「市民からの調査依頼が増加し、意識の変化が感じられます」と一般社団法人農民連食品分析センター所長・八田純人さん。

2019年10月25日(金)、コープ自然派生産者クラブ総会の後、小麦や大豆に多用される除草剤成分「グリホサート」について、農民連食品分析センター・八田純人さんの報告会が行われました。

発がん性を認める判決

 八田さんが所属する農民連食品分析センターは、消費者や農業者の募金により設立され、輸入食品の残留農薬や添加物などの分析、健康への影響調査などを独立的な立場で行っています。 

 2018年8月、グリホサートの発がん性を問う裁判で、米国サンフランシスコ地裁が農薬大手企業モンサント社に約320億円の賠償命令を下しました。校庭の管理作業で除草剤ラウンドアップを使用していたドゥエイン・ジョンソンさんが、非ホジキンリンパ腫を発症した原因はラウンドアップであるという主張が認められた裁判で、包装容器に危険性を表示せず販売していたことに対する罰則的措置を含めた金額です。その後、同様の裁判で、2019年3月に87億円、2019年5月には2200億円の賠償命令が下されるなど1万件以上の裁判が起こされています。こうした流れを受けてか、バイエル社 (モンサント社の親会社)の今年6月の株価は、1年前の5割近くまで急落しました。

 グリホサートは1970年代にモンサント社が開発した除草剤ラウンドアップの主成分で、植物の葉や茎から吸収されて効果を発揮し、植物がアミノ酸を合成する際に働くシキミ酸経路を妨害して枯らすという仕組みです。モンサント社はこのシキミ酸経路が動物にないため影響がないと主張し、土壌中では微生物によって速やかに分解されるため、世界で最も安全な除草剤だと宣伝。また、特許が切れていることから、ジェネリック農薬としてさまざまな商品名で安価に販売されています。

危害性を研究機関が報告

 国際がん研究機関・IARC(世界保健機関WHOの1つの機関)はグリホサートの発がん性について「グループ2A 人に対しておそらく発がん性がある」に分類、これは動物実験では十分な根拠があると認めたものです。

 また、世界中の研究機関からグリホサートの危害性を指摘する論文が多数発表されています。ヒトに影響する疾患や異常として発がん性・急性毒性(皮膚炎、肺炎、血管炎)・自閉症など発達障害・生殖系への影響・妊娠期間の短縮・パーキンソン病など。動物実験では発がん性・DNAの損傷・発達神経毒性(腸内細菌叢の異常・NMDA型グルタミン酸受容体への影響)・金属のキレート化・内分泌かく乱作用(環境ホルモン)と生殖毒性・次世代影響(エピジェネティックな変異)があると伝える研究論文についてネオニコチノイド系農薬研究の第一人者・木村ー黒田純子さんが報告しています。

 一方、モンサント社、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同会議、米国立衛生研究所、合同残留農薬会議、日本の食品安全委員会、日産化学(ラウンドアップをライセンス販売する企業)などが行っている農薬評価では、発がん性・遺伝毒性が認められないと結論づけています。しかし、その中には、「産業としてのメリットも踏まえ、現在の使用の仕方や暴露の状況からは害がないといえる」と結論している団体もあるということです。

輸入小麦製品から検出

 EU諸国では行政が中心になりグリホサートの使用禁止の動きが進み、それ以外の地域では市民運動が活発になっています。米国でママたちの市民グループ「Moms Across America」が子どもの尿や市販食品などの調査活動や情報発信を行い、食事を有機食材に切り替えてアレルギーや自閉症が改善したと報告。日本でも同様の検査や情報発信を行う市民グループ「デトックス・プロジェクト・ジャパン(DPJ)」が国会議員を含む28名の協力を得て毛髪中の農薬検査を実施。19名(全体の70%)からグリホサートとその代謝物質が検出されました。事前アンケートによると、提供者のほとんどはグリホサートが直接散布される場所にいなかったこと、なかには、普段から食の安全に関心の高い人も含まれていましたから、衝撃的な結果となりました。

 農林水産省の調査(2008年~2018年)で、米国・カナダ産小麦の9割以上からグリホサートが検出されていることがわかっています。農民連食品分析センターによる小麦製品の残留検査でもほとんどの製品から検出され、なかでも輸入小⻨(米国・カナダ産中心のもの)を使用した小麦粉製品、パスタからの検出率が高く、全粒粉は高濃度であることが判明。他にもカップ麺類、ハンバーガーチェーン店のバンズ、輸入ワイン、動物用飼料などから検出されています。

 米国・カナダでは、小麦や大豆の栽培でグリホサートによる「プレハーベスト処理」が一般的に行われています。プレハーベスト処理とは収穫直前に散布することで、雑草を枯らして作業性を向上させ、汚粒発生の防止、小麦の枯れ上がりの改善、品質向上、収穫時期の調整などが目的で行われています。現在、国産小麦やオーガニック小麦を使用した製品からは検出されていませんが、日本でもグリホサートのプレハーベスト処理に相当する散布が大豆で認められているとのこと。また、学校給食パンからもグリホサートが検出され、地元産の小麦や米粉への切り替えを求める動きが強くなっています。

 「私どもの調査結果から周りにある食品にはかなり多くのグリホサートが残留している実態が見えています。グリホサート、そしてラウンドアップなどの製剤への人体的・経済的影響に話題が集まりつつある今日、グリホサートフリーの食品・食材づくりは関心の高い消費者や農業者にとって魅力ある商品になるに違いありません」と八田さんは締めくくりました。

Table Vol.404(2019年11月)