2023年7月23日、コープ自然派おおさか(ビジョンつなぐ)は、「夏休み企画今こそ考えよう 大きな地震が起きた時、原発はどうなるの?」を開催。福島県福島市から親子での避難を経験された宇野朗子(うの・さえこ)さんのお話を聞きました。
宇野さんの避難体験
宇野さんが暮らしていたのは福島県福島市。太平洋に面した浜通りと西の会津とに挟まれた中通り地方にあり、福島第一原発から約62㎞の距離にある場所でした。2011年3月11日14時46分、娘さんをこども園に迎えに行き、友人の家の前で自転車を止めたその時、大地震に遭遇しました。そのまま友人宅へ避難し、当時入っていた脱原発メーリングリストで情報を求める中、福島第一原発電源喪失との情報を得ます。19時3分、政府は原子力緊急事態宣言を発令。22時30分、緊急災害対策本部は「炉心損傷開始予想22時20分頃、燃料被覆管破損予想23時50分頃」との予想を発表。これを受けて宇野さんは、友人一家と一緒に避難することを決意。取る物も取り敢えず西に向けて出発しました。吹雪の山を夜通し運転し、翌朝、会津若松市に到着。埼玉からレンタカーで迎えにきた夫と合流して新潟へ向かう最中の15時36分に福島第一原発1号機が爆発したというニュースを知ります。宇野さんは友人たちに「大丈夫だったら帰ってくればいいから、今は子どもたちを避難させよう」と呼びかけ、多くの友人が子どもを連れて避難しました。
避難や被ばく防護の難しさ
しかし、避難できない人もたくさんいました。当時、原発や被ばく防護についての知識を持つ人は限られていましたが、政府や専門家はパニックを恐れて必要な情報を正確に伝えず「ただちに人体に影響はない」と繰り返すだけという状況。家族の病気や介護、仕事などの理由で家を離れられない人も多く、ガソリンもありません。避難の必要性をめぐって家族で意見が対立し、不和や離婚に至ったケースもしばしばありました。福島県郡山市から大阪に母子避難している森松明希子さんの「一番つらかった被害は、汚染されていると知っていてもその水を子どもに与えなければならなかったこと」という言葉に象徴されるように、安全な水や食品の確保も難しく、避けたくても避けられない被ばくを強いられた人がたくさんいたのです。
「事故前」に知っておこう
今後30年以内にほぼ確実に起こるといわれている南海トラフ地震。最悪の場合、死者32万人、九州から関東まで広く被害が及ぶと想定されています。このような想定の中、日本には18カ所に原発があり、うち6カ所で10基が稼働し、原発事故後、原則40年に制限されていた運転期間を超えた老朽原発も再稼動しています。ひとたび原発事故が起きれば、周辺地域だけでなく、広範囲が汚染され深刻な影響を受けることは明らかです。私たちが「事故前」に知っておくべき基本的な知識について、宇野さんは9項目を挙げました。
①原子力発電所までの距離と方向を確認しよう!
②風速と風向、放射能雲の到達時間、調べられる?
③避難する方向は?
④放射線量は?
⑤緊急避難用の携帯品を考えてみよう
⑥安定ヨウ素剤を入手する方法を調べよう
⑦家族で話し合っておこう〜避難先・避難経路・合流場所
⑧避難せず屋内退避する場合の準備と注意事項を考えてみよう
⑨自分の住む自治体の原子力防災計画をみてみよう
自分のいのちは自分しか守れません。いのちの選択を人に委ねるのではなく、周りが逃げなくても、専門家が大丈夫と言っても、自分が後悔しない選択をできるよう備えをしておきましょう。
全国の原子力発電所からの直線距離を調べることができます。 ■BEPPERちゃんねる計算機(8toch.net) https://www.8toch.net/utility/utility.cgi?cid=GC00004 ※上記URLは外部管理のサイトに移動します。コープ自然派の管理下にあるサイトではありませんので、予めご了承ください。 |
Table Vol.494(2023年10月)