2022年11月21日(月)、コープ自然派奈良(理事会つながる主催)は兵庫県立大学・竹内和雄さんを講師にオンライン講座を開催。子どものインターネットとの付き合い方について学びました。
年代間で生じるギャップ
講座は竹内さんと3名(中学1年生と高校3年生の保護者、中学1年生の保護者、高校3年生)の参加者が対話し、他の参加者からチャットで受けた質問に答える形で行われました。
LINEのアイコン(プロフィール画像)選びはその人の印象を大きく左右します。例えば、自撮りは、”自己愛が強過ぎる“という理由で子どもたちから不評です。また、マッチングアプリは竹内さんのゼミ生の3割が活用し、オンライン上での出会いに抵抗がありません。むしろ、知らない人と出会い、声をかけるなどの行為は野蛮に感じるとのこと。マッチングアプリで出会った人とはオンライン上で会話を重ね、過去のSNSを調べるなど、相手とよく知り合った上で実際に会うため安全だということです。2003年、出会い系サイト規制法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)施行により、事業の届け出や年齢確認等が義務付けられたため、現在はトラブルがほとんどありません。「しかし、学生は就職活動向けにSNSの情報をアップしているため、真実を書いていない可能性もあります。彼らは巧妙ですよ」と竹内さん。年代間での感覚の違いを前提にネットの使い方を考えていかなくてはなりません。
ケンカといじめの変化
子どもたちの間でバトロワ系(生き残りを目ざして複数でプレイする)ゲームアプリが人気です。「荒野行動」は無人島で100人のプレーヤーが殺し合い、生き残った人が勝ちというオンラインゲームで、ボイスチャット(音声通話機能)を使い複数のプレーヤーと協力して戦うこともできます。基本利用料は無料ですが、ゲームを有利にすすめるためのアイテムを得るために課金制があり、レアアイテムの獲得には10万円もの課金が必要な場合もあるとのこと。竹内さんが講演した小学校の1クラスに4人がレアアイテムを持っていました。支払い方法には、キャリア決済、クレジットカード決済、プリペイドカード決済があり、小学生でもコンビニなどでプリペイドカードにお小遣いをチャージして課金できます。アルバイト代をすべてゲームにつぎ込むという高校生も多いということです。
2006年から始まった文科省の調査による小中高別暴力行為件数では、中高生とも件数の増減がほとんどありませんが、小学校で増え続け、高校(2012年)・中学(2017年)を抜きました。原因はオンラインゲーム内でのケンカにあり、翌朝、学校で顔を合わせたときに暴力行為にいたるということです。
2012年を境にインターネット上でのいじめが変わりました。スマートフォンが普及し、LINEやTwitterなど本人が特定されるSNSが主流になったため、いじめの痕跡が残らないよう直接的な言葉は避け、「あの子、最近、調子乗ってない?」といった曖昧な書き込みが発端になります。この時期を境に中学生の不登校率が増加に転じ、9万1446人(2012年)から11万9687人(2018年)に急増。しかし、ネット環境が整備されて登校しなくても快適な環境が整い、N高等学校・S高等学校(ネットと通信制高校の制度を活用したオンライン授業の高校)が創立して進路面での不安も解消されました。
上手に使って危険を回避
内閣府が調査した青少年のネット利用環境実態調査では、利用率が0歳で11.6%、2歳で62.6%と過半数を超えています。小学1年生のスマホ所持率は約10〜15%、中学3年生で約90〜95%、高校生になると約95〜98%。日常的にネットを利用している割合は、小学1年生で64〜74%、小学5年生で90%を超えます。また、1日に4時間以上ネットに接続している子どもの割合は、小学1年生で6〜11%、中学生で29〜36%、高校生は30〜45%。そして、1日4時間以上ネット接続している子どもは、ネット上で「ケンカをする」「自分の顔写真を掲載する」「投稿してトラブルが起きる」「5000円以上の課金をする」「知り合った人と実際に会う」などの経験が多く、学校や保護者、友だちとのルールを破る傾向にあります。「小学生はオンラインゲームの利用が多く、高学年からスマホに代わるため、それまでにスマホの使い方についてしっかり学んでおく必要があります。『あなたのことを信じている』と丸投げするのは非常に危険。ルールづくりを子どもと一緒に行い、納得できれば子どもはルールを守ります。しかし、高校生になると自分の判断基準が確立するため、話し合いによる効果がなくなります。ネットやスマホを上手に使うためには、フィルタリングの利用や時間、マナー、課金などについて学び、小さい頃から慣れておくことが大切です」と竹内さんは話しました。
Vol.482(2023年2月)より
一部修正・加筆