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わくわくキッチン「おいしさとは?の沼」うのまきこ

 晩夏より自宅で臥せっている母の身の回りの世話を父だけに任せておくわけにもいかず、実家に足しげく通ううちに早くも年末が近づいてきました。

 入院したくない母と、母の希望通り自宅で過ごさせてあげたい父の意向で、自宅療養生活が始まり、遅まきながら介護保険のことも調べました。いろいろな方の知恵や力をお借りして要介護1の認定通知が先週届いたところなのですが、今の制度では同居人(わが家では父)がいる場合、家事を助けてもらうことはできないらしいのです!

 長年専業主婦としてすべての家事を担ってきた母も、ここ数年は体力気力ともに衰え、掃除機や洗濯干し、食事の後の洗い物、スーパーでのお買い物などは少しずつ父に伝授。だけど台所は母専用の不可侵エリア!私と違ってかな~り潔癖症な母には、キッチンの使い方に謎のマイルールがたくさんあって、25年前に父母が今の家に引っ越してからは、私ですら自由に料理をさせてもらえなかったぐらい。なのに、完全無欠のお料理1年生の父が「食欲がない母が食べやすく、簡単で栄養満点なメニューを教えてほしい」と言い出した。88歳初心者男性、うーん手強そう…。

 大手スーパーで大手メーカーの商品を買うのが一番安全という考え方の母が管理してきた冷蔵庫やパントリーには、粉末だしの素やコンソメキューブ、リンゴとハチミツのカレールゥやレトルト・瓶詰の各種合わせ調味料が満載。私がそういう味があまり好きではないことを知っているからか、もう10年くらい前から実家に帰省しても食事はみんなで外食に出るか出前。母の手料理はお正月の芋棒ぐらいしか食べた記憶がありません。なのに、父は「母さんが作ってくれるアサリと野菜のスープが旨いねん。作り方聞いたら、お鍋にコンソメの素と野菜と水を適当に入れて、沸いたらアサリを加えて、貝が開いたら塩コショーを入れるだけで簡単みたい。ワシにも作れそうやから一回一緒に作ってほしい」とか「母さんのいつものカレーライスが食べたい」ってなリクエストをするもんだから、慣れない調味料と格闘しまくる今日この頃。カレールゥなんて30年近く使ってないし、ドキドキしながら裏面の作り方の通りに量って調理したのに…なんじゃこりゃあ!!な味になっちゃって、すっかり自信喪失。謝りながら父に供したら「旨い!でも母さんの方がおいしいなあ」とのコメント。「おいしさとは?」と深く考え込む毎日です。

 みなさん来年は家族みんなで料理をする時間をもってみませんか?私は父と一緒に料理を楽しみたいと思います。

うのまきこ|UNO Makiko
料理研究家。食品メーカーで新製品開発等に従事したのち、料理研究家・古川年巳氏に師事。わかりやすいレシピと、野菜をたっぷり使ったヘルシーで簡単な料理に定評がある。アトピーっ子のための簡単な除去食メニューも得意。コープ自然派奈良元理事長。

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Vol.478(2022年12月)

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