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食と農と環境

いらない遺伝子はない遺伝子を操作した食べものにNO!

2024年7月25日、コープ自然派奈良(理事会)では、遺伝子操作食品問題について学習会を開催。コープ自然派事業連合顧問の松尾由美さんに話を聞きました。 

松尾さんは、OK シードプロジェクト運営委員、日本消費者連盟運営委員も務めています。

遺伝子操作食品とは

 松尾さんは、「寒さに強いトマトの品種を何代にもわたって掛け合わせて改良するのが伝統的な品種改良、寒さに強いヒラメの遺伝子をトマトに導入する(遺伝子をプラスする)のが遺伝子組み換え、トマトの遺伝子のうち寒さに敏感な遺伝子を壊す(遺伝子をマイナスする)のがゲノム編集。厳密な定義とは違いますが、このように理解してもらえたら分かりやすいのではないでしょうか」と説明します。放射線育種などを含め、遺伝子を直接操作する技術でつくられた食品を遺伝子操作食品と呼びます。

隠れた遺伝子組み換え食品

 日本では、食用を目的とした遺伝子組み換え作物は商業栽培されていませんが、多くの食べものを海外からの輸入に依存しているため、世界で一番多くの遺伝子組み換え作物を食べているといわれています。遺伝子組み換え食品の表示義務があるのは、大豆、とうもろこしなど9つの作物と、それを原料につくった33の加工食品だけ。その結果、なたね油や醤油などの加工食品、食品添加物など、原料表示をみても分からない状態でたくさんの遺伝子組み換え食品が私たちの口に入っています。

日本は突出したゲノム編集推進国

 ゲノム編集技術は、目的の遺伝子をピンポイントで壊すとされていますが、実際には似た遺伝子を間違えて破壊してしまったり(オフターゲット)、狙った遺伝子を破壊できても新しく想定外のたんぱく質が生まれたり(オンターゲット)といった問題が起こり得ます。そもそも1つの遺伝子は1つの役割だけを担っているわけではなく、遺伝子を1つ壊すことが生物全体にどう影響するのかも未知数です。

 日本は世界でほぼ唯一ゲノム編集食品が市場流通している国です。現在流通しているのは高ギャバミニトマト(シシリアンジュールハイギャバ)、マダイ、トラフグの3品目。さらに高ギャバ中玉トマト(エスプロッソ)、ワキシートウモロコシ、ヒラメも届け出がされており、今後流通がはじまる可能性があります。「いちばんの問題は、国の認可や許可が必要なく、任意の届け出だけで販売できることと、表示義務がないことです」と松尾さんは話します。

重イオンビーム育種という品種改良技術

 放射線育種は、放射線照射で突然変異を引き起こして新品種を開発する方法です。1950年代から行われてきたガンマ線照射育種は、安全性が不明なまま昨年終了しました。しかしいま新たに、ガンマ線照射の1万倍ほどのエネルギーを照射する重イオンビーム照射育種が始まっています。

 日本の一部の米はカドミウムの含有量が多い傾向があり、健康影響を懸念した農水省は2018年に米の主要品種を低カドミウム米にする指針を発表。そのために、重イオンビーム照射でカドミウムを吸収する遺伝子を破壊してつくられたのが「コシヒカリ環1号」です。このコシヒカリ環1号とあきたこまちを掛け合わせてつくられたのが「あきたこまちR」で、秋田県は2025年から従来のあきたこまちの栽培を終了し、全量をあきたこまちRに切り替えることを決定しています。これは秋田県だけの問題ではなく、秋田県から種もみの供給を受けてあきたこまちを生産している13府県や学校給食、全国チェーンのスーパーなどにも影響が及ぶことになります。

タネを守りたい

私たちは、ゲノム編集されていない種苗や食品につける自主表示マーク「OKシードマーク」のついた商品を選ぶことや、従来のあきたこまちを作り続けることを発表している秋田県大潟村のあきたこまちを購入することで、遺伝子操作食品に「NO」の意思を示すことができます。松尾さんは最後に、「私たちが何を選択するかで世界は変わります。1日3回の食事に何を買って何を食べるか、毎日の意思表示を続けていきましょう」と呼びかけました。

進行を務めたコープ自然派奈良・杉山理事。「コープ自然派のカタログには多くのマーク表示があります。ぜひ選ぶ参考にしてください」

Table Vol.506(2024年10月)

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