オーガニック食材を学校給食に導入しようという動きが全国各地で広がっています。
2022年11月24日(木)、コープ自然派おおさか(おおさかの学校給食を考える会主催)は、NPO法人自然派食育・きちんときほん代表・大川智恵子さん(コープ自然派事業連合元理事長)を講師に迎え、「イバゴマ」(大阪府茨木市産のゴマ)栽培から小学校の給食への導入までの経緯を聴きました。
里山の棚田でゴマを栽培
もともと農業に深い関心を抱いていた大川さんですが、実際に農業に関わるようになったのはコープ自然派のチーム活動として、大阪府茨木市忍頂寺で「棚田どろんこ隊」を始めた頃からです。山間部の段々畑でもち米を栽培し、畦には小豆を植えました。収穫後は餅つきをし、小豆を煮てみんなであん餅をつくって楽しんだということです。
ゴマ栽培のきっかけは、10年ほど前、和田萬5代目社長から「茨木でゴマをつくり、茨木をセサミストリートにしませんか?」と提案されたことから。この言葉に魅せられ、コープ自然派おおさか・サークル活動「いばらき有機の会」として無農薬のゴマ栽培に挑戦することになりました。6月に種をまき、8月に白い花が咲き9月ごろにはサヤになり、中にゴマ粒が実ります。そして収穫後、ビニールハウスで2~3週間干します。その後、ゴマを叩いて脱粒、ゴミを取り除き、最後は唐箕(とうみ)という昔の道具で風の力を使って選別します。「ゴマは農業初心者でもつくりやすく、水がなくても栽培可能なので、耕作放棄地対策にもなります」と大川さん。少しずつ栽培面積を広げ、仲間も増やして、現在、「茨木有機の会」は茨木市上音羽の1反(300坪)の畑で無農薬のゴマを栽培しています。
深まる地域とのつながり
茨木の町づくりにも関心を持っていた大川さんは、10年後の茨木市を考える「いばらきMIRAIカフェ」メンバーを募集していることを知り応募します。2013年のことです。市民、市の職員、地元の銀行・商工会議所・大学の代表者など計100名が集まり、年間10回のワークショップを開催、みんなで町づくりのイメージを出し合いました。その後、「茨木市産業振興アクションプラン推進委員」(町づくり委員)として4年間の活動を経て、2017年からは「茨木市農業委員」を務めています。農業委員の活動を通して、地元の農業が抱える問題や大阪府が認定する「準農家制度」があることを知ります。
茨木市は大阪府内(43市町村)でも、8番目に田畑が多く北部山間地域は緑豊かな農村地帯です。産地と消費地が近いという地の利を生かした都市型の農業は、つくる人と食べる人が交流できます。また、美しい自然環境は癒し効果も抜群です。この環境を保全するためにも有機農業を推進したいと、大川さんはコープ自然派おおさかにも呼びかけて2020年に「茨木オーガニック農業推進協議会」を立ち上げました(構成団体は農業者、NPO法人自然派食育・きちんときほん、茨木市農林課、コープ自然派おおさか)。協議会では国の補助金を得て有機農業栽培技術の講座や圃場実習などを開催。「地域の準農家の方々にもゴマ栽培をお願いしました。手間がかかるゴマ栽培は農家と消費者が共有しやすい都市農業に適していると言えます。新規就農者は栽培しても売り先に苦慮することが多いのですが、ゴマは和田萬が全量買い取りを約束してくれ、安心して栽培できます」と大川さんは話します。
学校給食が社会を変える
2020年度、多くの人たちの協力を得て茨木市内小学校の給食に「イバゴマ」を導入。学校給食に農産物を導入するには、市の学校給食担当(学務課)や農林課、市議会議員などへの働きかけが必至だと大川さんは言います。茨木市農林課は駅前ビルの空き店舗で準農家マルシェを開催し、市民農園では毎年農業指導を行うなどして就農者開拓を進めています。準農家とともにゴマ栽培に取り組んだのも功を奏しました。また、組合員活動もとても大切で、茨木市を拠点とするコープ自然派おおさか・桜ブロックは、「学校給食を考える学習会」を開催し、市の給食担当者や栄養士などに消費者の安全な給食への思いを伝えてきました。
学校給食への供給は2023年3月で3回目となり、2022年度は地元の福祉作業所で袋詰めして商品化した「国産いりごまイバゴマ」がポスティ36号にも登場。「安心して暮らせる地域づくりは生協の役割です。私たちは学校給食を安心・安全なものに変えたいと『イバゴマ』から第一歩を踏み出しましたが、学校給食にオーガニック食材や無農薬食材を導入することで社会を変えていきましょう」と大川さんは話しました。
Vol.479(2023年1月)より
一部修正・加筆