2024年11月8日、第2回オーガニック給食フォーラムが茨城県常陸大宮市で開催されました。オーガニック給食に取り組む自治体は2022年度末で193市町村となり、年々増加しています。今回のフォーラムは、2つの基調講演、パネルディスカッション、JAからの報告など盛りだくさんの内容で開催され、全国から会場には900人以上、サテライト39会場、オンラインで240人が参加しました。
給食が拓く子どもたちの未来
基調講演のひとりめは、東京大学大学院農学生命化学研究科特任教授の鈴木宣弘さん。日本が戦後、農家を守るような農業政策をしてこなかったことを振り返り、改めて国内の農業をしっかりと保護しなければならないと訴えました。鈴木さんが提案するのは、入口をJA、出口を生協が支える協同組合間協同によるオーガニック給食の実現です。「地域で給食を核として安定価格で取引ができるようになれば、農家も子どもたちも元気になります。今こそ身近な農産物を支えることで子どもたちを守りましょう」と呼びかけました。
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いのちの給食が世界を変える
基調講演のふたりめは、国際ジャーナリストの堤未果さん。アメリカの給食に登場した新大豆バーガーを例に、子どもたちを自然から遠ざけ、感じる力を奪ってしまう「超加工品」に警鐘を鳴らします。加工の程度が非常に高く、糖分や塩分、食品添加物を多く含む超加工品は、ファストフード以上に問題視されています。新大豆バーガーは牛を殺さないので〝エシカル〟だとされますが、その原料は遺伝子組み換え大豆。ブラジルでは大豆をプランテーション栽培するために広大な森林が伐採されています。堤さんは「自分で十分な判断ができない子どもたちをターゲットにすることは悪質です。情報公開と予防原則を大人が意識していなければなりません」と話しました。
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みんな仲良しが成功のカギ
5名の女性によるパネルディスカッションでは、それぞれの立場からつながりの重要性が話されました。勝野さんは行政の立場から、「うまくいっている自治体は栄養士、行政の農業担当職員、農家など、関係者がみんな仲良しなんです。これがすごく大事」と話します。そして「能力のある職員を適材適所に配置することが首長の役割」とも。米山さんは市民団体の立場から、「市民のほとんどは、給食を食べる当事者ではない」と指摘。「だからこそ、オーガニック給食はみんなにとってメリットがあると、いろんな切り口を見せていきたい」と話します。農家の横田さんは、「農家が子どもたちに直接話をすることの効果はとても高い」とオリジナルの食育絵本を出版。この絵本は全国約170名のアンバサダーが子どもたちへの読み聞かせに使っています。野々山さんは生協での経験も踏まえ、「カリスマは必要ない。みんなが主役。給食から社会を変えてみませんか」と呼びかけました。
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JAのチカラ
日本の農業を支える各地のJAからも報告がありました。共通していたのは「子どもたちのために」というキーワード。 映画「夢みる給食」をきっかけに、それまで有機農業に懐疑的だった組合長が「どうやったら有機を進められるか」という発想に変わったという経験談もありました。小さなきっかけを大きな変化に育てていく。JA常陸の秋山豊組合長は「JAが時代の抵抗勢力にならないように、がんばっていきたい」と締めくくり、会場は大きな拍手に包まれました。
次回フォーラムは、2年後に栃木県小山市で開催されます。それまでにオーガニック給食がどれだけ全国に広がっているか、楽しみです。
Table Vol.510(2025年2月)