」は有機圃場面積25%を掲げていますが、飼料や有機肥料が高騰する今、自前で資材を用意しない限り、実現は絵に描いた餅です。
Vol.483(2023年3月)より
一部修正・加筆